見つめる指先/京流
パソコンいじってて、目処がついたから作業を終える。
掛けてた眼鏡を外して目頭を押さえる。
今何時だろ。
首を回しながら携帯を見て時間を確認。
まだ寝なくてもいっかなー。
明日仕事だけど、夜型が身についてるからまだまだ眠くねーし。
今日は京さんも炬燵に入ってDVD観てたから、まだ寝ないのかなー。
斜め向かいに座ってる京さんをチラ見して、また眼鏡掛け直してマウスをいじる。
冷めた珈琲に口を付けて、何度も見た映像を呼び出す。
リアルタイムでは見えなかったけどタイムシフトで見えたし。
少しだけ音声落として、じっとその映像を見つめる。
はー…京さん映ってねーけど、他のメンバーさんも格好良いなー。
肘を付いて、じーっと映像に見入ってたら。
京さんがDVD観終わったのか、リモコンを操作して溜め息を吐いた。
「るき、珈琲新しいの淹れて」
「あ、はい」
京さんにマグカップを差されて、一時停止して顔を上げる。
自分の分も淹れ直そうと、ペアになってるマグカップを2つ持って立ち上がった。
「京さん、珈琲ー…」
「…お前…何見とんこれ」
「あ、」
珈琲を2人分淹れてリビングに戻って来ると、京さんは俺のパソコンを自分に引き寄せて画面を見てた。
12月16日に、海外から京さん達が出たネット生放送。
いや、正確には京さんあんま出て無かったんだけどさ。
京さんの出方が好きで何回も見てるヤツなんだよね。
「だって、この時の京さんめちゃくちゃ好きなんですよ!」
「何がやねん。僕めんどくてほとんど出てへんし」
「だけど好きなんです、それが」
マグカップをテーブルに置いて京さんがいる炬燵の面に自分も入ってパソコンを正面まで引き寄せる。
一時停止してたのを、また再生させた。
京さんは隣でつまらなさそうに映像を見ながら珈琲に口を付ける。
「あ、これ、京さんの手!」
「っさいな。手ぇぐらいでガタガタ言うな」
「だってこれ!あー…ホント、京さんの指って綺麗。何でこんなに綺麗なんですか」
「知らん」
「刺青入ってる指見ると、あー京さんだーって思うんですよね」
「……」
「すげー好き。京さんの指」
「指だけかい」
「指以外も、全部好き」
「はいはい、るきは太短いもんな、指」
「えー?」
まぁそんな身長に似てデカくねーけどね、俺の手って。
自分の手を見て、京さんの手を見る。
刺青だらけの京さんの手を取って見ても、映像のまま、綺麗な指だった。
ホント京さんの指先まで全部好きなんだって。
「京さんの手って俺よりデカい?」
「さぁ」
「……。あ、ちょっと京さんの方がデカい。身長は俺の方が高いのに」
「やからちんちくりんなんやろ、手が」
京さんの手を取って、俺の左手と京さんの右手を合わせてみる。
京さんの方が少しだけデカかった。
確かに俺より全然指も細長く見えるんだけどさー。
ちょっとショック、かも。
京さんは合わせた俺の手を掴んで、手の甲を見下ろして親指で撫でた。
「…お前、爪派手やな」
「格好良くないですか?メタリックシルバー」
「……」
「黒とかゴールドとかもしてたけど、こんなのありますよーってススメられて」
「…何かこんなんしとるん見ると、るきってヴィジュアル系やっとんやなって思うわ」
「あはは、10周年ライブの時には変えるかもですけど。また観に来て下さいね、幕張」
「……まぁ、気ぃ向いたら」
「やった」
映像は、いつの間にかもう終わってて。
京さんは俺の指っつーか、爪?にちょっと興味を持ったのか角度を変えながらマジマジと見てた。
メタリックだから光沢あって綺麗でしょ。
意外とお気に入り。
やーでも。
映像の京さんのファックした指、めちゃくちゃ綺麗だけど。
生で見た方がやっぱいいな。
触れるし。
「お前ガキみたいな手やな」
「可愛いですか?」
「いや、全然」
「えー」
「何、可愛い言われて嬉しいんか」
「京さんになら」
「は、キモいわ不細工」
わざと反対の言葉を俺に投げ付ける、京さんも大好き。
だから指以外も、全部好きなんだって。
終
20120302
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