お花見日和な1日A/京流+玲




やっぱ都会は車で走るモンじゃねーよな。
少し渋滞に巻き込まれつつ、ルキが指定した場所に到着。

駐車場に車を停めて、少し歩く場所にある桜は。
遠くから見ても結構咲いてて綺麗に見えた。


別に場所取りしてねーし、酒や弁当を持って来てる訳じゃねーから花見っつっても宴会する訳じゃねーんだけど。


長時間車に乗ってたから、降りて伸びをしたルキは。
持ってた鞄を漁って何かを俺に差し出した。


「れいちゃん、はい」
「え、何」
「デジカメ。これで京さんと俺と桜をいい感じに撮って」
「は!?プロじゃねーからいい感じには撮れねーよ」
「撮られ慣れてんだから平気平気。カメラアングルとか…まぁ頑張って」
「はいはい。お前アシとカメラ係に俺呼んだだろ」
「あれ、バレた?」


後で奢ってやるからお願いって。
しょーがねーなって言いながら、ルキからカメラを受け取る。


「……人多いんやけど」
「これファンとかいてバレたら嫌ですね」
「帰るか」
「えっ」
「待って京さん!せっかく来たんだから!ちょっとだけ!ちょっとだけでいいんで帰らないで!」
「何そんな必死なん…引くわー」


やっぱ花見シーズンだからか。
会社行事としてなのか、平日にも関わらず何本もある桜の木以上に、シートを敷いて花見してる花見客が沢山いて。


嫌そうに言った京さんがそう言うと、ルキが必死に引き止める。
言葉とら裏腹に楽しそうな顔で笑う京さん。


あー、うん。
ハタから見たらバカップルの会話にしか聞こえねーよ。


シートとか持って来てねーし、何の準備もしてねーから桜並木を3人で歩く。
ルキからデジカメ預かってるし、一応撮ればいい訳?

よくわかんねーけど、取り敢えず後ろからルキと京さんを撮影。


…ちっせーな2人共。


時々、風が吹いて花びらが散る。

見上げると晴れた空模様にピンクの桜。
こう言う花見とか来なねーし、案外いいかもな。


「れいたー何してんの早く来いよー」
「わかったわかった」


振り向いたルキが呼んで、ルキと京さんの元へ早歩きする。


少し離れた所にデカい桜の木が見えた。

人がいすぎて近寄れねーけど、ルキが言うにはここでは一番デカい桜らしい。
桜も満開だし、綺麗、かな。


「あれ入れて写真撮って」
「はいはい」
「京さん、こっち」
「何やねん」
「撮るぞー」


ルキが気に入るかどうかは別にして、デジカメで撮影する俺。
撮られ慣れてるからか、2人共自然な感じでカメラに入る。


「桜っていいですねー。何か歌詞書けそう」
「桜の木の下には死体が埋まっとるとか、そう言う系か」
「…ホラーですね」
「えぇやん」
「もうちょっとロマンチック系でお願いします」
「そんなつまらん」


ルキ楽しそうだなー。

俺らといる時とはまた違う、ルキの顔。


本気の恋愛したら、人はあんなにも変わるのか。













写真撮りまくって、ルキも自分で桜や京さんを撮りまくって。
結構広い範囲に桜あるし、歩き疲れて花見客から少し離れた所にあるベンチに座る。

遠くから見たら、桜密集してる様に見えるしこれはこれで綺麗だなー。


つーか、人多すぎて疲れたし。


「るき、飲みモン買って来い」
「はーい。何がいいですか?」
「烏龍茶」
「わかりました。れいたは?」
「や、俺が行くって」
「いいよ、座ってて。コーラでい?」
「…じゃ、宜しく」
「うん」


京さんがパシると、ルキは大人しく人がブルーシートで宴会してる中を縫って売店がある方へ歩いて行った。
その背中をボーッと見つめる。


桜の木の下。
京さんと2人、ベンチに座って。


チラッと京さんの方を見ると、煙草を取り出して咥えた。


「おい」
「あ、はい」
「火。貸して」
「…どうぞ」
「ん」


京さんに言われて、ライターを取り出して火を点けると。
慣れた仕草で煙草に火を移す。


どうも、と言いながら煙を吐き出すその動作は。
どう見ても純粋に花見に来ましたって雰囲気ではなく。


じゃ何で来たんだろって思うから、この人も何だかんだイベント事好きなのかなーとか。
観察してたら京さんの瞳が俺を捉えて一瞬固まる。


「…なぁ」
「あ、はい」
「あいつってモテるん?」
「…あいつって」
「るき」
「あー…」


京さんの質問の意図があまり掴めなくて、何て答え様か一瞬迷って視線を逸らす。

って言っても、京さん相手に嘘吐ける程、俺は器用じゃねーけど。


「…一応は、モテますよ。やっぱバンドやってるんで。我儘なんすけど、人を惹き付けるモンがあるって言うか」
「ふーん…」
「え、ルキ何かしました?浮気とか一切ねーと思うんすけど。女来る様な飲み会一切顔出さねーし、全切りしてから京さん一筋だし。休憩中だってずっと京さん京さんって煩いぐらい京さんの話してますけど」
「は?何喋っとんやあいつ…」
「…あっ、…まぁ…色々と…ルキってあった出来事とかよく喋るタイプじゃないですか。そんな感じです」
「あぁ」


俺が捲し立てる様に言うと、京さんは眉間にシワを刻んで眉を寄せた。
フォローすると、京さんは足を組んだ膝に煙草を持つ手を置いて、地面に視線を落とした。


それから俺の目を見て口を開く。


「…お前は」
「……」
「るきん事、好き?」
「…好きですよ。メンバーとして、ダチとして。大事な奴なんで」
「…うん。まぁ、そう言うモンやんな」
「──…何かあったんすか?」
「別に」
「そっすか」
「……」
「……」
「……」
「…ルキには、幸せになって欲しいんですよね、俺。色々、あったんで」
「……」


風が吹いて、桜の花びらが散る中、ぽつりと呟く。


まだ少し、この人は苦手なんだよ。

ルキにあんな事をしたのもこの人で。
今ルキが笑ってられんのもこの人だから。


仕方ねーって思っても、まだちょっと引っ掛かる。


でもルキが笑って京さんの話をするから、いつもその気持ちは押し込む。


「…それは、るき次第」
「……」
「本人が意図してなくても、不可抗力でも。僕ん事、裏切らんかったら」
「それって、」


どう言う意味でですかって聞こうとしたら。
ルキが買い物から帰って来たのが見えて口を閉ざす。

こっちもこっちで、花見しに来てる奴とは異色の雰囲気。


やっぱ俺らに花は似合わねーよ。


「京さんお待たせしました。何か食べ物買おうとしたら売店超混んでて」
「飲みモン言うたやろ」
「だって美味しそうだったんで。はい、烏龍茶です。れいたはコーラね」
「おぅ、サンキュ」
「あと団子買ったんで食べましょうよ」


そう言って、俺と京さんの微妙な空いた距離感の。
真ん中にルキが腰を下ろす。


ルキがガサガサと袋から取り出したソレは、団子にしては結構なサイズの物だった。


「…やからデブるんやで、るき」
「最近痩せてますよ!」
「リバウンドまっしぐらやな」
「あー、ルキってツアー始まる前最高潮に太っててツアー中痩せてくしな」
「ちょ、れいたまで!ムカつく!団子と桜と京さんと俺撮って!」
「どんなムカつき方だよ…」


はいはい…って腰を上げて、ルキから渡されたデジカメで撮影。
京さん知らん顔で携帯灰皿に煙草入れてる途中のが撮れたけど。


やっぱルキ楽しそう。


それが一番だよな、うん。


ルキの事が気になるなら、普通に愛してやってよ。


ルキは何処にも行かねーよ。
長年友人やってて、友達取られた気がして悔しい時期もあったけど。

ルキは、京さんしか見えてねーから。


痛々しい姿は、もう見たくない。




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