バカップルの休日/敏京+薫
「…はー…怠、」
久々の休日、何日間かある中はいつもあまり出掛けられへんからって彼女の我儘聞いて色んな店回ったけど、何であんなに女は買いもせぇへんのに買いモンが長いねん。
おまけに、飯食うってなったらデザートバイキングで美味しい店あるからって、絶対女同士で来る店やろってトコに連れて行かれた。
都会は有名店やと結構並んだりしとるから、食うんに何分かかんねんって行列に並ぶ中。
順番がもう少しって店内に入ってウェイティング用の椅子に彼女を座らせて荷物を任せて外に出て煙草を吸う。
たまにカップルおるけど、ほとんどが女性客ばっかでいたたまれへん。
たまの休みやからって我儘聞いたら、結構1日で精神力と体力使ったで、これ。
店先で、まだ行列が追加されるのを横目で見ながら煙草を吸う。
『煙草吸って来る』って店内から出たし、まぁ順番が来たら携帯にでも連絡来るやろ。
「あ、ここだって」
「うわ、むっちゃ並んどるやん」
「だねぇ…ここデザートが美味しいって聞いたんだけど」
「野郎同士入れる雰囲気ちゃうんやけど」
何となく、聞き覚えがある声に視線を上げる。
「…ちょぉ、お前ら何しとん」
「え?」
「あ、薫君」
「どうしたのこんな所でー」
したら見慣れたデカいのと、京君。
サングラスしとったりするけど見間違える筈が無い2人。
近寄って話し掛けると、ガラス越しにディスプレイされたサンプルを見とった2人がこっちを見た。
ちょっと驚いた顔の京君と、にっこり笑って間延びした声を出した敏弥。
手にはいくつかショップ袋を持っとって、京君は手ぶら。
「お前らこそ何しとん」
「オフだから京君とデート!」
「ちゃう。買い物」
「なかなか買い物行かないから色々回ったよねー」
「疲れた」
「で、スタッフの女の子にデザート食べ放題の美味しい店聞いたから、京君と来ようかなって思って」
「あー…でもここ結構並ぶで」
「薫君は?デート?」
「うん」
「だよねー1人でこんな店行ってたらウケる」
「煩いわアホ」
京君達は女性スタッフに聞いたらしいし、何なんこの店は女ん中では流行っとんか。
苦笑いを浮かべながら煙草の灰を地面に落とす。
「つーか、店内女ばっかやから気まずいでー」
「あ、やっぱり?京君どうする?」
「並ぶん嫌」
「んー…じゃ、別のトコでご飯食べよっか」
「うん」
「何がいい?」
「美味いモン」
「もう、それが難しいんじゃん」
「疲れた座りたい」
「先に喫茶店入って決める?」
「パフェ食いたいなー」
「ご飯前に食べたら絶対ご飯食べないよね、京君」
「うっさいオカンかお前は」
「あはは」
「……」
京君は怠そうに敏弥の方も見ずに淡々と言うとるけど、敏弥はにこにこ笑ったまま話しとって。
何か、こいつらって普段からこうなんやなぁって思う。
敏弥は京君好きな雰囲気を隠そうとせぇへんし、我儘言われるんが嬉しそうな感じやった。
短くなった煙草を、携帯灰皿を取り出して揉み消した。
「ってか薫君、彼女は?」
「あー…中で待っとる」
「えー、もうすぐなんじゃないの?いいなー」
「お前そんな甘いモン好きやったっけ?」
「俺じゃなくて京君ね。やっぱ好きな物食べて欲しいじゃん?」
「…せやな」
にっこり笑った敏弥は、京君の肩に腕を回したけど振り払われとった。
「じゃー行こっか、京君。薫君、またねー」
「ほなな」
「おぅ、休みボケで仕事遅刻すんなよ」
「薫君こそー」
敏弥と京君は、俺に挨拶してその場を去ってった。
えらい身長差ある2人が、楽しそうに(主に敏弥が)話しながら見送っとると、自分の携帯に着信。
彼女から。
もうすぐ自分らの番になるらしいから早よ戻って来いとの事やった。
…敏弥みたいにはいかんけど、確かにちょっと見習うトコあるかなぁ、なんて。
休日のバカップル見て思ってもうたわ。
終
20120714
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