培って来たもの/京流



今日は仕事が遅出の日。
でもれいたとアクセの店に顔を出す約束してたから早めに支度をする。

京さんも仕事で、似たような時間にマネが迎えに来るらしかった。


ゆっくりとした動作で身支度をする京さんを横目に、ヘアセットをして鏡を見てカラコンを入れる。

携帯が鳴って、れいたが着いた事を知らせた。


後ちょっとで準備が出来るから、ちょっと待ってねって返信しながら。
京さんの携帯が鳴ったのを確認して、アクセも付けた京さんが鞄を持ったのが見えた。


「ほな僕行くから」
「あ!京さん待って!俺も行きます!」
「……」


京さんの声を聞いて、慌てて玄関に向かう京さんの背中を追い掛ける。
座って靴紐を結ぶ京さんの隣で、どの靴にしようかちょっと迷って最近お気に入りのヤツにして、靴を履く。


「京さん、行って来ますのちゅー」
「きっしょ。死ね」
「あっ、行く前にキスしたら事故る確率減るんですよ!」
「そんなん知らん。事故る時は事故る時や」
「いやいやいや」


キス強請ったら、めちゃくちゃ嫌そうな顔してさっさと玄関を開けて出て行ってしまった京さん。
自分も後を追って、玄関の鍵を閉めて京さんの隣を歩く。


エレベーターに乗って、京さんと何気無い話をする事とか。
そう言うのが好き。

サングラスを掛けてる京さんの表情はあんまりわかんないけど、怠そうにちゃんと会話してくれるし。

もうすぐ1階に着くから、自分もサングラスを掛ける。


エントランスを抜けて、入り口の自動ドアをくぐると階段下に見慣れたれいたの赤い車。
と、横付けされた京さん所のマネさんの車。


「じゃ、京さん。遅くなる時は電話しますね」
「んー」
「スケジュールちゃんと確認して来て下さいよ」
「はいはい」
「じゃ、行ってらっしゃい、京さん」


京さんの肩に付いてたゴミを払って、京さんを送り出すと。
京さんは車に向かいながら右手を上げて乗り込んだ。

見送って、自分もれいたの車の助手席に座る。

運転席には、いつも見慣れたれいたの姿。
エンジンかけっぱなしだったから、車内は涼しかった。


「お待たせ」
「おぅ。朝からイチャついてんなーお前ら」
「そー?普通だろ」
「そっかー?つーか、お前らって一緒に暮らして何年になんの」
「あー…7年、ぐらい」
「へー」


れいたがハンドルを操作して、車を発進させる。
勝手に音楽をいじって、BGMを変えた。


「何かさー、時々ルキと京さんが一緒にいんの見るけどさー」
「ん?」
「何つーか、似て来たよな、雰囲気が」
「…え、何それ」
「やー上手く言えねーけど。夫婦とかお互いに似るって言うじゃん、そんな感じじゃね」
「ちょ、それだったらマジ嬉しいんだけど」
「服の系統も似て来たじゃん」
「あー結構お互いの貸し借りしてっからなー」
「何だかんだで長く一緒にいるし、似て来てもおかしくねーんじゃねーの」
「…そっかー…」


れいたの言葉に、自分の口元がニヤけんのがわかって。
口元を手で隠しながら窓の外の景色に視線を移した。


お互い仕事やツアーで、あんま家にいなかったり擦れ違い生活してたりする時もあるんだけど。
長年時間を共有して、雰囲気が似たようになるぐらい一緒にいるとか、考えただけで感慨深い。


自然と朝、ご飯食べて身支度してって行動が出来る事が当たり前になった事だけど。
それはそれで嬉しい事なんだなって今また実感。


「あーもう、ホント京さん結婚してくんねーかな。養子縁組」
「それ結婚かよ」
「そー。紙面上だけでも繋がって逃げられないようにしたい」
「お前の愛情ってこえーな」
「深い愛ですよ、れいたさん」


れいたに笑って、京さんの顔を思い浮かべる。
そんな事、京さんに言ったら嫌がられるんだろうなーって考えるだけで愛しくなる。


「まぁお前の深い愛は今に始まった事じゃねーからいいけど」
「だろ」
「そこ自慢すんのかよ」
「ははっ」


まぁ、嬉しい事を言ったれいたに、後でコーヒーでも奢ってやろ。
超機嫌良くなったからね、俺。




20120815



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