誰の物/京流
夜中に仕事で帰って来たら、リビングの明かりが点いてて。
京さんまだ起きてんのかなーって思いながらリビングに入ると、テレビはついてなくて京さんの姿は見えないし。
風呂かなー。
ジャケットを脱いでサングラスを外す。
溜め息を吐いてソファに行くと、一瞬ビックリして息を詰める。
デカいサイズのソファに、京さんが仰向けに寝転がってヘッドフォンを付けて寝てた。
テーブルには紙とペンが乱雑に散らばってて。
歌詞でも書いてたのかな。
ソファの背凭れにジャケットを掛けて、ラグの上に座る。
テーブルの上の、京さん独特の文字が書かれた紙には俺には多分、理解出来ないであろう文字の羅列。
あんまり俺の前では作詞とかそんな作業しねーから、こう言うの見るのちょっと感動って言うか、感慨深いんだけど。
嫌がるだろうから、文字は読まないで紙とペンだけを整頓してテーブルに置く。
そして、ソファに寝てる京さんに向き直る。
疲れてんのか、静かに寝てる。
ヘッドフォンから漏れる音。
外したら起きるかな。
京さんの寝顔とか見ておきたいし、このままでもいいか。
そう思いながら、空いてるスペースに肘ついて京さんの寝顔を観察。
ヘッドフォンから結構な音量が漏れ聞こえる歌は、京さんの今好きなアーティストかな。
あー何か。
寝てる京さんは超幼くて可愛い。
癒される。
仕事の疲れも吹っ飛ぶ。
だって好きだし。
剥き出しの首元を彩る自虐的な文字の入った刺青を眺める。
綺麗なソレ。
俺も見えねートコに刺青掘りてーなー。
京さんの名前とか。
超嫌がられんだろうね。
「………」
最近、京さんはセックス中に俺の首筋に噛み付いたり痕残すのが好きみたいで。
最近撮影ねーし、何か『京さんの物』って感じがして、それはそれで嬉しいんだけど。
今まで虐めて来る以外はそう言う痕とかあんま付けない人だったから、どうしたのかなーとは思う。
何かあった?
京さん。
聞いても多分、はぐらかされるんだろうな。
滅多に頼って来ないし。
俺も、京さんに痕残しちゃダメ?
じっと京さんを見下ろして、京さんの首元に手を伸ばす。
指先が皮膚に触れると、京さんの体温。
あー、好きだなって。
俺もここにキスマーク付けてーなー。
取り敢えず、そんな気持ちで京さんを見てたらキスしたいなって思って。
身体を伸ばして、京さんの顔に覆い被さる。
「……っ!?」
京さんの唇に吸い付いて、触れるだけのキスをして離れようとすると。
いきなり後頭部を掴まれて離れられない状態になる。
そのまま引き寄せられて、唇に噛み付かれた。
一応、京さんの上だし、倒れ込まない様に咄嗟に腕で背凭れで突っぱねて体勢を維持する。
京さんの乱暴なキスが、心地良い。
「……っは、京さ…」
「何すんねんお前、人が寝とる時に」
唇を離されて、京さんがヘッドフォンを外しながら俺をじっと見る。
さっきより音漏れが酷くなった音楽を聞きながら、間近にある京さんの顔を見下ろす。
「…寝込みを…襲う…?」
「死ね」
「ぁ痛」
ペシッと京さんに頭を叩かれて笑うと、京さんは呆れた顔をして溜め息を吐いた。
「だって京さんの寝顔見てたらキスしたくなりますよ」
「意味わからん事言うなや」
京さんが俺の身体を押して、ソファの上に身体を起こして。
伸びをして首を回した。
「じゃ、キスマーク付けていいですか」
「何でやねん、絶対無理」
「…俺には付けるのにー」
「あ゛?」
「……いえ」
身体を起こした京さんに、ラグに座った俺を見下ろされて。
睨まれたら怖い。
でもその顔が格好良いって思う、末期な俺。
京さんの手が、俺の顎を掴んで。
グッと上向かされる。
京さんに晒される首元。
最近、消える事がない多数の痕。
それを見て、目を細める京さん。
「きっしょ…」
「ちょ、やったの京さんですよ」
「あーはいはい」
「もっとやって下さい」
「ホンマきしょいお前」
「だって『京さんの物』って感じがして超興奮する」
「あーそうやねー」
俺の顎から手を離して、適当にあしらう京さん。
寝てる時より悪態が酷くて可愛い事なんてねーけど。
そう言う所も好き。
もっと主張して、京さんの事。
俺が誰も見ない様に。
終
20120325
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