2月3日の事/京流



毎年毎年、京さんに呆れられながらもこの日は夜ご飯に恵方巻き。

それ以外にも一応おかずも作ったけどね。
和食かなーって思って肉じゃがとか。

はは、恵方巻きと絶対合わねー。


「京さん、お帰りなさい」
「ただいま」
「今日めちゃくちゃ寒かったですよね」
「ホンマやで…雪とか降るし何で今年こんな寒いんやありえんわ」
「一旦落ち着いて少し暖かくなるそうですよ」
「もう年中春でえぇし」
「あー…俺は寒いのも好きですけどね」


外の空気をまとった京さんを玄関で迎えて。
鞄と京さんが脱いだライダースを受け取る。


寒いのは嫌だけど、寒い時なバラードのインスピレーションが高まるから好きなんだよね。


「京さんご飯食べます?」
「食う」
「じゃ、すぐ準備しますね」
「んー」


京さんのライダースをハンガーに掛けてクローゼットの中にしまう。

そしてキッチンへ行って弱火で温めてた肉じゃがを皿に盛り付ける。


「京さん京さん、今日は節分ですよー」
「あーそー」
「だから例年の如く、夜ご飯は恵方巻きです」
「…またか…」


テーブルに座った京さんの前に、肉じゃがと恵方巻きを置く。
恵方巻きは1人1本。

京さんは呆れた顔して。
テーブルに肘付いて溜め息を吐いた。


「肉じゃがと巻き寿司…」
「合いませんよねー」
「合わんと思うなら何でこの組み合わせにするん」
「思い浮かばないんです、巻き寿司に合うおかずが」
「あっそ」
「京さん今年は北北西に向いて無言で食べるらしいですよ」
「うん、頑張れ」
「まぁ切っちゃったんで、丸かじり出来ませんけどねー」
「いただきます」
「いただきまーす」


さらっと流す京さんと向かい合って夜ご飯。


太巻きって太いから食べにくいよな。
前は頑張ってたけど、もう無理。

普通に食う方が美味しいし。


京さんに、今日スタジオであった出来事を話しながら食べ進めると、テーブルに置いた袋が目に付いた。


「あ、京さん後で豆撒きしましょうよ」
「は?」
「豆撒き。今年は落花生でしようかなって思って落花生買って来ました」
「落花生?」
「北海道や東北は落花生で豆撒きするそうですよ。床にバラ撒いてもデカいから掃除しやすいし、殻のまま投げるから中身食べれるし、大豆投げるよりいいらしいです」
「あー…攻撃力は上がりそうやなぁ」


大豆よりも豆撒きした時に掃除が楽かなって思って落花生買ってみたんだよね。
全然節分の豆撒きの感じしねーけど。


京さんはテーブルに置かれた落花生の袋にチラッと視線をやる。


「ってか、攻撃力って何ですか」
「は?節分は基本豆ぶつける日やん」
「…京さんに豆ぶつけられると凄く痛そうですね」
「普通やろ。るきがぶつけて欲しいって買って来たんやから今日は久々に頑張ってぶつけよかー」
「…いや、もう普通に食べませんか落花生」
「何でやねんお前が言うたんやろが」
「や、何か半端無く怖い気がして…」
「何やの根性ないなー」


盛大に溜め息を吐いた京さんが、またご飯を食べ始めた。


あ、でも京さんが豆投げる姿とかちょっと見てみたいかも。


毎年毎年、呆れながらも俺の飯を全部食ってくれる京さん。
そう言うトコ、大好き。


食べ終わって、テーブルの皿を片付けてると京はんは煙草を咥えて火を点ける。

俺も向かいに座って、一緒に煙草を吸い始める。


「京さん落花生食べます?」
「…要はピーナッツやろ」
「ですね。歳の数かぞえますか」
「僕そんなピーナッツ好きちゃうし」
「えー」
「やから投げさせろ。ぶつけさせろ」
「ちょ、どんだけ投げたいんですか」
「知らん」


京さんが落花生の入った袋に手を伸ばしたから、俺も取られない様にとその袋を掴む。


何で今年はそんな積極的なんですか。


京さんがそんな豆投げるの好きなんて知りませんでしたよ。


「待って!落花生剥くから!剥くから投げないで下さい」
「はぁ?投げやすいからって落花生買って来たんやろが!早よ逃げ惑え鬼!」
「俺は鬼じゃねぇえ!」


京さんとなら何しても楽しいから、いいんだけどね。




20120203



[ 236/442 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -