雪の日の朝/京流




朝、と言うか昼に近い時間。

京さんより先に起きて、朝ご飯兼、昼ご飯を作る。

今日は俺も京さんも夕方から仕事。
早ければ夜中帰れるだろうけど、多分延びんだろうなー時間。

俺はアルバム製作の打ち合わせがあるし、京さんはツアーリハあるしで今の時期忙しいしね。


いつ家に帰れるかとか、よくわかんねーから冷蔵庫の中には気を付けねーと。
また京さんに怒られる。

無駄な買い物すんなって。


京さんツアーで地方行っちゃって、外食ばっかになっちゃうから一応和食のメニュー。
最初は簡単なのしか作れなかったけど、京さんに食べて貰うしハマれば盛り付けとか考えんの楽しいしね、料理って。

まさか自分が此処まで作るようになるとは思わなかったけど。

何も言わず全部食ってくれるから、作り甲斐あるし。


ほとんど支度を終えて、リビングに行ってソファに座って煙草に火を点ける。
背もたれに半身を凭れさせて片足をソファの上に上げて煙を吐いた。

何となく、窓の方を眺める。


「…うわ」


最悪。
雪降ってんじゃん。

何、何で東京で雪降んの。


窓から見える景色は、吹雪のように雪が降ってて。
思わず顔をしかめる。


滅多に降らねー癖に。
たまに降るから困る。

交通機関麻痺するし。
マネに迎えに来て貰うからいいけど、これは遅刻か、迎えが早まるかだな。


部屋の中は空調管理されてっから全然暖かいんだけど、外出たら寒そうだなこれ。

仕事行きたくねー。


今日考えてた服を却下して、別のヤツ着よう。
京さんの服、借りていいかな。


あ、京さん起こさなきゃ。


途中まで吸った煙草を灰皿に揉み消して。
立ち上がって京さんが寝てる寝室へ向かう。


薄暗い中、ベッドの端っこ。
盛り上がってるトコに手を掛けて揺さぶった。


「京さん、起きて下さい。時間ですよー」
「………るさい」


しゃがんで、顔半分まで布団を被ってる京さんを見ながら声を掛けると。
嫌そうに眉間にシワを寄せて寝返りを打った。


今日は素直に起きない日らしい。

まぁ連日、帰って来んの遅いしなこの人。


「京さん起きて下さいって。今日雪降ってますよ、雪」
「……」
「東京で雪降るって何なんすかね。今日厚着しなきゃ風邪引きますよー」
「……」
「あ、京さんのあの白のライダース借りていいですか?」
「……」
「沈黙は肯定と受け取りますよー」


背中を向ける京さんに、ベッドに肘を付いてダラダラ話し掛ける。

寝起きの悪い旦那を起こすのも妻の努めです、何てね。


「…おまえ…うるさい…」
「だって京さん、雪ですよ、雪。珍しい」
「…珍しないやん…地方行ったらいくらでも見るわ…」
「あ、そっか」


寝起きの掠れた声。

布団の中から伸びて来た腕。

まだ着替えても無い、俺のスウェットの胸ぐらを掴んで。
京さんの方に引き寄せられた。


「うわ…っ」


京さんの力に逆らう事はせずに、そのままベッドにダイブ。

直ぐ様、俺の身体に腕が巻き付いて来た。


俺を共犯にまた寝直す気らしい。

京さんの身体は布団の中、俺は布団の上。
若干寒い。

けど温かい。


京さん自身の匂いに包まれて、俺も起こす気は削がれる。
今日何時に迎えに来るんだっけ。

飯作ったんだけどな。

何時までギリギリ寝られるか、頭の中で逆算。


あーもう、雪なんだから交通網ストップで仕事休みになんねーかな。
京さんとこのまま、ずっとこうしていたい。


また寝息が聞こえる事に笑みを浮かべて、香水の匂いが一切しない京さんの胸元に擦り寄った。


幸せな空間を手放したくないので。

雪で仕事が中止になる事を本気で願います。




20120122



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