君の素直じゃない所が好き/敏京




「あれ、敏弥は?」
「んー?敏弥そこのソファで寝とるやろ」
「あ、ホンマや」
「最近忙しいし、疲れとんちゃうー」
「……」


僕の単体撮りが終わって控え室へ戻る。
次の撮影は堕威君。

伸びをしてスタジオの方に出向いてった。


いつもは誰かしらと話しとったりして、僕の姿を見つけたら寄って来る敏弥がおらんと思ったら。
部屋の隅に置かれとる、幅が少し小さめのソファに身体を折り畳む様にして敏弥が寝とった。

そこに近寄る。


化粧して女形の衣装着とるし、太股出しとる足は長くて綺麗やし。
女みたい。

伸長アホみたく高いけど。


衣装着たまま寝とる敏弥。
髪もセットされとんのに、崩れるで。


なんて。
いつまも寝とる僕が言う事でもないやろけど。


やたら長い手足折り畳んで。
少しだけスペースのある敏弥の腹辺りに座って、敏弥の顔を覗き込む。


敏弥の寝顔なんて見飽きる程、見とるけど。
化粧を施した寝顔はあんま見ぃへんから、何や新鮮。


ちょっと周りを見回す。
堕威君以外のメンバーはおるけど、各々好きな事しとって誰もこっち見てへん。


ならよかった。


むっちゃ綺麗、敏弥の顔。

その寝顔をじっと見つめる。


「───…ん…、」
「……」


敏弥の前髪を撫で付ける様に指を滑らすと。
一瞬起きたかなって思ったけど、少し身じろいだだけで起きてへんかった。


最近は新曲作らなアカン事もあって、あんまりお互いの家を行き来する事が前よりかは減って。
まぁそれでも頻繁に一緒におるけど。

僕の知らんトコで頑張っとんやろなーって思う。


あんま敏弥の曲決まらんけど、気持ち悪いコード進行が好きな時もあるし。


「…めっちゃかわぇ、」


ぽそっと呟く。


恋人の欲目か。
敏弥は僕の事可愛い可愛い言うけど、寝とる敏弥の寝顔も、可愛いで。

本人には言わんけど。


「……ん…?きょーくん…?」
「起きたん?」
「んーん…ねむい…」
「オイ、コラ敏弥」


敏弥の頬をぷにぷにと弄っとったら、いい加減気付いたらしい敏弥が目を覚ます。

化粧しとるけど細い目。
いつもの喋り方より、もっとふにゃふにゃ言うとる感じ。

ガキみたい。


へらっと笑って僕の姿を確認した敏弥は、僕の腹に腕を回してぎゅっと抱き締められた。

拒否ったけど、意外に敏弥の腕の力は強くて。
身体を丸めた敏弥が僕の太股辺りに顔を埋める。


「敏弥、離せ。ここ家ちゃうから」
「やぁーだぁー」
「嫌ちゃうわアホ。ちょ、」
「ねむいぃ…きょうくんひざまくら」
「絶対嫌」
「けちー」


グリグリ擦り寄って来る敏弥の頭をベシッと叩く。

デカい図体して甘えてきよってからに。


「敏弥、起きて」
「ちゅーしてくれたら起きる」
「一生寝とれ」
「んふふー」


はー…。
何や機嫌がえぇな敏弥。

寝起きめっちゃ機嫌悪くなる癖に。


「ねー俺の撮影は?」
「まだやろ。今堕威君やし」
「そっかー」
「髪ぐしゃぐしゃんなるで。ヘアメイクさんに怒られろ」
「何それー。京君庇ってよ」


笑いながら、敏弥は僕の腹から腕を外して。
ソファから起き上がって伸び上がる。


「何で僕が、」
「え、だって可愛い敏弥君が怒られんの嫌でしょ?」
「…っ、…お前…起きとった?」
「知らなーい」
「ムカつく」


にこにこ笑う敏弥は、僕の頬に手を伸ばして撫でて。

白々しくそう言う敏弥に、腹立つ。

敏弥の手を払って、敏弥から顔を反らす。

そんなん、僕の性格上、スラスラ言える訳ないやん。


「素直じゃないなー。ま、そう言うトコが可愛いし大好きなんだけどね」
「意味わからんし」
「俺が寝てる時は素直なのにねぇ」
「…別に敏弥の事可愛いとか思ってへんから」
「俺何も言ってねーよ?」
「……」
「可愛いなぁ」




20120209



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