君とお花見最終日/敏京




「あーもう桜散っちゃったかぁ」
「めっちゃ雨降っとったしな」
「最近忙しかったから桜見る機会無かったね」
「んー」
「でもホラ、ちょっとだけ残ってる枝もあるよ」
「頑張るなぁ。散る時は潔く一気に散ったらえぇのに」
「京君は男前だもんねぇ」


仕事帰り。
遅くに終わって京君と一緒にご飯食べて、コンビニに寄って暗い道を歩く。


京君はコンビニで買ったパックのジュースを飲みながら隣を歩いて。
桜の木がある公園を通る。


あまり意識しなかった満開であったであろう桜の木は。
今日の雨と風で花びらは散っていて、申し訳程度にポツポツと枝に残ってるだけ。


もう日付も変わって深夜になる時間。
地面は濡れて所々に水溜まりが出来てる。


俺が立ち止まったら、京君も歩くのを止めた。


街灯の下。

足元の水溜まりには散った桜の花びらが大量に浮かんでて。
夜になると晴れた空から見える月が水溜まりに映ってて何か情緒ある感じじゃない?

恋人と見るにしてはさ。


「ま、今年はちゃんとお花見出来無かったけどー。これはこれで何か良くね?」
「何が」
「水溜まりの花びらとか」
「こんなん残骸やん」
「水溜まりに見える月とか」
「空見たら?」
「もーロマンがねーなー!」
「敏弥の口からロマンとか聞こえて来たんがビックリやわ」
「何でよ。俺ちょーロマンチストじゃね?」
「はは」


鼻で笑って京君が俺を見た。

月の光と街灯で見える京君の顔が綺麗。
可愛い。
大好き。


まぁ京君と一緒にいるから、を前提として全ての景色が良く感じるんだろうね。


深夜、周りに誰もいないのを確認して。
ストローを噛む様にジュースを飲む京君の手に手を重ねて、京君の唇を占領してるソレを引き剥がして屈んでキスをした。


お互い目を開けたままの、啄むだけのキス。


京君が目を細めて、俺の首にもう片腕を回して上唇に噛み付かれた。
甘噛みして舐める、京君のキス。


深夜っていいね。
外で京君からキスしてくれるもん。


唇を離して、紙パックを持ってる京君の手を近づけて飲んでたジュースに口を付けて飲む。
噛まれたストローは歪な形。


甘ったるい味。

さくらんぼ味とか、この季節限定だろうねー。


手を離すと、京君はまたストローを噛む様にしてジュースを飲んだ。


「甘い」
「美味しいやんこれ」
「京君そう言うの好きだよね」
「うん」
「ねぇ京君」
「んー?」
「ストロー噛んじゃうのってさ、欲求不満なんだよ。知ってた?」
「…えぇやろ。ロマンよりも即物的で」
「あは。ほとんど毎日の様にヤッてるのに、欲求不満?」
「うん。敏弥とは何回ヤッても足りひん」
「もう、淫乱になっちゃって」


そう言うトコが、可愛いんだけどね。


京君の髪を撫でると、ニヤリと笑った顔と目が合った。


このまま桜と月の下で犯しちゃいたいぐらい、可愛い。


「じゃ、早速帰って勤しみますか」
「えー何かその言い方が嫌」
「じゃ何て言えばいいの」
「ロマンチストならそれなりに言うてみたら?笑うけど」
「笑うのかよ」


京君の肩を抱いて歩き出すと、京君は笑って俺の身体を押し返した。

そんな京君の肩を抱いた手で顎を掴んで自分の方を向かせる。

京君の目が、俺の顔をじっと見上げた。


「家に帰って一緒に愛を育みませんか」
「…お前のロマンてそんな感じなん?寒いわー」
「笑えよ!」
「何やねん逆ギレか!」
「だって京君好きだからぁー」
「あーはいはい。くっつくなアホ。死ね」


ちょっと京君引き気味に眉を寄せて、どうせなら笑ってよ。
言うの若干恥ずかしいんだから!

がばっと抱き付くと、京君は腕を突っぱねる。


本気の抵抗じゃない抵抗なんて、可愛いだけじゃん。


「じゃ、潔く2人で散ろうよ」
「1回で散ったらシバくで」
「頑張るー」


少し風が吹いて、残った桜の花びらが舞い散った。


来年は花見しながらえっちとかしてみたいね。
怒られるんだろうけど。




20120411



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