花粉症の季節/京流




あーもうウザい。
まだ寒くて春の気配全く無い癖に、僕の身体は敏感に花粉に反応して。

呼吸しにくいし鼻水出るし、イライラする。
マスクしとっても意味無いんちゃうかこれ。

あり得ん。
全国の杉全部伐採したらえぇんや。


サングラスにマスク姿で、心ん中で悪態を吐きながらタクシーを降りて、るきと待ち合わせした指定場所へと歩く。


仕事早めに終わったから、るきに飯食いに行くか言うたら二つ返事でOKが出て。
一時期暖かくなったと思ったのに、また寒くなった夜空の下を歩く。


るきとよく行く場所は、どっちかって言うとサラリーマンが行き交う街中。


鼻を啜りながら、先に着いたらしいるきのメールを受信して。
るきがおる場所へと視線を向けると、全身黒に身を包んだサングラス姿のるきが立っとった。


携帯をイジりつつ、時おり顔を上げて周りを見回して。
僕の姿を見つけて僕の方へ歩いて来る。


「お疲れ様です、京さん」
「ん゛ー」
「あれ、風邪引きました?声が…」
「花粉や花粉。もう花粉飛びやがっとんやけど腹立つ」
「マジっすか」
「もう怠い。しんどい」
「京さん毎年花粉症酷いですもんね」
「お前ならんの」
「俺は平気です」
「ムカつくわー…で、何処行く」
「あー京さん何食べたいですか?一応、何件かピックアップしてますけど」


そう言いながらるきはiPhoneをイジりながら、歩き出した僕の横に並んで歩く。


あ゛ー糞。
息するんもしんどいし、早よ店内に入りたい。


「肉食いたいから、肉」
「じゃ、焼き肉行きますか。こっちです」
「ん」
「京さん病院行きました?花粉の」
「まだ。行く暇無い」
「また花粉用のマスクとか買った方がいいですね」
「あんま役に立たんでアレ」


今もマスクしとるけど、鼻に影響酷いし。

るきが選んだ店はすぐ着いて、半個室みたいな所に通された。
アウターを脱いで、サングラスとマスクを外してるきと向かい合わせに座る。


るきも仕事終わりでセットされとらん髪の毛は、結構伸びとって。
見た目のイメージだけで言うと、結構軽薄そうな感じのるき。

中身はウザいだけやけど。


「京さん何飲みます?」
「グラスビール」
「わかりました。俺はー…烏龍茶にします」
「生レバと後は適当に頼んで」
「はーい」


店員を呼んで色々と注文するるきを見ながら、煙草を取り出して咥える。
火を点けて吸うけど、鼻が詰まっとる所為かあんま味わからん。

腹立つな。


苛ついてすぐに煙草を灰皿に揉み消す。


「あ゛ーホンマ花粉の原因のヤツ全部伐採したらえぇねん」
「木が無くなっちゃいますよ」
「花粉あるんがムカつく」
「どうしてもならレーザー治療してみたらどうですか?」
「何それ」
「鼻の穴の中をレーザーで焼くんです。症状は出なくなるらしいんですけど、めちゃくちゃ痛いらしくて」
「ふーん」
「で、焼いた後は焼き肉の匂いがするそうです」
「自分の肉が焼ける匂いか」
「ですね。まぁ花粉には効果があるみたいですが」


レーザー治療とか。
最近は仰々しいになって来とんやな、花粉症。

病院には薬貰いに行くつもりやけど、自分の肉焼くってのがなぁ…。


そんな話をしながら、注文した飲み物が来てるきと乾杯。


仕事終わり、一杯目だけは美味く感じる。


「はー…花粉症無くなればえぇのに」
「体質ですもんね」
「寧ろるきに移ればえぇねん。同じ苦しみを味わえ」
「そりゃ俺に移して京さんが治るなら全然いいですけど」
「うわ、キモ」
「何でですか、京さんから言ったのに」
「自ら苦しいんを受けるとか、お前マゾか」
「おかげ様で」
「嫌やわぁ」
「京さんがそうさせたんじゃん」
「僕の所為にするな」


はー…ホンマにるきになすり付けたい。
何で僕がこんな苦しまなアカンの。

こんなん、ドMなるきが苦しんどけばえぇねん。


「レーザー治療したら暫くセルフで焼き肉の匂いがしそうで、お腹空きそうですね」
「自分の肉はさすがに食われへんやろ」
「あはは、確かに」


焼き肉食いながら。
アホな会話に鼻以外に頭も痛くなるけど。

るきとやから、しゃーないか。




20120225



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