海外でのある時間/京流+玲




海外のツアー。
オフな日があっても、俺は特に出掛けたりしねーし、部屋で暇を潰してたら。
葵さんと出掛けてたルキが帰って来たらしく、俺の部屋にやって来た。

そして散々、外で撮った海外の街並みやら景色やら、説明付きで見せられる。
今回はルキの気に入る服屋は無かったのか、珍しく戦利品は無しで。


夕食まで時間あるし、暇なんだろうな。
俺もだけど。
そんな事を思いながらルキの話に耳を傾ける。


「でさ、此処で飲んだヤツが意外と美味くてさー」
「へー」
「これこれ、お洒落じゃね?」
「あんまわかんねーけど…」
「馬っ鹿、お前も飲みに行けよ!」
「や、俺は海外では外出ない方針なんで」
「お前は日本でも出ねーだろ!」


1人部屋が宛がわれてる中、ルキは我が物顔で俺のベッドに寝転がって。
その隣でベッドの上に胡座をかいて座ってルキのiPhoneを覗く俺に、眼鏡越しの瞳が至極楽しそうに笑う。

ルキは色んな場所に出掛けるのが好きらしくて、メンバーと観光やら買い物へ行っては写メを撮りまくる。


「これとか超綺麗だから、京さんに送ろ。な、こっちもいい感じだろ?」
「あーそうだな」


そして京さんの事とかを喋り倒す。
海外に来ても京さん京さんと…ルキって京さんと暮らして長くなかったか?

よくマンネリになんねーなぁ、と思う。

まぁ、昔のルキを見てれば今の状況は納得いくけど。


「あー京さん元気かなー。あんまメールとか電話出来てなくてさー」
「忙しいんじゃね?」
「だよなー。もうすぐ京さんもツアー始まるし、海外行く前も時間全然合わなくて欲求不満なんだけどー」
「や、お前のシモ事情は知らねーけどよ。諸々で処理しろよ」


iPhoneをイジりつつ、身体を仰向けにしたルキを見下ろしながら溜め息。
まぁ下ネタは全然聞くけど。


「どうやってだよ」
「海外モノのAVとかあんだろ」
「は、れいちゃんわかってねーなー」
「何が、」


だよ、って言おうとしたら、そう言えばルキはネコだったっけ、と思い直す。

え、普通の男の処理と違うモン?

ルキってそこまでいってんの?


「‥‥あー、じゃ、マイクでも使えば」
「京さんのマイクだったら超興奮する」
「‥ブチ切れそうだな」
「だろうね」
「‥‥‥‥‥。もうバイブでいいじゃん」
「んー‥‥持ってねーしなー。1回、京さんと同じ形のが
欲しくて型取らせてって言ったら殴られた。酷くね?」
「京さん‥」


どっちかって言うと、京さんの方が我儘かと思ったら、意外とルキもアレだな。
ルキは京さんの前では猫被ってるっぽかったけど、別の方向では我儘な気が。


ゴロゴロベッドの上でiPhoneを操作してるルキを見てると、ライブの時とは全く違うオフのルキ。

それ以外に、あんま考えた事ねーけど、京さんと付き合ってんだなー、と。

プライド高くて我儘なルキが、何もかも覆る程、京さんはいい男なんかね。


「ってか、海外ってアダルトショップあんの?」
「一応あるんじゃね?」
「ちょっとれいた行ってみようぜ。エグいのあったら面白そうじゃん」
「やだよ。外出て俺に何かあったら困んだろ」
「何もねーよ筋肉。その筋肉は伊達かよ」
「いいえ、趣味です」
「趣味でそこまでするとか考えらんねーよ」


楽しそうに笑うルキは、iPhoneをベッドに置いて、寝返りを打って肘を付いて俺を見た。


「ってか京さんも筋肉凄いしさーどうやったらそんななる訳?俺全然筋肉付かねーんだけど」
「京さんと同じ事したら大丈夫なんじゃね」
「腹筋300回も出来っかよ。前やって諦めた」
「‥もういいよ。ルキはそのままでいいって」
「何よ。馬鹿にしてんのか」
「いえいえ、ルキさんは今のままでも十分魅力的デスヨ」
「ははは。だろ?じゃ、その俺が襲われたらその筋肉で守る為に付いて来いよ」
「おま、まだ諦めてねーのかよ」
「暇。京さんからも連絡ねーし」
「はぁ‥AVで我慢しなさい」
「は?ここで観るぞテメェ」
「止めて下さい」
「欲情しても襲わないでね、れいちゃん」
「お前を襲えるヤツがいたら見てみてーよ‥‥」


男云々より先に、京さんの影がチラついて絶対無理。

そんな事したらルキが何されるかわかったモンじゃねーし。

するなら、限界ギリギリの絶望の淵にいた時、無理矢理俺の方向かせるっつの。
今は京さんと何だかんだ幸せそうに暮らしてるし、あの時、同情や正義感でルキを止めなくてよかったな、とは思う。


「はー‥帰って京さんのライブ観に行けるかなー」
「日程的にどうよ」
「んー。ギリギリ」
「そか。まだツアーあんだから、お前も寝ておけよ」


んー‥、と間延びした返事をしながら、ルキはまたiPhoneを取り俺に背を向ける形で寝転がった。
歳を重ねる毎に、薄くなってくルキの背中。

バンドも、プライベートも、貪欲に追い掛けて手に入れた。
少しは休めよ、お前。


「‥‥ルキ?」


iPhoneをイジってると思ってたルキが、大人しくなったから声を掛ける。

無反応で、ルキに近寄って覗き込むと、iPhoneを持ったまま寝てしまった。
連日ライブだし、オフの日は歩き回って喋り倒すさそ、疲れたんだろう。


「此処、俺のベッドなんだけど」


苦笑いしながら呟き、出掛けようと言ったり寝たり、自分勝手なヤツ、と思いながら。
ルキの我儘は今に始まった事じゃねーから。


息を吐きつつ、夕食までにはまだ時間あるし、ルキは寝かせる事にして。
俺は適当に持って来た本でも読みますかね。


ブリーチとパーマで傷んだ金髪を撫でて、そっとルキの眼鏡を外す。
それでも身動き一つしないから、本人が言わないだけで疲れは溜まってるんだろう。


なのに、アッチ方面は元気なんですね、ルキさん。

会えないから、余計にか。


ベッドから降りて、ルキの眼鏡をテーブルに置く。
仲良かったルキが、京さん一色になったのはちょっと面白くなかったけど。

ルキの、こう言う姿を見ると昔と変わらないなって思って、口元が緩んだ。




20130917




[ 335/442 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -