キスの意味/京流




セックスの後の気怠い感覚って好き。

空調管理してても汗掻いたしシーツぐちゃぐちゃだし、中出しされたモノって京さんのだと思えば好きだけど、物理的には不快だし。


でも汗を流して息を整えながら隣で寝そべった京さんを見るのは好きで。
段々とさっきまでの空気が変わって来て手足の感覚が元に戻って来た頃、京さんの腕に擦り寄った。

しっとりと汗ばむ、刺青まみれの腕。
そこに甘える様に唇を寄せる。


「…そう言えば、23日って『キスの日』だったらしいですよ」
「は?」
「誰かに言われて、何だそれって思ったんですけど一応調べたら、キスってする場所に色々意味があるらしくて」
「……」
「髪は『思慕』額は『祝福、友情』耳は『誘惑』みたいな感じで。あ、もちろん、唇は『愛情』でした」


京さんの顔を見ながら、そう言うと眉を少し寄せて『またか』みたいな表情に少し笑う。
そう言うの俺が好きって、わかってますよね、京さん。


「…別に意味が無くても、キスぐらい出来るやろ」
「そりゃそうですけど、好きな人とするなら意味あるじゃないですか。京さんのヤッてる最中にしてくれるキス、好きなんです」
「……」


こっちがいっぱいいっぱいになって揺さぶられてんのに、呼吸出来ない程荒々しくキスされて舌噛まれて。

身体も思考回路も全部、ぐちゃぐちゃにされる感覚。
それすら幸せで堪らないのって、やっぱり2人の間に意味があるからだと思うんですよね。


「胸は『所有』腕は『恋慕』」
「……」
「手首は『欲望』」
「…なかなかキスせぇへんやろ、そんなトコ」
「確かに。そこまでするのって前戯な気がしますよね」


京さんが身体をちょっと起こしてサイドテーブルに置かれた煙草に手を伸ばした。
ヤッた後に煙草を吸うのは、京さんの癖。


その一連の流れを、視線で追う。
指に挟まれた煙草から、手首、腕。

もう刺青で覆い隠された、昔の傷。

昔は意味なんて、考えた事も無かったけど。
言われるままに血だらけの京さんの手首を舐めた過去は、意図せずに意味があったのかもって、そんな後付けをぼんやりと思う。


半分だけ身体を起こした京さんに擦り寄って見上げて聞く。
汗が引いた身体は、ちょっとさらさらしてた。

煙草を吸う京さんは、煙を吐き出しながら目を細めて俺を見下ろした。


「ねー京さんは何処にキスされるのが好きですか」
「別に。不快なトコ以外やったらどうでも」
「えっ、逆に不快な所って何処ですか」
「顔。何かウザい」
「え、唇は…?」
「どうやろな」
「……。でも今までもして来たんで、大丈夫と思っておきます!」
「はいはい」
「因みに俺は唇とか首筋とかにキスされるのが好きです。寧ろ噛まれたいんで」
「何それキモい」
「キスする意味、首筋は『執着』です」
「……」


京さんの視線が、一瞬俺の首筋に落とされた。

京さんの癖。
よく俺の首筋に噛み付く事。

キスすんのとはちょっと違うけど、噛み痕見たりすると嬉しかったりする場所。

京さんが、キスする場所を気にしてやってる訳じゃない事はわかるけど。
無意識にやった事って事実の方がちょっと俺的にはテンション上がります。

意味を知っちゃうと。


京さんが嫌そうな顔をしながら煙を吐き出す。


「京さんになら、足にもキスしますよ」
「は?」
「脛は『服従』足の甲は『隷属』爪先は『崇拝』なんで」
「お前はそんなんでいいんか」
「京さんがしろって言うなら全然」
「キモい」
「あはは。でもやっぱオーソドックスに唇にキスするのが好きですね」


愛情。

それがキスするので伝わればいいなって。

煙草を吸う京さんの唇を見上げて、天の邪鬼な京さんに今キスしてって言っても無理だろうから。

今までの言葉は忘れて、また無意識に噛み付いて下さいねって。
そう思いながら京さんに擦り寄ったまま目を閉じて、風呂入らなきゃなーって思った。

そんなまったりな雰囲気が、好き。




20120528



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