目の前の憂鬱/京流+玲
スタジオに入ろうとした時、マネに送って貰ったルキが車から降りて来るのを目撃。
少し待って、サングラスを掛けて携帯をイジってたルキが顔を上げて、俺の姿を確認したみたいだった。
「おはよ、れいた」
「おー。はよ、ルキ」
「今日寒くね?」
「もう春だっつーのになー」
「いつ冬物クリーニング出すか迷うんだよなー」
ルキと他愛無い話をしながら、スタジオに入って。
他のメンバーに挨拶をしつつパイプ椅子に鞄を置く。
ルキはサングラスを外して、ストールを取る。
何気なくその行動を見て、ストールの外されたルキの首元に思わず二度見。
「え、お前ソレ酷くなってね?」
「え?何?」
「首」
「あっ、あー…」
ルキが俺の言葉を理解して、下に視線を向けてまたストールを首に巻いた。
「はー…お前…幕張の次の日もすげー痕作って来て、薄くなる気配ねーんだけど」
「んー。何か最近、よく痕付けられんだよ。京さんの中で流行ってんじゃねーの」
「流行りって何それ」
「いや、わかんねーけど。たまにあったけど、こんな頻繁に見えるトコに付ける人じゃなかったからさ」
「すげーな。あー…手形はちょっと薄くなってる」
ルキの首のストールを指で引っ掛け、少し外すと情事の痕跡、と言うよりもまたDVでも受けてんじゃねーのってぐらいの痣みたいな痕。
幕張の次の日、仕事場に来たルキに『首輪みたいじゃね?』って首絞められた痕、噛み痕とかキスマーク見せられたけどよ。
嬉しそうに言うルキは、ホント京さんに調教されてんなーって思う。
首絞めた痕は薄くなってるけど、他の痣はまた色濃くなってる気がする。
鬱血が残る程の噛み痕って何。
「お前何かしたの?京さんに」
「えー…別に何もしてねーと思うけど…。プレイ?」
「…お前らのプレイは激し過ぎんだろ」
「あはは。何言ってんの。れいちゃんもSでしょ。首絞められんの、気持ちぃーよ。やってみたら?」
「女にやんの?」
「うん、セフレだったら逃げられても平気だろ」
「逃げんのかよ」
「だって首だよ?掴まれた瞬間、その人の事信用してなきゃ無理だって。気絶するし」
「あー…」
「京さんになら殺されてもいいからね」
「そこまで信用されっと逆に怖ぇーからいいわ」
「そー?」
笑って話するルキは、心底京さんに惚れてんだなーって思う。
数年前の京さんを追い掛けまくってたルキを見れば一目瞭然だけど。
「あ、れいちゃんれいちゃん」
「何すか」
「京さんと花見行きたいから車出して」
「……」
えー。
「…2人で行けば?」
「俺も京さんも免許ねーし、有名所行きたいんだよ。なぁ」
「うーん、京さんそれでいいのかよ」
「…大丈夫!」
ホントかよ。
別に車出すぐらいはいいんだけどさー。
ルキと京さんだろ。
3人とか気まずくね?
「何、嫌なの?」
「嫌じゃねーけど、俺は京さんと親しくもねーし」
「何回かは会ってんじゃん。飯食ったじゃん」
「打ち解けた訳じゃねーよ…」
「え、京さん嫌い?」
「嫌いとかそんなんじゃねーって。ルキは一緒に住んでるからいいけど、俺からしたら先輩で緊張するっての」
「そっかー…」
「うん」
「じゃ、オフの日宜しく」
「おい」
ルキさん人の話聞いてねー。
まぁいいよ。
ルキが我儘なのは今に始まった事じゃねーし。
バイオレンスなカップルのパシリでも何でもしますよ。
その後みんなが集まってスタ練始まるまで、京さんの話ばっかするルキの話を聞きながら、時折見えるルキの首周辺の痣にちょっと溜め息。
もう慣れたけど。
目の前でイチャつかれる俺の身にもなって下さい。
終
20120321
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