恋人は?/敏京




「敏弥さんの恋人ってどんな人なんですか」
「えー?オフレコですか?」
「オフレコです」
「超可愛い子」
「へー」
「そんで、超我儘なの」
「我儘な子が好きなんですか?」
「うん、好き。その子限定でね」
「惚気ますね」
「だって可愛いんだよー?我儘言ってんのも、甘えてるって思えちゃうね。時々本気でウザがられてキレられるけど」
「敏弥さんが尻に敷かれてる感じなんですか?」
「そっかなー?向こうも俺の事ちょー好きだけどね。言葉に出さないけど、オーラ?雰囲気?が俺の事好きーって言ってんの」
「あはは。敏弥さんこそ、彼女の事が好きーってオーラ出てますよ、今」
「だって大好きなんだもん」


……。


敏弥が何かインタビューする人と楽しそうに話しとる。

まぁ、もうインタビュー終わったし、挨拶して雑談するんは全然えぇんやけど…。


離れとる所でも聞こえて来る楽しそうな敏弥の声に腹立つ。
内容が内容なだけに、ニヤニヤしながら僕の方に時々視線をやる意味に思わず舌打ちして視線を逸らす。


僕が話に入って否定する訳にもいかんし。

好き勝手言いやがって敏弥め。
ムカつく。


淹れて貰ったココアを飲みながら、敏弥を睨み付ける。


誰がお前の事好きやねん。
いや、好きやから付き合っとんやけど。

何かそれを本人に言われるんてムカつく。
まぁそれは僕が体当たりで敏弥の様に感情を相手に晒すんが苦手って言う理由もあるんやけど。


他のメンバーはわかっとるから苦笑いで僕を見るか、からかう視線を向けて来るから、それもめっちゃムカつく。


暫くインタビューの人と盛り上がっとった敏弥は、その人が挨拶して出てくと足取り軽く僕の隣にやって来た。


「京くーん」
「…死ね」
「あれ、ご機嫌斜め?」
「知らん」
「そっかぁ」


敏弥から視線を逸らしてあからさまな不機嫌な声出しても。
敏弥は笑いながら僕の隣に腰を下ろした。


「……お前さっきの何」
「え?」
「他人に何言うとん、アホ」
「あぁ。本当の事じゃん。インタビュアーさんは誰かは知らないよ」
「誰がお前の事好きやねん」
「え、京君が」
「死ね」
「またまたぁ。じゃ、京君の恋人はどんな人ですか?」
「は?」


僕の悪態も気にせず、敏弥はにこにこしながら手でマイクを向けるポーズをして僕に聞いて来た。

楽しそうな敏弥の顔。
目を細めて呆れる。


「…アホか」
「え、京君の恋人ってアホなの?」
「うん、めっちゃアホ。変態やし」
「そこが好きなんでしょ」
「…あと発言が頭おかしい」
「……。じゃ、格好良い?」
「んー…ライブ中、ベース弾いとる時は」
「うわわ、ちょ、可愛い事言ったよ今!他は他は!?」
「え…無い…」
「無くねーだろ!」
「敏弥煩い」


ちょっと食い付き気味に敏弥が近寄って来たから、若干引く。


「もー…じゃ、恋人の何処が好きですか?」
「まだそのインタビューごっこ続くん」
「いいからいいから。で、恋人の好きなトコは何処?」
「身体」
「…他は?」
「セックスの相性」
「……。他は?もっと内面的な物とか」
「無い」
「だから無くはねーだろ!」
「煩いって、敏弥」


敏弥がアホな事聞いて来るから、半分冗談で答えたったら。
敏弥は不満ならしく、ちょっと不満そうな顔したんに笑みを浮かべる。

こう言うガキっぽいトコ、時々腹立つけど、結構好きやったりはする。


「もう馬鹿!京君嫌い!」
「へーぇ、嫌いなんや?」
「ッ、うん」
「ほうかー…ほな僕もきら、」
「嘘だからぁあ!もう好き!超好き!大好き京君!」
「やから煩いって、敏弥」


敏弥は叫びながら僕に抱き付いて来た。
いや、ここメンバーおるから。

そう思って、敏弥を僕の身体から引き剥がす。


ちょっとからかったら、ころころ表情変えて、おもろい。


僕の恋人は、何を間違ったんかアホでキモいけどベース弾く姿は格好えぇ、僕の事が大好きな奴です。


「お前ら、休憩時間とは言えメンバーおるんやから静かにしとって」
「はーい。…怒られちゃったね」
「敏弥の所為でな」
「だって京君好きなんだもん」
「理由になってへんから」


そう言うて笑ったら、敏弥も笑った。
嬉しそうに。


あぁ、こう言う雰囲気が、敏弥が言うた事なんやろなって思ったけど。

好きには変わり無いから、えぇか。




20120417



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