告白決戦前/京流+玲




オフの日。
ルキに呼び出された訳ですよ。

今日京さんいねーから家に遊びに来い、と。


まぁ引っ越しの時とか、何回か行った事あるからいいけど。
京さんいたら緊張するし家の中まで邪魔すんのは遠慮してたりして。

や、だってルキとは昔っから家を行き来してたけど、ルキの家でもあり京さんの家でもあるマンションは。
同棲、と言う名目だしやっぱお邪魔し辛いモンがあるし。


「れいた、これ食べて」
「……」


最近ルキがハマッてるらしいチョコレート菓子。
昨日は仕事場に色々持って来て、どれが美味しいかって散々言われて食った気がするんですけどね、ルキさん。

もうお前が何やっても京さん絡みだって事はわかってるし、何言って来ても驚かないつもりだけど。

これは新手の苛めですかね。


「やっぱ普通のチョコの方がいいかなーって思ってさ、溶かして固めるだけにしようかと思ったけど調べたら生チョコ簡単だったし、あとアイシングクッキーでメッセージ書こうかと思って。なぁれいた昨日のと今日のだったらどれがいいと思う?」
「…これルキが作ったのか?」
「他に誰が作んの。早く食えって」
「えー昨日も俺ケーキみたいなの食ったじゃん」
「ガトーショコラな。今バレンタイン用にどの菓子がいいか試作してんだよ。食え」
「……」


目の前のテーブルに差し出された皿に盛られたチョコレート菓子。

いや、甘いモン食えるけど、そこまで俺は好きじゃねーし。

昨日は仕事場だったから他のメンバーもいたからよかったけど、今日は俺とルキだけ。


椅子に座った俺の目の前に、ルキも向かい合わせで座る。


皿の上にはシンプルなチョコと、やたら好きだのロックだのファックだの書いてる…ルキ曰くクッキー。

え、今日は俺しか食う奴いねーの?


仕方ねーから1個チョコを食べる。
チョコだし、普通に美味い。


「どう?」
「美味いけど」
「ま、これは簡単だったしなー。こっちのクッキーは?」
「…ちょっと粉っぽい?かも」
「マジかー…ならクッキーは無しかな。あ、もうすぐチョコシフォンも焼き上がるから」
「え、」
「京さんにあげんの、どれがいいと思う?」
「…今までのバレンタインはどうしてたんだよ。作った事なかったじゃん、ルキ」
「だからだよ。ちゃんと作った事ねーなって思って。王道を行ってみようかと」
「チョコ渡しながら告白とか?」
「そうそう。よく晩飯にチョコフォンデュとかチョコレートファウンテンとかやってバレンタイン過ごしたけど、今回はベタな感じで」
「……」


京さん、意外と大変なんだな。


「あ、京さんに内緒だから、れいたそれ全部食えよ」
「は!?無理だろこんなチョコばっか!」
「当日まで京さんに見られんのヤだから」
「じゃ明日メンバーに持って行けばいいんじゃね」
「あー」


そっかって言いながら目の前でルキが煙草を咥える。
チョコを何個か食ったけど、さすがに口ん中が甘くなって来たからルキが淹れたコーヒーを飲む。


その時、ルキの携帯が鳴る。


「あ、京さん」


そう呟いて、ルキは煙草を灰皿で揉み消して電話を始めた。

そのルキを見ながらコーヒーを飲む。


「お疲れ様です。どうし、」

「マジですか。わかりました。あ、今日れいた来てますけど」

「あ、はい。じゃ夜ご飯作りますね」

「早く帰って来て下さい楽しみに待ってます」

「ちょ、帰って来るって言ったじゃないですか!」

「はい、はい。わかりました」


楽しそうにルキが笑って。
電話を切って俺の方に向き直る。


「れいた」
「ん?」
「京さん早めに帰るから晩飯作れって」
「ふーん、じゃ、俺かえ、」
「京さんがお前いてもいいっつってたから、お前も食って帰れよ」
「…そりゃ、有り難いけど」
「つーか、京さん帰って来るまでにシフォンケーキ食って。全部」
「は!?無理だろ」
「無理じゃない。初めて俺が作ったシフォンケーキはふわふわに膨らんでる予定だから」


予定だろ。
そんな甘いモン好きじゃねーって、俺。


しかも京さんと飯とか。
絶対緊張するし。

やっぱ苛めかよ、ルキさん。


たまには俺にも京さんみたく甘くしてくれませんか。


我儘だから、仕方ねーなって俺の方が甘くなるんだけどさ。




20120211



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