猫/敏京
「最近あったかくなって来たねー」
「うん」
「でも夜ちょっと寒いよね」
「着るモン困るわぁ」
「京君風邪引かない様にしなきゃ」
「僕よりお前の方が風邪引きやすいやん」
「あは。そん時はそん時で京君に看病頼みます。ナース服を着て」
「ハイ無理」
「早いよ」
「だってアレ着たら看病にならんやん」
「それは京君が盛ったからじゃんか」
「うん、楽しかったやろ」
「そりゃね」
オフの日に京君と1日中部屋に籠って寝たりゲームしてたりイチャイチャしてたりしたんだけど。
夜になっていい加減お腹空いたねーって事で、京君と2人で近くのコンビニにお買い物。
ご飯食べに足伸ばすのは面倒だからって。
コンビニでご飯とお菓子を買った2人分の袋を持って、京君と話しながら夜道を歩く。
昼間は結構あったかかったりするけど、夜は肌寒いなー。
京君はコンビニで買ったココアを飲んで。
ちっちゃい子が可愛い飲み物飲んでるのって可愛いよね。
「あ」
「ん?」
「猫がおる」
「猫?」
「うん」
京君はそう言って、俺の隣から道端に移動する。
その姿を目で追うと、電柱に隠れた白い猫の姿を見つけた。
京君は近寄って座り込む。
手を伸ばして呼ぶけど、猫は警戒して京君に近寄らない。
大きな目でじっと京君を見上げてた。
え、何この図。
超可愛いんですけど。
京君動物好きだもんね。
おいでおいでしてみるけど、猫はなかなか寄って来ない。
その姿を見下ろして悶える。
可愛いなぁ。
心の中がほっこりしつつ京君の隣にしゃがむと、猫は更に後ずさる。
「ちょぉ、お前デカいんやから来んな。逃げるやろが」
「何で。俺も猫触りたい。おいでー」
「…来ぉへんな」
「ま、警戒するよねー。猫が食べる物何かないかな?」
「ココア飲まんよなぁ」
「牛乳ならいいんじゃね?」
「牛乳は飲むモンちゃうやろ」
「だから背が伸びなかったんだよー」
「っさいわ」
ガサガサとコンビニ袋の中を漁る。
あ、俺のつまみに買ったヤツあるんだった。
「ジャーキー食べると思う?」
「食うんちゃう」
「ちょっと待って。はーい、おいでー?」
袋を開けてジャーキーを取り出す。
猫に差し出して軽く振ると、興味を示したのか、じっと見て来て。
恐る恐る、と言う感じに近寄って来た。
「あ、来るかも。おいでー怖くないよー」
「ちっさいなぁ。野良?」
「首輪ないからそうだろうねぇ」
「ふーん。あ、来た」
「食べてる。可愛いー」
下にジャーキーを置いてやると、近寄って来てそれを食べた。
京君がゆっくりと猫を撫でると、目を細めて京君の手に擦り寄って来て。
そしたら京君が嬉しそうな顔になった。
あー可愛いなぁ。
猫も可愛いけど、京君の方が可愛い。
マジで。
「猫欲しいなぁ。家空ける事多いし無理やろけど」
「でも俺にはネコちゃんいるけどね」
「は?」
「ね、京君!」
「……お前ホンマきもい」
にっこり笑って、京君の肩を叩くと。
暫くして俺の言葉を理解した京君は嫌そうに眉を寄せた。
それでも京君の手は至極優しく、猫を撫でてて。
もう、うちのネコちゃんは可愛いなぁ。
そう思いながら、猫を撫でる京君を撫でる。
夜、道端で大の大人2人が何やってんだろって思うけど。
今誰もいないし、いいよね。
「…何」
「んー?京君が猫可愛がってるから、俺も可愛がろうかと」
「アホな事言うなや!…あ」
「あー…逃げちゃった」
「敏弥の所為やろ!」
京君が俺の手を払った瞬間、猫はビックリしたのかどっか行ってしまった。
「御免ごめん」
「敏弥知らん」
「あっ、待ってよー」
京君は不機嫌そうな顔をして、ココアを飲みながら立ち上がって帰路に着く。
慌てて追い掛けると、まぁすぐに追い付くんだけど。
「今度ペットショップ見に行ってみる?」
「…気ぃ向いたら」
「欲しくなっちゃうかもね」
「ホンマや。飼って敏弥構う時間無くしたる」
「やだやだ。俺は構って!」
「いーやーや」
とか言っちゃって。
多分、京君が動物飼っちゃうと俺は嫉妬しそうだから阻止するけどね。
ネコちゃんは、可愛い可愛い京君だけでいいんです。
終
20120507
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