好きな顔/京流




風呂上がり。
部屋ん中は空調が整っとるから、半身浴して熱いし上半身裸のまま髪を拭きながらソファに座る。

携帯をイジっとると、ソファの下、ラグの上で炬燵に入ってパソコンを見とったるきが伸びをしてぱったりとソファ側に身体を倒して来た。

あ゛ー、とか変な声出しとる。


「京さん、風邪引きますよ」
「今暑い」
「風邪引いたら付きっきりで看病するから存分に風邪引いてくれてもいいですけど」
「うわ、絶対嫌」


僕が座っとるソファの位置に頭を預ける形で、眼鏡越しに僕の顔を見上げるるきを一瞥。

携帯を閉じてガシガシ髪を首に掛けたタオルで拭いた。


その様子を、るきはじーっと見とった。
めっちゃ視線感じるし。


「…京さん刺青見せて下さい」
「いつも見とるやん」
「いつも見てません。特にツアー中」
「そら当たり前やろ…」
「あ、でもライブ中は遠目からでも見てますけどね」
「……」


こいつは時々、頭おかしいんちゃうんかなって思う。
今に始まった事ちゃうけど。

まぁ別に、刺青自体は僕も気に入っとるモンやし、見るぐらいなら拒否る事はせぇへん。


好きにしー言うたら、グダグタにソファでだらけとったるきが目ぇ輝かせて起き上がった。

きっしょい。


「じゃ、京さん背中見せて下さい背中!」


つーか、そんな声弾まして嬉しそうにしとんがムカつく。
ソファに乗り上げて、僕が行動に移す前に僕の背後に回り込んだ。


刺青完成したばっかん時は、飽きひんのかってぐらい眺めとったなコイツ。


リモコンを取って、テレビをつける。
るきの視線を背中に感じた。


「やっぱ綺麗…っつーか、格好良い。何も無かった背中も好きだったんですけど。千手観音、京さんによく似合ってます」
「あそー」


るきの感嘆する声が聞こえて、背中に指を這わす感覚。

雑誌に載せたりしとるし、アホみたくタトゥー本買って見とる癖に。
確かにいい出来映えやけど。


「…おい、何しとん」
「千手観音さんとディープキスです」


ホンマこいつ頭悪すぎなんちゃうん。

背中に、ぬるっとした感触。
るきの発想はホンマ気持ち悪い。


千手観音相手にキスしたり舐めたりようやるわ。
情事中ならまだしも。


「何勝手な事しとん」
「い゛…ッ」


振り返って、るきの後頭部の髪を掴んで後ろに引く。
るきが痛みに眉を潜めた。


「僕以外と浮気するってえぇ度胸やん」
「え、だって京さんの背な…っ」


るきが何か言うとるその唇。
顎を強く掴むと言葉が途切れた。


眼鏡越しのるきの瞳が揺れる。


るきの唇を親指でなぞって、口ん中へ入れたらるきの舌が僕の指を舐めた。


るきが目を細めて、笑えるように僕の手首を持って何も言うてへんのに舌を出して僕の指をゆっくり甘える仕草で舐め出した。


唇と舌、柔らかいし、こいつの中でお気に入りのパーツ。


「浮気したお仕置きな」


なんて。
少し理由付けてやる。


僕がコイツを虐める理由に。


舐めさしとった指を、るきの口ん中に一気に2本突っ込んだ。

指の腹で、口ん中の上を撫でるとるきがビクッと身体を跳ねさせた。

るきの身体をソファの背凭れに押し付けて。
口内に更に指を突っ込むとるきが涙目になりながら僕の腕を掴んで首を振った。


苦しそう。

触れる喉の奥が痙攣する。


「…ッ、ぁ゛…っ」
「吐きそう?吐いてえぇよ。怒るけど」
「…、…っ…!」


るきが僕の指を噛まんようにしとって、必死に耐えとる。

その表情が、僕の劣情を刺激した。


普段どんなアホな事言うたり、ムカつくぐらい楽しそうな表情しとるよりも。
るきのこんな顔が、僕は好き。


生暖かい口内から、唾液が溢れてるきの瞳から涙が一筋流れた。


それを見て、るきの口から指を引き抜く。

るきは苦しそうに咳き込んで、必死に呼吸しながら涙を拭った。


るきの唾液でドロドロに濡れた指でるきの顎を掴んで上向かせる。

苦しそうに短く息をするるき。


「な、に…するんですか…、も…っ」
「別に」
「なに、それ…」
「可愛い顔やったで?るーきちゃん」
「…悪趣味」


嬉しそうな顔になった、お前もな。

もっと虐めたろ。




20120125



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