コンビニ店内/京流
深夜。
部屋着のジャージの格好のまま男2人。
気分転換にコンビニまで行こうかなって思ったら、京さんも気分だったのかついて来て。
まぁ俺は一緒に行けるから全然大歓迎なんですけどね。
都会の、星が全然見えない夜空を見上げ、息を吐く。
白い。
寒い。
隣を歩く京さんは煙草を吸いながら歩く。
そう言えば此処って喫煙禁止場所じゃなかったっけ?
最近は喫煙スペース少なくなって不便だよなーとか。
京さんの横顔を見ながら頭ん中で考えてると、京さんがチラッと俺の方に視線をやる。
「……」
「……」
「……」
「…好きだなって思って」
「まだ何も言うてへんやん」
「いや、何コイツ見てるんだって顔してたんで」
「…ま、そうやけど」
「あはは。夜って寒いけど空気が澄んでてイイですよね」
「あー…確かに」
そう遠くは無いコンビニに2人で他愛無い会話をしながら歩く。
そうすると早く着く様に感じるんだけどね。
京さんは見つけたコンビニのゴミ箱の隣に設置してある灰皿に向かって歩いて。
吸ってた煙草をその灰皿に落とす。
それを少し待ってから店内へ。
「京さん何か買います?」
「煙草ー…は、まだあったっけ?」
「買い置きはまだありましたよ」
「なら適当に。あ、コンポタ飲みたいコンポタ」
「美味しいですよねー」
「ん」
「あ、家にコンポタの素買っておきます?」
「うん」
店内に話しながら入ってすぐカゴを手に取って。
そんな広くない店内。
アイスコーナーを通って、雑誌を見る。
コンビニの雑誌はあんま欲しいのねーんだよなー。
京さんは飲み物のコーナーに行って烏龍茶を取り出してた。
好きだよな、京さん。
京さんは、俺が持ってるカゴの中にソレを入れてまた別のコーナーへ。
その姿を見ながら、コンポタの素が陳列されてる棚へ。
コンビニって割高なんだよなー。
24時間空いてるスーパーもあるんだけど、遠いしなー。
他に買い足す物はねーかな。
俺も何か飲み物買お。
飲み物コーナーに行って、新製品ないかなーって探す。
まぁよくコンビニ行ってるから、あんまり変わり映えはしてねーな。
…最近の酒ってデザイン綺麗なモン売ってんなー。
じっと酒のコーナー見てたら、またカゴに重み。
その方向を見たら、京さんがカゴの中に色々と選んだのを入れてた。
あ、野菜ジュース飲むんだ。
「何か酒買うん?」
「あー、買おうかな。デザイン凝ってるし」
「ジャケ買いかい」
「あはは。ある意味」
「ふーん。…僕これ買ってみよ」
「じゃ、俺これ買います」
京さんが今シーズンの苺味のカクテルを手に取って。
俺はその隣の葡萄味。
カゴにまた重みを感じながら俺も手に取る、と。
「…あ」
「え?」
「これお前の歌か。どっかで聞いた声やと思った」
「え、え?…あぁ、有線。流れてるんですね。今日発売日だったんすよー」
京さんが一人納得しながら耳を澄ませると、コンビニの有線から流れる自分の歌声。
作ったのが随分昔の様に感じる。
何百回も聞いた歌。
俺は好き。
自分の中で。
「…お前の声って特徴あんなー」
「いや、京さんのがありますよ」
「それはそうやけど。ふーん、今回のこう言う感じなんや」
「………」
「………」
「………」
「………」
「…や、何かそんな怖い顔して聞き入られると怖いんすけど…」
「まぁ、るきやなぁって思って」
「そりゃ俺ですからね」
京さんだって、京さんだって感じじゃないですか。
歌ってると。
それが好きだけど。
つーか、京さんに聞いて欲しいって思ってるけど、何にも言われねーのも怖ぇ。
感想求めてるワケじゃねーけど。
「お前発音悪いな」
「…京さんこそ」
「僕は歌詞聞かれたくないねん」
「……」
「でもまぁ、るきっぽい。えぇんちゃう。知らんけど」
「有難う御座居ます」
「もうえぇ?コンポタ買って帰る」
「あ、はい。京さんつまみは?」
「いらん」
京さんはレジの傍にあるホットのコーナーに向かう。
るきっぽい。
あんまり京さん俺の仕事の事に口出ししたりしねーし、知らねーだろうけど。
歌詞って、心ん中にある物が滲み出る物だから。
俺らしいって。
身近な京さんにそう言われるのが擽ったい感覚。
で、嬉しい。
店内でニヤけたらヤバいから、口許を押さえながらレジへと向かう。
あ、ついでにつまみちょっと買ってこ。
「遅いわボケ」
「すみません」
2つ取られたコンポタの缶をカゴに入れられて。
レジのカウンターへとカゴを置く。
ちょっと機嫌良くなった俺。
単純だなーって思いつつ。
京さんを好きで、尊敬してるから仕方無い。
好きな人に聞いてもらうのが嬉しいし、ね。
「2257円です」
「あ、京さん俺も、」
「いらん。けど300円ない?」
「…あ。ありますあります」
終
20101216
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