痣/京流




京さんと一緒に風呂に入る。
今日の入浴剤は新しく買ったバスボム入れてみたり。

俺は季節によって色んな種類があったりすんのが好きなんだけど、京さんは匂いがキツいって言ってた。

でもまぁ、入れるなとは言われねーし。
風呂に入る時は毎回違うヤツ入れてみたり。


乳白色に近いピンク色の湯の中、京さんに背中を預ける形でピッタリとくっついて湯に浸かる。

今日スタジオであった事とか、1日の事を話す俺に聞いてんのかどうかわかんねー返事をする京さん。


疲れてんなーって顔で。
適当に返事しながら刺青だらけの指で俺の濡れて首に張り付いた髪や肌を撫でる。

その指先が優しくて擽ったくて。
風呂に浸かってんのもあって、身体を弛緩させて存分に京さんに擦り寄って甘える。


リラックスしてる時の京さんは甘えても文句言わねーし好きにさせてくれんだよ。
それに乗じない手はねーだろ。


「京さん、明日は何時ですかー」
「あー…知らん。昼から、やったんちゃう」
「ちょ、スケジュール把握しましょうよー」
「あっちが曖昧やねんて。XX日〜XX日の間に撮影があるとか、そんなんばっかやし」
「あー…わかんない時ありますよねー。取り敢えず、明日昼前に起こしていいですかー」
「適当で」
「あはは。遅刻したら怒られますよー」
「お前とちゃうから平気」
「最近は遅刻してませーん」
「へーぇ」
「あ、信じてないですね」
「どうでもえぇし」


湯に浸かりながら、ゆるーい会話をして自分の後ろにいる京さんの方に視線を向けて笑う。

濡れた髪は全部撫で付けられてて、その間から見える刺青。
その肌が濡れてるから、刺青がすげー色っぽく見える。


京さん明日は昼かー。
今日出来るかなーとか、そんな事思ったり。


「…お前、それ何」
「え?」


湯の中で足を曲げて体勢を変えてると、京さんが声を上げる。
何、と思って京さんを見て、京さんの視線を追って乳白色系の湯から少し出た自分の膝の赤い痣が目に付いた。

結構広い範囲に赤くなってて、風呂に入って血行が良くなって結構凄い色になってる。

京さんの手が、その膝をゆっくりと撫でた。


「あー…これ、夜中にトイレに起きて、暗いまま歩いてたら、寝惚けてて誤って壁?っつーか角?に思いっ切りガンッと当たっちゃったんですよねー…」
「…アホか」
「やー叫びそうになりましたよー。朝ここまで赤くなってなかったんですけ、ど…っ!?ちょ、京さん痛い痛い痛い!触ったら痛い…!!」
「ふーん、痛いんや」
「うぅ…忘れてたのにー…」


京さんの手が、俺の痣を掴む。
力入れられるとまだ痛くて、身体を丸めて痛みをやり過ごす。

パシャッと乳白色系の湯が浴槽の中で揺れた。


離された膝を撫でて、京さんを見れば口の端を上げて楽しそうに笑った顔。

格好良いし好きだけど、やる事は意地悪なその人。


格好良いし好きだけど!


掴まれてズキズキしてた痣を撫でて痛みをやり過ごすと、また京さんに背中を預ける。


「はー…いつ治んだろ。ライブ中に怪我したとかならまだ格好付くのに」
「お前痛いん好きやしな」
「セルフで痛い事する趣味は無いですよ!?」
「どうだか」


京さんの鼻で笑った様な声が聞こえて、右手で俺のゲージのデカいピアスリングをイジる。
これはもう10年以上前のもんだし。
拡張痛かったのだって忘れてる。


「でも京さんが痛い事してくれるなら大歓迎です」
「なら膝触らせろ」
「…痣掴む気ですよね」
「うん」
「京さんが付けたんじゃない痣なんで嫌です。痛いんで」
「セルフSMやもんな」
「そんな趣味無いですって!」
「はいはい」
「適当過ぎる…」
「何か文句あるんか」
「…ッ、無い、です」


俺のピアスを触ってた京さんがグッとピアスを引っ張って、わざとらしく低い声を出した。
その咎める様な声に心臓が跳ねる。

あーもう。
格好良いんですって、京さんのその俺を支配しようとする声。
大好き。


セルフで痛い事する趣味は無いんです、俺。

だから、京さんの手で痛い事が快感になる様にして欲しいです。


なんて、もうほとんどそんな感じになってんだけどね、俺。
雰囲気って大事だから。


赤くなった痣のある膝に、京さんに弱点を知られた事が。
ちょっと、興奮するけどね。




20120415



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