夏の終わり/敏京




「もう9月になったとか夏も終わりだねー」
「んー」
「早く涼しくなるといいねー」
「雨ばっかで蒸し暑い」
「あー台風多いからねー」
「でも夜寒いし」
「服に困るよね」


オフで京君とまったりテレビ。
暑くて出掛ける気にならないとか言って、部屋の中で一緒にごろごろ。

俺の足の間に京君が座って、胸元に凭れさせてるんだけど暑い暑い言いながらも拒否らずに全身を預けて来る京君が愛しい。

そんな愛しい恋人が観てるのは、グロい感じのホラー映画だったりするけど。
京君こんなのどっから見つけてくんの。

好きだねー。


そのムードも何も無い映画鑑賞が終わると、京君は俺の腕の中で軽く伸びをした。


「まぁまぁやったな」
「もう血とか内臓のイメージしか無いんだけど」
「そこ無かったらアカンやろ」
「えー」
「敏弥、アイス」
「えー?あったかなー?」
「買って来い」
「やーだー。って、そう言えばアレあるじゃん、アレ」
「何」
「かき氷器!京君今年欲しいって言って買ったじゃん」
「あぁ…」
「シロップまだ残ってるし、寒くなる前に食べようよ」
「よし、作れ」
「もー我儘!」


立ち上がって京君から離れて、京君がかき氷食べたいって言ったから買った簡易のかき氷器。
それと2人分の器を持って来てテーブルなの置き、冷蔵庫に氷とシロップを取りに行く。


「練乳あるん?」
「あー…、あ、あった。後ちょっとかも」
「はーよー」
「待って…、もう京君がシロップまだ残ってるのに色々買うから、いっぱい余ってるじゃん」
「やって同じんやったら飽きるやん」
「どれにするー?」


冷蔵庫には、次あの味にするとか言って買ったかき氷のシロップが4本。
それと、練乳と氷を持ってまたテーブルに戻る。

京君はテーブルに肘を付いて、俺の動作をじっと眺める。

俺が立ってるから、無意識に上目遣いになるんだよね。
超可愛い。


「京君何味にする?」
「んー。せっかくやから全色で」
「全部?…まぁ色は綺麗だろうけど…ちゃんと食べなよ?」
「それはわからん」
「もー」


いちご味、メロン味、レモン味、ブルーハワイって彩りのシロップだから、全部かけたら見た目は綺麗だろうけど味ってどうなの。

氷を製氷皿から取り外してかき氷器に入れながら、シロップをチラッと見る。


「でもこれ、4色全部かけたとしても今日中に無くならないよね…」
「敏弥が冬でもかき氷食べたらえぇんやない?」
「言うと思った!京君の馬鹿!好き!」
「意味わからんわー」


器をセットして、ガリガリと手動で氷を削ってく。

取り敢えず1つ目、氷の山を作って。
俺の分も作ろうかなって思ったけど!京君が食べなかった時の為に取っておこう。


「はい、シロップかけて」
「ん」


京君は1種類ずつ、ちゃんと4分割にしてかけた。
赤、緑、黄色、青のかき氷って。
綺麗だけどね。


「おー何か芸術的」
「やろ。まぁ練乳で無駄になるんやけどな」
「ちょ、いつも思うけど、練乳かけすぎだろ」
「えぇやん。もうかき氷食べんし」
「虫歯になるよー?」
「んなガキちゃうわ」


色とりどりの上に、白い練乳をたっぷりかけて。
京君は、いただきますってかき氷を食べ始めた。


「美味しい?」
「普通。シロップの味」
「そりゃそうか。じゃ、俺も作ろ」


京君は4色のかき氷を普通に食べてるから、大丈夫かなって思って自分の分のかき氷を作り始める。


「敏弥も4色な」
「え、やだよ俺は普通にいちご味にする気だから」
「はぁ?お前やったらせめて青やろ!」
「ブルーハワイは京君の好みじゃん!」
「僕が選んだ味が食えん言うんか!」
「全部京君が選んだシロップなんだからいいでしょ!ってあぁああ!」


話しながら氷を削って、山が出来たと思ったら京君に勝手にブルーハワイのシロップをかけられた。
青に染まってく氷。


もー…いいよ…普通のかき氷は諦めるよ…。


京君は嬉々としてシロップを次々とかけていく。

糞、笑ってる顔は可愛いんだから!


「これ色混じったらゴツい事になるな」
「俺ので試したなこの野郎」
「味は保証したるわ」
「でも見た目悪いじゃん!自分のは綺麗にした癖にー」
「はいはい、これで隠せるって」


4種類のシロップの色が混じると、何て言うか…暗い色になった。
そこに京君は練乳をまたたっぷりとかける。


「あーぁ、いちご味で練乳かけて処女喪失みたいな感じにしたかったのにー」
「うわ、さすが変態の考える事は違うな」
「だって練乳って精液みたいじゃない?」
「食っとる時にアホな事言うなや死ね」
「あはは。後で俺の練乳もたっぷりかけてあげるね、京君に」
「変態親父かお前」


にっこり笑って言うと、嫌そうに眉を潜めた京君。



かき氷のちょっとした復讐です。


練乳と、色と味が混ざったかき氷を口に入れる。

もう今年はこれで終わりかなって思う、夏の風物詩。


食べ物で遊んじゃいけないけど、いつもの様に、京君とじゃれて遊んで食べる物は何でも美味しく感じるなって。

そう思った。




20130918




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