お菓子/京流




リハが終わって、メンバーと話し合いをして、内容を煮詰めて今日はこれで終わりってなって。

今日はいつもよりかは早めに終わったなー…それでも夜だけど。


誰かがハロウィンだっつってたから、今年はどんな悪戯しようかなーってボンヤリ考える。
まぁ俺が京さんに悪戯出来る訳なんてねーけど。

そんな事を思いながら、事務所に置いてあるメイク道具で色々と自分の顔に施す。
何故かずっと話が途切れないれいたが隣に座って、色々と話をしながら。


「れいた、これどうよ」
「おー良く出来てんな」
「だろ?」
「でもお前、それで帰んの?」
「サングラス掛けるし、ハロウィンって街中にコスプレしてる奴ウロウロしてるから平気だろ」
「でもそれ京さんに見せる為だろ。京さん居なかったらどうすんの?」
「え、京さん今ちょっと長期オフ貰って家でDVD観るっつってたのにどっか出かけんの?マジで?」
「いや、お前がわかんねーのに俺がわかる訳ねーだろ」


いなかったらヘコむ…。
いや別に京さんの行動を制限する訳じゃねーけど、海外やツアーやら何やらで会えなかった時が長かったから、今の内に充電したいと言うか。


メイク道具で顔の半分だけをエグい感じにゾンビ仕様にして、道具を片付ける。

白コンも入れて、鏡を見直して。
よし、完璧。


「ま、張り切ってハロウィン仕様にしたルキが玉砕するのは見てみてーけどな」
「おま、」


ムカつくな、この布!


「帰んだろ?送ってってやるよ」
「マジ?サンキュー」


訂正。
いい奴だな、れいた。


「あ、じゃースーパー寄って」
「また米買うのかよ」
「それは買ってあるからまだ大丈夫。明日の朝ご飯と何かお菓子買ってく」
「あぁ…トリックオアトリートって?」
「そうそう。悪戯されてもいいんだけどさー」
「…京さんの悪戯って容赦無さそうだけど」
「そこがいいんじゃねーか」
「…あーそー…」


若干遠い目になったれいたを連れて、スーパーで買い物して、マンションまで送って貰う。
荷物を持って、れいたの車から降りると、ドアを閉める前に中を覗き込む。


「れいちゃん、trick or treat」
「は?お菓子持ってねーよ」
「ふふ、仕方ねーな、れいたに悪戯したくねーからお菓子やるよ。送ってくれてサンキュ」
「おう、京さんと程々にな」
「それはどうだろ」
「おい」


さっき買ったお菓子をお礼としてれいたに渡して、笑いながらドアを閉める。

れいたの車を見送って、自分はエントランスを抜けて京さんの元へ。

ちょっといつもと違うメイクしてるからか、何となく楽しい気分になる。
これで京さんいなかったらショックだから、それは考えない事にして。


いつもの様に、鍵を開けて中へ入るとリビングから光が漏れてるのが見えて京さんがいるんだって思ったらテンションが上がる。


「京さーん、trick or treat!」
「…………」


サングラスを外して、ソファで寝転がってテレビを観てた京さんの前に回ると、すっげぇ眉間に皺を寄せて睨み付けて来た。


「………」
「………」


上から下まで京さんの視線が這われて、そのままノーコメントでまたテレビの方を向いた。


「いやいやいやいや、京さん何か下さい」
「…何その顔」


カバンや袋を置いて、膝をついで京さんと目線を合わすと、京さんは至極めんどくさそうな顔をして来た。


「ハロウィンなんで、ネタに。自分でメイクしたんですけど、どうですか?ゾンビっぽいですか?」
「ふーん」
「と、言う訳で、京さん、trick or treat!お菓子くれなきゃ悪戯しますよ!」
「したら?」
「え、」
「したらえぇやん。出来るんならな」
「…京さん卑怯!」
「何がやねん毎年毎年…飽きひんなお前も」


京さんに悪戯って。
したい気もするけど、すれば?って言われると出来ねぇ。

でもせっかくハロウィンだし、ちょっと仮装っぽい事もしたし、京さんにも乗って欲しいなー。


「…わかりました。今年は京さん自身がお菓子と言う事で、悪戯ではなく京さんを食べます」
「は、」
「ちょうど、ゾンビメイクなんで、バリバリと食べます」
「ふーん、どっから?喉?それともハラワタ?脳ミソ?眼球?」
「…何でそこはノリノリなんですか、もー!」
「何やねん、乗ってやったのに我儘なヤツやな」


だってリアルに食べたら、京さんが無くなっちゃう。


「因みに」
「…ッ!」


京さんの片腕が伸びて来て、俺の顔を引き寄せる。
すっごい間近に、京さんの顔。


「僕なら、るきの唇から食うかな。柔っこいし」
「きょ、」
「るーき、トリックオアトリート」
「…ッん」


そのまま唇に噛み付かれて、キスをされる。
がっちり頭をホールドされて、キス、 と言うよりも、何度も唇を噛まれる。


俺がしたかったイベントだけど、いつも京さんにペースを持ってかれる。

そう言うところが、好き過ぎる、京さん。


「痛…ッ」


ガリッと強めに噛まれて、唇に痛みが走る。
でも直ぐ様、京さんの舌がソコを舐めるから、痛みなんて一瞬で引く感覚。


京さんだったら、残さず食べてくれるかなぁって、そんな事をボンヤリ考える。


「…は、でもるきやと脂肪ばっかなんちゃうの」
「…最近は、違いますよ」
「甘えんなボケ」
「やです」


唇を離して、京さんが口の端を上げて笑って。
俺は余韻で、そのまま京さんに抱き付く。


「で、僕を食べるんちゃうのー」
「京さんに食べられたいです」
「我儘な糞ガキやな」


trick or treat。

京さんになら、どちらでも。




20131103




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