レンタル屋さんで/敏京
「京君、借りるの決まった?」
「うーん」
「迷ってんの?」
「うん」
「…ホラーとかサイコだね」
「おもろそうやん。B級の匂いがするけど」
「両方借りたら?」
「んー…でもこっちでえぇわ。両方外れやったらムカつくし」
「そ?」
「敏弥何借りるん?」
「俺はこれ」
「あー…新作?映画有名になったヤツやんな」
「うん、観たかったんだけど映画館とか行く時あんま無いし」
京君と仕事帰り。
レンタル屋さんに寄ってDVDを選ぶ。
お互い好きなジャンルの所に行って選んで、俺は観たかったDVD見つけて京君の元へ。
迷ってる京君の手に持ってるのは、パッケージ見る限り京君の好きそうなダーク系。
今日はホラーにしたっぽい。
京君が選んだパッケージの中から抜いたDVDを持って、周りを見渡す。
「他に借りたいの無い?」
「うん」
「あ、ねぇ、ここ見てみようよ」
「は?」
「ここ」
「アダルトコーナーやけど」
「うん」
「何か借りるん?」
「やーちょっとね」
「別にえぇけど」
店内の一角、隔離された様な造りのアダルトコーナー。
18禁と書かれてる暖簾をくぐって、京君と一緒に入る。
俺らだけしかいないソコは、全面アダルトDVDで埋め尽くされてた。
もう最近観て無いからなー。
今の流行りってどんなんだろ。
そんな事を思いながらエグい感じの煽り文とパッケージが陳列された棚を目で追う。
京君も適当にパッケージを手に取りながら見たりして。
「あ、京君京君」
「なん、観たいんでもあったんか」
「これこれ。前言ってたスカルファック」
「…何これ、エグッ。CGちゃうの?」
「どうだろ。頭入るんだねこんな所に」
「お前…こんなん僕にやろうとしとったんか」
「実際にはやってないじゃん」
俺らしか客がいないのをいい事に、マニアックな棚から見つけたのは、俺が前にやってみたいって言ってたスカルファックのAVパッケージを見て話する。
凄いよね、頭入るまで広がるなんて。
大の大人の男の頭が。
「じゃ、借りてみよっか」
「え、観るん?」
「嫌?気になるじゃんどんなのか」
「別にえぇけど、入っとるトコ全部モザイクなんちゃう」
「そっかー。まぁ参考までに」
「…やらへんからな」
「京君には頭突っ込まないって」
「当たり前や変態」
京君は不審そうな目で俺を見て、軽く腕を叩いた。
まぁ京君にスカルファックやってみたい願望も無きにしもあらず、だけど。
実際このパッケージとか見たらエグそうだし無理だろうな。
そう思いながらDVDを抜いた。
「で、何そんなマニアックなん借りるつもりでここ入ったんか」
「いや?ここってゲイ物も置いてあるって聞いたから借りたくてー……あ、あったあった」
「おい待て」
すげー隅の方に追いやられてるけど、一応ゲイ物のDVDもレンタルしてるみたい。
見つけた品数少ないソレを、手に取る。
そしたら京君が止めに入った。
「お前、マニアックなんは許せるけどそれはやめろや」
「え、何で?」
「野郎2人で来とんのにそんなん借りたらいかにもやろ!」
「大丈夫だよ。何枚かは借りられてるし、そんな趣味なんだなぐらいにしか思われないって。何か勉強になるかもじゃん」
「何の勉強やねん」
「体位とかテクとか」
「アホか」
「いーじゃん俺が借りて来るから。京君は外で待っててよ、ね?」
「ちょ、」
京君が難色を示してるのを無視して、ゲイのDVDも借りる。
DVD観ながら負けずにヤッちゃおうよ。
「うわぁあ…入ってるー」
「えっぐ!」
「えぇえぇーマジ?マジで?」
「これ入れる方も大概キツいやろ」
「無理無理無理無理!」
「お前が借りたんやから観ろや!」
「やーだー」
「うわ、下半身エイリアンみたい」
「もうセックスじゃねー」
…スカルファックでヤる気は失せましたけどね。
終
20120305
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