節分の鬼/敏京




「あ、今日節分なんや」
「そうなの?」


また京君が家で鍋したいって言うから、宅鍋セットがある薫君ちに2人でお邪魔。

その前に一緒にスーパー行って鍋の材料と酒とつまみ、京君はお菓子とか買ってた。


まぁちょっと俺らがスーパーとか似合わなさ過ぎて笑えんだけど、閉店間際だからあんま客いねーし、よかった。


京君はスーパーで平積みにされた節分用の豆を見つけて思い出したみたい。


「うん。なぁ薫君。豆買って」
「食べるんやったらえぇけど…」
「食べるんちゃう。豆撒きするん」
「…今日これから俺んち来て鍋したいとか言うてへんかった?」
「うん。その後に豆撒き」
「アカン」
「何で」
「マンションやし外に撒いても迷惑やろ」
「中で撒くし」
「もっとアカン。誰が掃除するん」
「薫君」
「絶対アカンから」
「ケチやなぁ」
「まぁまぁ、いいじゃん京君。あんまイベント事興味無いのに、節分だけは何でそんなにしたいの?」
「豆ぶつけるんが楽しいから」
「……」
「敏弥、京君の教育はちゃんとせなアカンで」
「薫君がお父さんなんだから、京君の躾は薫君の仕事だろ」
「お前らホンマ、ムカつく」
「御免て京君」


京君が不機嫌そうな顔になって、それを見た薫君はちゃっかり豆入りの袋買ってる。
全く、京君に甘いんだから。


「もう買うモンない?ほな家帰るで」
「はーい」


いやでもホント、薫君お父さんみたいなんだもん。
京君と俺は子供?
いやでも薫お父さんは京君だけ贔屓しそうだな。


「敏弥なにニヤニヤしとんキショい。ほって帰るで」
「あ、待ってよ京君!」


俺が考え事してたら、会計も終わった薫君と京君が外へ行こうとしてて。
慌てて追い掛ける。


3人で鍋すんのも久々だから、楽しみだなー。















それから。

3人で鍋囲んで飲んで食って話してた訳ですが。

ウチの可愛い恋人ちゃんは、やっぱりイベント事がしたいみたいです。


「薫君ー豆ー」
「なん、食べるん?」
「んー」
「あー俺腹いっぱいでもう食えねー」


薫君から受け取った豆の袋を京君は受け取って。
おもむろに立ち上がる。


「今回は僕が鬼やるから」
「は!?」
「やから2人共、ぶつけてもえぇで」
「は?京君に豆ぶつけるん?」
「うん、いつもは敏弥が鬼役やから、たまには僕がやったろかなって」
「え、マジで言ってんの京君」


いつもいつも、俺に豆ぶつけてんじゃん。
やり返したらキレて豆ぶつけ合い合戦なったじゃん去年とか。


薫君も驚いた顔で京君を見てて。


「えぇ言うとるやろ。でも僕が鬼やから、僕に捕まったヤツはー…せやな、頭突きの刑な」
「それ絶対節分の豆撒きじゃないよね!?」
「普通にやるだけやったらつまらんやろ。2人は豆投げながら逃げたらえぇやん」
「…京君、家狭いし無理あるやろ」
「そうなん?」
「うん。京君が転んだりしたら危ないやん?」
「……」


薫君ナイス!

そのまま京君宥めて!

この子、このイベントだけは何やらかすかわかんねーから!


「そっかー…」
「やから、普通に豆食べようや。な?それ貸して」
「……」


無言で京君は薫君に豆の入った袋を渡して。
もう薫君の京君見る目が完全に孫を見る様な優しい目だよ。

どんだけこの人、京君の事好きなんだよ。


京君も京君で、大人しく言う事聞くなん、て…。


そう思ったら、京君は薫君の頭を両手でガシッと掴んだ。


「え、」
「まずは1匹目ー」
「ッ!?」
「…うわー…」


ゴッて音したよ今。

超痛そうな音したよ。

薫君は額押さえて悶えてる。

そりゃ痛いよね、頭突きされたら。

痛みに悶える薫君を見下ろしとった京君が、俺の方に向く。


「残り1匹」
「え、俺も!?」
「オラ、豆投げてえぇんやで、そんで逃げろ」
「だから節分じゃねーだろ!」


近づく京君と距離を取る為に立ち上がる。

タッパに差があるから、捕まっても頭突きなんて出来ないだろうけどね。


鬼より迫力ある京君。
これが捕まったらキスしてくれるとか色気のあるヤツだったら、喜んで捕まるのに。


俺の恋人は、今年は鬼になりました。


鬼は外なんて、死んでも言わねー。




20120203



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