誕生日おめでとう/京流+玲
スタジオに着くと、俺より先にルキが来てた。
今日はコイツの誕生日。
何年も一緒に祝って来た日。
ま、京さんと一緒になってからは皆でご飯行ったりとかは無くなったけどな。
馬鹿騒ぎしてたあの頃が懐かしい。
「はよ、ルキ早いじゃん。誕生日おめでと」
「あ、れいたおはよ。昨日もメールサンキュ」
「おうよ」
ってか、今日はいつもより気合い入ってんな、服。
髪もちゃんとセットしてるし、眼鏡じゃなくてカラコンだし。
ルキが細部にまで拘んのはいつもの事だけど。
ソファに座るルキの隣に腰を下ろして、携帯を取り出す。
それにしても、事あるごとに何かしら痕付けてんのはどーよ。
ライブも撮影も今んトコはねーけど。
「…お前、またか」
「は?何が」
「首。すっげー歯形付いてんだけど」
「あーうん。今も触ったらちょっと痛ぇ」
「だろうな。内出血ヤバくね?」
「その内消えるだろ。消える前にまた付けてくれてもいいけどね」
「お前な…」
隠して無いルキの首、喉元には明らか噛み付かれた痕。
赤黒くなってるし。
まぁ、ルキがこう言う傷を隠さないって事は、合意の上と言うか。
暴力ではないんだろうけど。
それにしても、喉仏付近にある噛み痕は動物的本能にしたら捕食者がする事で。
急所を晒してそれを喜ぶルキは、どれだけ京さんにハマッてんだ。
洒落んなんねーDVされてた時期よりは全然平和だけど。
DVされてもノコノコ出向いたルキにしたら、このぐらいは許容範囲か。
手を伸ばしてルキの歯形の付いた皮膚を触る。
ルキはじっと俺を見て、不思議そうな顔をした。
「…何?」
「や、ルキの彼氏さんはバイオレンスだな、と」
「はは。そこが好き」
「たまにDV入るけど」
「んー。昔よりかは全然だから平気」
「そっか」
「それに受ける側がそう思ってねーから」
「お前って京さんの事になると頭おかしいよな」
「よく言われる」
笑うルキに、昔程ルキの身の心配はしなくなったけど。
ホント、不安になる。
コイツだったら笑って京さんに殺されそう。
マーキング程度なら許せるけど、いい加減、生傷無くルキを幸せにしてやって欲しいんですけどね、京さん。
鬱血したルキの皮膚から手を離す。
「でさ、今日の夜、仕事終わったら京さんと飯行くんだよ」
「あぁ、それでそんなキメてんの?」
「うん。好きなトコでいいって言われたけど、何処にしよ。誕生日だし京さんと過ごすし、夜景見ながらホテルとかで食いてーなー」
「…その格好で?」
よっぽとのトコじゃ無い限りドレスコードはねーだろうけど。
ルキと京さんがホテル最上階で夜景見ながらコース料理食ってんのとか想像出来ねぇ。
どんな会話すんの。
「ま、基本個室が落ち着くんだけどさ」
「それは確かに」
「だから意地でも仕事終わらせるから」
「はいはい」
そんな会話をしてると、戒が扉を開いた。
鞄の他に、少し大きめの袋を持って。
「おはよー。あ!きーちゃん誕生日おめでと」
「サンキュー、戒君」
「ケーキ作って来たから、休憩の時食べようね」
「マジ!?どんなの!?」
「休憩の時間にね。だから気合い入れて仕事しなよ。あ、持って帰る分もあるし、また京さんと食べて」
「サンキュー。去年のも美味しかったし楽しみ」
「よかったな」
「おぅ」
ルキが嬉しそうな顔して笑う。
そうすると、こっちも嬉しい。
取り巻く環境が変化してって、色んな出来事があっても。
何年経っても。
ルキが俺らの仲間で皆に可愛がられてるのには変わりは無い。
おめでとう、ルキ。
終
20120201
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