何気ない会話/京流
風呂も入って寝る前の時間帯。
ソファに座ってDVD観てる京さんはまだ寝ないっぽいし、眼鏡かけて自分のパソコンに向かう。
肘を付いて、かちかちマウスをイジりながら本格的じゃないデザインを描いて、消して、を繰り返す。
別に締め切りがある訳じゃねーけど、次はこんなの出してーなーとか思いながら何となく頭の中にあるデザインを形にしていく。
でも本気で考えてないから、すぐに消す。
気に入ったら残すけどね。
気に入らねーもん。
さっき淹れた珈琲が入ったマグカップに口を付ければ、もうそれは冷めてて。
そろそろ寝た方がいいかなーって思って、作業してる手を止めて両腕を上げて伸びをする。
溜め息を吐いて腕を下ろした瞬間、髪に触られた感触。
まぁ誰かなんて、京さんしかいねーけど。
床に座ってパソコンいじってた俺の後ろのソファに座ってる京さんに振り返る。
京さんが観てたDVDは、もう終わったっぽい。
「どうかしました?」
「…お前、髪伸びたな」
「え、あー…そうですね、伸ばしてるんで」
「ふーん」
「飽きたら切りますけど」
「何か後ろから見たら女みたい」
「マジっすか」
「お前肩幅ないしな」
「…一応気にしてるんですけど」
「ぷにぷにやし」
「それも気にしてるんですけど!」
「ははッ、痩せてみぃや、お前」
パーマにしたりストレートにしたり。
最近はカラーはそんな激しく変えてねーけど。
苛めまくった髪は、一応は切れ毛になる事もなく順調に伸びてって。
肩より下になるのって珍しいかも、俺。
風呂入ったから、セット全くされてないストレートなままだけどね。
京さんは気になるのか、俺の髪の毛を引っ張ったり撫でたりしてて。
じっと見つめられて、そんな事する京さんにちょっと戸惑いと嬉しさが交差する。
だって何か、そんな事をされる方って照れんじゃん。
「…ッ、京さん擽った、」
「ふーん」
俺の髪を触ってた手で、首筋を撫でられて。
思ったより冷たい手にぞわぞわっと鳥肌が立つ。
ダメだって。
俺の顔をじっと見る京さんに、ドキドキする。
何も言わないけど優しく皮膚をなぞる仕草にちょっと不安。
「京さ、」
「ん?」
「短いのが好きですか?」
「んー。どっちでも」
「…女みたいな方がいい?」
「何それ」
鼻で笑った京さんの方に、身体を完全に向けて。
ソファに肘付いて足元にくっつくと京さんはまた俺の髪をイジる。
だって、さー。
やっぱ京さんに『好き』って思われる容姿がいいじゃん。
女っぽくしたから、手付きとか仕草が優しいのかなって。
邪推してしまう。
またアホな事言うて、って呆れた様な京さんの顔を見上げる。
「ってか、お前はどんな髪型にしてもチャラいよな」
「…黒髪にして七三分けにしましょうか」
「やめぇや、ダサい」
「ですよねー」
それは俺もヤだ。
撮影のコンセプトとしてならいいかもだけど。
そんな事を考えながら、ほとんど左目を覆ってる前髪を指でイジる。
マジで伸びたな。
次はどんな髪型にしよ。
「ッ、い゛…!」
「はは、るき変な顔ー」
「も、京さん何するんですか…っ」
「ん?無駄に柔らかくてぷにぷになるきの肉を摘まんだだけ」
「痛い…」
不意に、京さんに頬を摘ままれて。
結構な力だったから意外に痛い。
すぐに離されたそこを撫でる。
ちょっとズキズキする…。
楽しそうに笑う京さん。
ホント気紛れなんだよな、この人。
「まぁ別に髪型ぐらいどうでもえぇしな。それ以上にるきヤバいトコいっぱいあるし」
「えっ、ちょ、それ何処ですか何ですかそれ!」
「知らーん。さ、寝よかなー」
「待って京さん、俺も寝る!」
そんな気紛れに一喜一憂させられる程、ハマッちゃってんだけどね。
俺が、京さんに。
大好きだから。
終
20120227
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