好きな表情/敏京




「京君、こっち向いてー」
「…何やの」
「笑って笑ってー。はい、チーズ!」
「……」
「あ、可愛いー。ね、可愛く撮れたよ京君!」
「はいはい、よかったな」


新しく買ったデジカメ。

撮られる立場ではあるけど、そんな頻繁に写真撮る機会とかねーから、あんま使う時なかったんだけど。
せっかくだからって思って俺んちで晩ご飯を食べてる京君を撮ってみた。

京君はチラッとこっちを見て食べるの続行。

それが写真に写って。
笑ってなくても可愛い、京君。


京君の隣に近寄って、写真データを見せると、興味無さそうな顔をして弁当ん食べてるまま。


いや、俺も食ってる途中なんだけどね。
思い付いちゃったから。


そのまま何枚か、京君の食べてる姿や手元を写す。
お箸の持ち方独特で可愛いんだよ。

って言うか、京君がやる事全てが可愛い。


「…お前、撮っとらんと飯食ったら」
「えー。もうちょっと。一緒に食べたら食べてる姿の京君撮れない」
「いや、意味わからんし。撮るな」
「やーだー。いいでしょ、撮られ慣れてるんだから」
「それとこれとは別」
「あ、食べ終わった?じゃ、一緒に撮ろ」
「……」


京君がご飯を食べ終わって箸を置いた時。
京君の肩を抱いて2人が入る様にデジカメのレンズを自分に向ける。

室内だからフラッシュが光って。
データを見てみたら不機嫌そうな顔と、楽しそうな顔の俺が写ってた。


「京君笑ってよー」
「何で。お前、前も写真撮ったやんか」
「前は前!京君との愛のメモリーはいくつあっても足りません」
「死んで下さい」
「はい、ちゅー」
「……」


嫌そうな顔をしてこっちを見た京君の唇にキスをしながらまた写真を撮る。

触れるだけのキス。
唇を離すと呆れ顔の京君が溜め息を吐いた。


撮った写真を見ると、目を開けたままの京君とキスしてる俺。


「京君てキスする時、目開けてる派だっけ?」
「いや、こいつアホやなぁって思いながら敏弥見とるだけ」
「ひでー!でも可愛いんだよ京君の馬鹿!」
「誰が馬鹿やねんアホ」
「いいじゃん。ほら、これって京君超可愛い」
「…別に飯食っとるだけやし」
「京君の指って綺麗だよねー。箸の持ち方変だけど」
「っさい」


何枚か撮ったデータを京君と見直して。
京君は興味無さげに言いながら寄り添って撮った写真をじっと見てた。


「このデジカメのメモリーがいっぱいになるまで写真撮ろうね!思い出いっぱい」
「えー」
「何ならハメ撮りでもいいよ」
「敏弥の?」
「何で俺のなんだよ。京君の!」
「敏弥のやったら撮ったるよ」
「自分の見たって抜けねーし」
「うわー、キモい」


笑って京君は俺にデジカメを貸してって手を差し出して来て。
京君に渡すと、レンズをこっちに向けて来た。


「敏弥、笑え」
「んー?」


笑えって言われたから、口元で笑ったらシャッターが切られた。
でも京君は納得しない顔をして、また京君はカメラを構える。


「敏弥」
「うん?」
「好き」
「えっ、」
「大好き」
「え、何なに京君、超嬉しいんだけど!」
「愛してる」
「ッ、俺も大好き愛してる!」


そう応えた瞬間、切られたシャッター音。
そのデータを見た京君は満足そうな顔をして俺にデジカメを返した。

受け取ったデジカメで、データを確認する。
もう写真をチェックすんのは、癖みたいな物。

写り方とか、気になるじゃん。


「ん。じゃ、風呂入って来るわ」
「え!?今からラブラブタイムじゃねーの?」
「何でやねん。敏弥飯食ってへんのやから早よ食ったら」
「やーだー!さっき言ってた言葉もっかい言って!」
「は、何か言うたっけ?聞き間違いちゃうー」
「京君の馬鹿!大好き!」
「意味わからんし」
「逃がさねぇ!」
「ちょぉッ、もー…何なんやお前!」


デジカメを置いて、京君の身体をぎゅーっと抱き締める。


ホント、やる事可愛いよね京君。


今京君を見てる俺は、京君の好きな表情になってる?




20120226



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