ピアスを開けた時/京流
ちょっと深夜になりかけの時間、るきと飯食ってソファで適当にテレビ観とったら。
るきが何か持って来て僕の足元の夏仕様になったラグに腰を下ろした。
「京さん京さん、ピアス開けて下さい」
「なに」
「ピアス。俺、左耳開いてないじゃないですか。何か突発的に開けたいなーって思って、ニードル買って来たんすけど」
「何や今更開けるん」
「ちょっとイメチェンで」
これで開けて下さい、と。
抗菌仕様になっとるニードルとファーストピアスにするつもりのごく普通のフープピアスを取り出した。
まぁ、ピアス開けるぐらいえぇけど。
イメチェンて。
お前ころころ見た目変わっとるやないか。
この飽き性が。
白金に近い金髪になったるきが、髪を結んで耳を晒す。
右側にだけ開けられたピアスが目に入った。
「最終的にはまた拡張したいんで、一応ゲージがデカくなる様に何個か買って来たんすけどねー」
「ついでにスタジオで開けて貰えや」
「えー?そりゃ、開京さんにやって欲しいじゃないですか。京さんに貫かれた穴だと思うと興奮します」
「‥‥‥‥」
アカン。
るきは頭おかしいんやった。
「ならもう拡張したい大きさにダーマルパンチせぇや」
「耳朶無くなるじゃないですか」
「我儘言うな」
「えー。拡張だと耳朶千切れないし。あ、氷で冷や、」
「いらん。さっさとこっち来い」
ニードルを取り出してたるきが、思い出した様に立ち上がり掛けたんを、腕を引っ張って自分の方に引き寄せる。
体勢を崩しながら、るきは僕の隣に座った。
「え!?京さん、さすがに俺、開けるの久々で、」
「んなモン冷やしたって一緒やろ。早よ耳。何処や」
「マジっすか」
「言わんなら僕が決めるで」
「えっ、ちょ、耳朶の真ん中ら辺でお願いします」
「真ん中ー?」
言うても感覚でしかわからんでな。
るきの左耳を引っ張って、手に持っとるニードルを奪う。
真ん中って此処らでえぇんやろか。
どうせ拡張する言うとったしな。
「あ、京さん消ど、」
「はい、いくでー」
「‥‥‥ッ」
るきが何か言おうとしたけど、無視してニードルを耳朶に刺し込む。
肉を貫く懐かしい感覚と、るきの肩が強張るんがわかった。
ちょっと痛覚があるらしくて、るきが顔を歪ませる。
その耐える様な表情が面白くて、ゆっくりニードルを潜らせると、何かを訴える様に目を向ける。
「も、京さん早く‥!」
「お前がデブやから耳の肉厚いんや」
「絶対ぇ嘘‥ッ!つ‥!!」
文句を言うるきの耳に一気にニードルを突き刺す。
ぷつっと肉と皮が切れる音と共に、ニードルが貫通した。
あぁ、何か、るきが言う感覚、少しわかるかも。
物理的痛みに顔を歪めるるきの表情を見るんは久々で。
それを僕がやるとなると、今までの関係も相まって結構、くるモンがある。
「いってぇ‥ちょっと京さん、何で一思いにやってくれないんですか」
ニードル刺さったままのるきが耳朶を触って確認しながら、僕に文句を言うるき。
可愛いから、なんて口が裂けても言わんけど。
「ぇ、‥‥ッ!」
「消毒したるわ」
「だっ、め‥!」
るきの手を取って、ニードル刺さったままの耳朶を舐める。
下手したら、僕も刺さるかと思うけど、口に開けとった時期もあるし、今更。
耳元で、るきの好きな僕の声で懐柔する。
元々僕に抵抗なんて、あってないようなモンやけど。
カチッと、歯に当たるニードルごと、耳朶を噛む。
このまま引っ張ったら、耳朶裂けて元に戻らんくなるんやろな。
ピアスなんて綺麗事言わずに、ズタボロんなった耳の方が、僕が付けたモンって気になるんやけど。
なぁ。
「い‥ッ」
「‥‥‥‥」
開けたばっかの穴。
ニードルごと引っ張って負荷を掛けると痛みを感じるらしい。
「京さ‥ッ」
「‥‥痛いん好きやろが」
「京、さんに、なら」
「ふーん」
どうしようかって頭ん中で考えると、理性よりも本能で僕に従順なったるきが、身体の力を抜いたから、耳朶から口を離す。
なら、いつでも出来るからえぇわ。
「入れるピアスどれ。拡張すんならもう12から始めてもいけるんちゃう」
「‥‥‥さすがに裂けません?」
「試してみたらえぇやん」
多分、痛いやろけど。
もうさっきのが、前戯に似た感覚になったるき。
僕を見る目が、欲を孕む。
戯れなら僕好みに泣いて鳴けや、このドM。
終
20130901
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