京さん@※/京流
俺の誕生日の時は、俺が行きたいっつった所に京さんは大人しくついて来てくれて奢ってくれたから。
京さんの誕生日は何が食べたいですかって聞いたら何でもいいって言われて。
じゃー俺がやりたい事やらせてもらおうかなって思って。
パソコンで調べまくって良さげなホテルのレストランでディナーを予約したんだよね。
俺の時とは違う所。
そして食べ終わった今、予約していた部屋のカードキー片手に扉を開く。
「……」
「入って下さい、京さん」
「お前…こんなトコ予約してどなんするん」
「京さんの誕生日なんで、奮発してみました。夜景綺麗らしいですよ、ここ」
「ふーん。つーか明日も仕事なんやけど」
「わかってます。だから明日着る服買って来てます。京さんの」
「…用意周到やな」
「京さんの誕生日ですから」
扉を開けたまま、京さんに入る様に促して。
京さんは呆れながらも中へと入る。
会計する前に頼んでおいた、京さんのバースデーケーキとシャンパンは置かれてるし。
2日同じ服装になるのも嫌だから全身京さんが好きそうな服をコーディネートして購入して先に部屋に置いてもらった。
東京タワーが見える、一面ガラス張りの部屋。
俺らの家も大概窓デカイけど、こっちの方が全然デカい。
広めの部屋に置かれた重厚な造りのソファに座ってジャケットを脱いだ京さんは煙草を咥えて火を点けた。
「つーかこんな部屋に野郎2人で泊まるとか、ホテルの人間は不審に思うやろな」
「そうでしょうけど、こう言う所の人って教育されてるから大丈夫なんじゃないですか。俺らの事も知らないだろうし」
「ふーん」
京さんの隣に座ると、煙を吐き出しながら京さんは部屋を視線で見回した。
一度、こう言う所で泊まってみたかったんだよね。
機会がなきゃ絶対来ないし。
「京さん、ケーキ食べます?風呂入ります?」
「風呂。腹一杯やしもう無理」
「美味しかったですよねー」
「…せやな」
「また来ましょうね」
「…部屋はいらんで」
「気に入りませんか、この部屋」
「お前、この僕がこう言うシチュエーションで喜んでみ。キショいわ」
「確かに…想像出来ねー」
「やろ」
「俺は好きですけどね、こう言うの」
「るきはキザやからなぁ」
「京さんだけ、ですよ」
そう言って、吸ってた煙草をテーブルの上に置いてあった灰皿で揉み消す京さん。
その京さんの方に向いて、京さんの唇に緩く吸い付く。
されるままの京さんは、俺のする事をじっと見つめたまま。
何度か啄むキスをしても京さんは微動だにしなくて、俺をじっと見てる。
その視線だけでも身体が熱くなる。
少しだけ、フォーマル衣装だった京さんの服に手を掛けると。
されるままだった京さんの手が俺の手首を掴む。
「…調子えぇ事言うて。お前ホテル連れ込んでヤるんが目的やろ」
「一応俺も男なんで」
「ケツ掘られるんが好きな癖に」
「…京さん以外とは好きじゃないですよ」
「当たり前やろ。誰にケツ差し出す気やねん淫乱」
「い゛…っ」
もう片手で後頭部の髪を引っ掴まれて、痛みに顔を歪める。
この乱暴な扱いと、物言いが大好き。
超興奮する。
「『待て』ぐらいしぃや、るーきちゃん」
そう言う京さんに、ゆっくりと唇を舐められて噛み付かれた。
意地悪く笑う口元が、めちゃくちゃ格好良い、京さん。
「…こう言うホテルは風呂もこんなんなんか」
「…これは俺が希望しました」
「お前…いや、もうえぇわ。そう言えば前に自宅の風呂でもやったもんな、お前」
「あは。すげー薔薇の匂い」
「噎せるわ」
ちゃんと湯が張られた広いバスタブの中には真っ赤な薔薇が散りばめられて。
だってこんなホテルのスイートって結構要望聞いてくれんだよ。
寛ぐ京さんに背中を預けて、くっつきながらゆっくり風呂に浸かる。
だって京さん誕生日だし、別にいいじゃん。
たまには非現実的な事しても。
お互い明日仕事だから、明日までの現実逃避。
京さんの誕生日だけど俺的に幸せっつーか、すげー楽しいんですけどね。
京さんと一緒だから。
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