お花見日和な1日@/京流+玲




晴れてんのに風強くて寒いって何だ。
そしてまとまった3日間のオフの中日。

前日、ルキから電話かかって来て、花見行きたいから連れてけ、と。
前にも言ってたし、別に車出すのは苦じゃねーからいいけど。


「京さーん、俺のあのアクセ知らないっすかー」
「知らん」
「あれー?ここにしまった筈なんですけど…」
「……」


時間通りに来た筈だけど、まだ準備出来てないー言われてルキと京さんちのリビングのソファで、珈琲飲みながらまたされてる俺。

俺の隣で、同じく珈琲を飲みながらソファに座ってテレビを観てる、京さん。

何回かは会った事あるし、一緒に飯食った事もあるけど。
ルキが雑誌見てギャーギャー言ってる、雑誌用の衣装みたいな服装で格好良いけどね。

大人の雰囲気っつーか。


ルキは探し物してんのか、部屋うろうろしてるし。


2人で待たされんの気まずいんだけど。
何話していいかわかんねー。

京さんは気にしてなさそうだけど。


ルキが淹れた珈琲をちょっとずつ飲みながら、興味がない昼のワイドショーを眺める。


いやでも、ルキは行きたいって言ってたからわかるんだけど。
よく京さんも行くっつったよな。

そう言うの行かなさそうなイメージあんのに。


「あ!」


ルキがリビングの方をうろうろして、こっちを向いたと思ったら声を上げた。


「京さんそれ俺が探してたヤツ!」
「あーそうなん。見つかってよかったなー」
「よかったー。じゃ、俺京さんのアクセ借りますね!」
「何でやねん。そんで待てその服僕のちゃうんか」
「あ、借りました」
「事後報告か。脱げ」
「嫌です」
「……」


舌打ちをした京さんに、超笑顔のルキ。

ルキがまたどっかに消えてアクセと上着を取って戻って来た。


「るき僕の上着取って来い」
「ライダース?」
「うん」
「赤?」
「黒」
「はーい」


ゴツめのアクセを付けて、ジャケットを着たルキはまた別の部屋に向かって。
黒いライダースを手にしたルキが京さんの傍に来て、立ち上がった京さんはソレに腕を通す。


その流れが自然過ぎて、何つーかもう。
どうして休日に俺はバカップル(って言葉は京さんには使えねーけど)に付き合ってアシになりに来たんだ。


「京さん、出れます?」
「お前が髪どうしようとかチンタラしとったんやろが」
「あはは。京さん今日も格好良いですね」
「お前は不細工やけどな」
「ひでー」


ルキが京さんと向かい合わせでライダースを整えて。
京さんは京さんで、ナチュラルに計算されたヘアセットをしたルキの髪を撫でる。

カラコンだけ入れたルキの目が嬉しそうに細められた。


……俺の目の前で。


ホントに、何で此処にいるんだ、俺は。


「あのー…」
「あ、そう言えばいたの、れいた」
「ルキが呼んだんだろ…。もう出掛けていい?車路駐してるし」
「うん」
「行きたい場所とかあんの」
「一応ネットで調べたんだけどー…あ、此処」
「んー?」


立ち上がって、3人で玄関に向かいながらルキがiPhoneで検索した場所を見せて来る。
ちょっと郊外。

まぁこの2人が電車に乗ってこんなトコに花見行く図とか想像出来ねーから、アシになるぐらいいいけどよ。


いつも一緒に馬鹿騒ぎするウチのバンド一我儘なルキは、京さんの前では猫被ってんのか。
ルキ以上に京さんが我儘なのか。


前を歩きながらルキの方が8割りぐらい喋ってんのを見て、そっと溜め息を吐く。
















「やっぱ車あるといいなー。俺も免許取りてー」
「るきには無理やろ」
「や、ちょっと頑張れば」
「るきには無理やろ」
「同じ事2回言わないで下さい」
「大事な事やからな。るきには無理」
「3回目!京さんの馬鹿!」
「は?」
「嘘です御免なさい。京さん大好き」
「きっしょ…」
「……」


車を走らせながら、嫌でも聞こえて来る後部座席に座ったルキと京さんの会話。

ナビの案内に従って車走らせる俺。

チラッとバックミラーで後部座席を見ると、不意に視線を上げた京さんと目が合ったからすぐに逸らす。


別に京さんが嫌いって訳じゃねーけど。

何となく、苦手なだけ。

ルキが幸せならそれでいいけど。


「れーいた、まだ?」
「まだ走ってそんな経ってねーよ」
「何か音楽ねーの?」
「あー…×××とか、○○○あるけど」
「○○○がえぇ」
「了解っす」
「やっぱ車って大音量で音楽聴けるし何処でも行けるし、いいっすねー」
「でも、るきには無理」
「それ4回目ですよ!」


京さんに言われたバンドのを、タッチパネルで操作して再生する。

ルキ達の会話に加わって、一気に騒がしくなった車内。


…ま、こう言うのもだまには楽しい、か。




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