内の中の想い/京流
酔っ払ったるきを抱えて自宅マンションに戻る。
ドアを開けてフラフラんなったるきを廊下へと下ろす。
酔っ払って絡んで来やがったけど、車内でキスしたったら大人しくなってそのまま寝やがったらしい。
現実と睡眠の間を行き来するるきは、冷たい廊下が気持ちえぇんか寝転がったまま動こうとせぇへん。
重いるきを支えて運んだから疲れて、自分もるきの隣に腰を下ろしてブーツを脱ぐ。
「おい、るき。靴脱げ」
「ん〜」
「…もう僕知らんからな」
「あっ、きょーさーん」
るきのレースアップブーツは脱がすんめんどいし、まぁ部屋ん中におるから大丈夫やろって思って。
玄関で寝るるきを放って部屋へ行こうとしたら起き上がったるきに服を掴まれて。
また床に舞い戻った。
何やねん。
脱がしてやらんぞ、僕は。
「京さーん」
「何もう僕風呂入って寝たいんやけど」
ほぼ1日外に出とったし。
遠出やったし。
そんな事を思いよったら、僕の服を掴んだるきが上体を起こして僕の隣に座り込む。
やから靴脱げ。
「…何で今日花見行ってくれたんですか?」
「何や行かん方が良かったんか」
「んーん、超嬉しかった。めちゃくちゃ楽しかったです、マジ」
「そりゃ良かったな」
…何でアホるきに花見付き合ったんとか、気紛れ以外の何物でも無い。
るきが笑って言うから、頭に軽く手を置いてまた立ち上がる。
したら、るきは急いでブーツを脱いで、僕の後を追って来た。
出来るならさっさとせぇや。
リビングの電気を点けてソファに座る。
煙草を取り出して1本咥えると、るきが僕の隣に座って身を寄せて甘えて来た。
元気を取り戻したるきは、鼻唄を歌いながら持っとった鞄の中を漁ってデジカメを取り出した。
「れいたが沢山写真撮ってくれたんですよー」
「お前メンバーをアシにしてパシりにして酷い奴やな」
「でもやってくれんだもん」
「もん、とかキショい」
「うわ…ッ、何するんですかもう…!」
デジカメをイジって写真を見てたルキに煙草の煙を吹き付けてやると顔を歪めて咳き込んだ。
手で煙を払う。
「あ、これとか超いい感じに撮れてません?」
「あー?」
僕の腕に甘える様に頭を寄せてデジカメの画面を見せられる。
画面を見ると、僕とるきが桜の木を見上げとる感じで。
つーか、僕は桜見とるけどるきは僕見とる感じ。
…キモいな。
アングルはまぁ、綺麗やけど。
これも、京さん格好良いとか言いながら何枚もデジカメの写真を見とった。
はいはい、わかったから。
「京さんと花見出来たとか、もうマジ幸せなんすけど、俺」
「そんな事ぐらいで何なん」
「や、だって京さんが花見とか一緒に行ってくれるとは思わなかったんですもん」
「……」
「だから、超テンション上がっちゃって」
「…あっそ」
そう言うるきが見せるデジカメの写真は、るきがめっちゃ笑顔やった。
まぁ、るきずーっと機嫌よう話しとった気がする。
「有難う御座居ます、京さん」
「…別に」
礼言われる事ちゃうやろ。
しかもそんな事で嬉しがられるとか、僕どんな人間やねん。
何年一緒に暮らしとんやお前。
別に一緒に出掛けるんとかよくしとるやん。
買い物やけど。
まぁ一応。
たまには付き合ったらなな。
何か最近、るきモテとるようやし?
ムカつく事に。
「あ、京さんのこの横顔好き。超格好良い。惚れ直す」
「…あっそ」
写真見て楽しそうな声を出するきから視線を逸らして。
僕の腕に凭れとるるきは何かごちゃごちゃ言いながら写真見とった。
まぁちょっと、るきのメンバーとも喋ったし。
いつもとちゃう感じが気分転換にはなったけど。
「これも京さん格好良いー。好き」
「……」
るきの言葉を疑う余地は無い筈やのに。
何を僕は、やっとんやろ。
終
20120411
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