アンチ紫外線/京流




朝、仕事行く前に買い物しようと思って予定時刻より早く起きて身支度を整える。
洗顔して化粧水と乳液で肌を整えて、リビングのテーブルに鏡を置いて髪を少しセットした。

最近パーマかけてるから、セットしやすいと言えばしやすいなーとか思いながら、いい感じのシルエットになる様にワックスを手に付けて髪をねじる。


一度手を洗いに行って、元の位置、ラグの上に座るとコンタクトケースを開けて今日の気分で決めたグレーのカラコンを目に入れた。
どうせ眼鏡するから、あんまわかんねーと思うけど。


鏡を見ながら指で目を見開かせて両目にコンタクトを入れてると、後ろで多分、着替え終わったであろう京さんがリビングに来た気配がした。


京さんも仕事あるって言ってたなって思いながらコンタクトを入れ終わり、鏡を見る。


よし、と自分の中で納得して、スプレー缶やワックスやらが整頓されて置かれてるケースの中から、目当ての物を探す。


「何やお前、どっか行くん」
「え?…あぁ、仕事の前に仲良いアクセのデザイナーに新作出たって連絡来たから見に行こうかなって思って」
「ふーん」
「京さんも行きます?」
「めんどい。暑いし極力外出たない」
「ですよねー」


ソファに座って声を掛けて来た京さんを振り返り、答えながらスプレー缶を振る。

仕事行く為に着替えて、髭も剃った京さん。
真夏、とまではいかなくても暑いから必然的に薄着になって、服から見える入れ墨が俺は好き。
格好良い。


振ってたスプレー缶の噴射口を自分に向けて、目を瞑って顔全体に思い切り吹き掛けた。


「………何しとん、お前」
「え?」
「……」
「あ、これですか?」


京さんが訝しげな顔をして俺を見て、一瞬何の事かわからなかったけど京さんの視線が俺の手の中にあるスプレー缶だと言う事に気付く。

首元と、露になってる腕から手に掛けてもスプレーを吹き掛ける。


「これ、スプレー式の日焼け止めなんすよ。液体塗るより便利だし早いし、良くないですか?」
「あぁ…」
「ちょっと街中歩くんで、今日梅雨の合間の晴天だっつーし、焼けたら嫌なんで」
「女か」
「え、だって嫌じゃないですか、服の形に焼けるの。脱いだらカッコ悪いじゃないっすか」
「何処で脱ぐねん誰も気にせぇへんやろ」
「脱ぎますよ京さんの前で。なのにTシャツ焼けとかになったら絶対嫌です」
「…女か」
「役割は割りと」
「割りとっつーか、まんまやな」
「あはは。これ髪の毛にも使えるらしくて」
「髪色コロコロ変えるヤツがちょっと紫外線カバーしたぐらいで間に合わんやろ」
「積み重ねが大事らしいんで」


言いながら、出てる肌の部分、髪へと日焼け止めをスプレーして。
自分の周りにスプレーの粒子が留まってちょっと咳き込んだから窓を開けに行く。
外は雲一つない快晴。

紫外線直に浴びたくねーよ。
どっちかっつーと、夜に出掛けたい、切実に。


空気入れ換えの為に暫く窓を開けておこうと思いつつ、またテーブル前に座る。
色々片付けて。


「だって京さん色白の方が好きですよね?」
「それは女のタイプや」
「じゃ俺が色黒でもいいんですか」
「あー…健康的でいいんやない。黒豚っぽい」
「…京さん、一応俺痩せたんですけど」
「今は白豚やな」
「太ってねぇ…」
「しゃーないなぁ。じゃ、もやし」
「…もうちょっとマシな例えないんすか…」
「るきやしなぁ…」


とか言いながら、意地悪く笑う京さん。
わかってますよ、京さんが俺にとって嬉しい言葉を言ってくれない事ぐらい。


そう言う所も、好きっつーか惚れた弱味なんで。
寧ろ誉められたら何か裏があるんじゃねーかって疑う。

ストレートな愛情表現を受けるのは慣れてねーから。


アクセを付けて、出掛ける準備万端にする。


「お前昔っから白いやんな」
「仕事上、焼こうと思った事ないですね」
「ま、えぇんやない」
「京さんも焼けないですよね」
「墨入っとるしなぁ」
「あ、そっか。焼けたら勿体無いですね」
「色落ちするし」


京さんは白いとまではいかないけど、黒くもない。
墨でほとんどわかんないけど。

やっぱ京さんの腕は男らしくて、好き。


自分のと比べると男としてどうなのって思うけど。
京さん好みの色白を信じて、美白に勤しみます。




20120629



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