ある新年の日常生活/京流
一応、事務所から正月休みは貰ってて。
京さんも仕事入ってないって言うし、ガキ使見て年越して一緒に寝た、京さんとの正月。
京さんは初詣とか行くの好きじゃねーし、せっかくの休みなんだからってダラダラ寝て昼過ぎに起きて。
寝正月って勿体無いような、贅沢なような、そんな感じ。
顔洗ってラフな服に着替えて、眼鏡をかけて前髪をピンで留めて、京さんが起きて来るまでに雑煮作って。
ゆったりした日だなーって、ぼんやり思う。
京さん好みの白味噌の雑煮も、今じゃ手慣れたモンで。
京さんと迎える、何度目かの正月に感慨深いモンを感じる。
頼んで買ったおせちもテーブルの上に置いて。
京さんいつ起きてくんだろって思ってたら、寝室のドアが開く音と廊下を歩く音。
京さん起きて来たんだって、IHのスイッチをオフにして音のした方に向かう。
洗顔してる京さんの背中から抱き付いてみた。
「おはようございます、京さん。明けましておめでとうございます」
「…いきなり何」
「今年も宜しくお願いします」
「…昨日散々言うたやろ」
おはよ、と短めの挨拶をした京さんの背中から離れると、顔を洗ってスッキリした京さんの顔が見えた。
よく見てる筈なのに、新年明けたってだけで何か違う気がする。
「京さん明けましてのキス、」
「何言うとんねん、昨日散々したやろが」
「昨日は寝る前だったんで、リセット前って言うか」
「意味わからんわ。アホか」
呆れた顔をする京さんに、軽いキスをすると溜め息を吐いてリビングに向かった。
まぁ、せっかく2人でいるからって新年の挨拶したりキスねだったり最終的には姫初めまでしちゃったんだけどね。
それはそれで楽しかった。
「京さん、雑煮食べます?」
「うん。腹減った」
「おせちもありますよー」す
「…2人にしたら多いやろ」ぬ
「うーん、でもこれが見た目綺麗だったんで」
「見た目で選ぶんかい」
「あはは。座ってて下さいね」
京さんはおせちが置いてあるテーブルに座って、煙草を吸い始めた。
それを横目で見ながら途中だった雑煮に手を付ける。
「お待たせしました。お餅2個でよかったですか?」
「うん」
「あと、取り皿と。好きなの食べて下さいね」
「つーか、いつも思うけど、量考えて買えや」
「おせちは保存食なんで。正月はこれですよ」
「…………」
「はい、いただきます」
「…いただきます」
伊勢海老とか入っちゃってるの買ったんだけど、確かに2人では食べ切れない量で。
でも毎年、京さんは文句言いながらも食べてくれんだもん。
正月気分は味わいたいじゃん。
「京さん、雑煮美味しい?」
「まぁ」
「よかった」
「…最初は最悪やったもんな」
「あはは。京さんの好きな味研究しました」
「うん、えぇんやない」
「!」
俺の方を見ずに黙々と食べる京さんの言葉に顔を上げる。
あんまり京さんは言葉で誉めてくれないから、超貴重。
嬉しい。
今年もいい年になりそう。
「ヘラヘラしとんな。きしょいな」
「ふふ。京さん今年も大好きです」
「当たり前やろ、アホ」
当たり前として、過ごせる事が何よりも幸せなんですよね。
今年も宜しくお願いします。
今年と言わず、来年も再来年も。
終
20130101
[ 332/442 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]