泡風呂での遊び/京流
るきに風呂の準備出来たからどうぞー言われたし、明日ライブやから早めに寝たかったし。
素直に浴室来たんよ。
脱衣所も浴室も暖房付けたから暖かいし、機嫌ように浴室のドアを開けるといつもの風呂とは違う光景が目の前に。
うん。
どう見ても泡風呂やな。
こんなん、個人の家で出来るもんなんや。
ラブホでしか見た事無いでな。
るきがまた玩具を手に入れたらしい。
あいつはちょっと変わったモンとかあるとすぐ買って試してみる。
すぐ飽きる癖に。
まぁえぇわ。
先に身体と髪を洗って、泡塗れの浴槽に入る。
何なんこの泡。
泡風呂って何か意味あるんか。
足を伸ばすと、何かに当たる。
眉を寄せて手探りで足に当たったモンを探すと、何か小型の機械?みたいなんがあった。
大方この泡の原因やろ。
取り出すんもめんどいし、もう泡塗れやし。
溜め息を吐いて浴槽にもたれ掛かる。
腕を出して掲げると、泡だらけの腕。
少しだけ刺青が見える。
したら、るきの声が脱衣所から聞こえた。
「京さん、風呂どうですか」
「どうですかも何も、何なんこの泡」
「あは、泡風呂作れるって言うんで買っちゃいました。泡風呂ってお洒落じゃないですか」
「ラブホのイメージしか無いわ」
「そう言えば最近ラブホ行ってませんよね。行きません?」
「……」
るきに文句を言うとると、浴室の扉を開ける音がする。
そっちに視線を向けると案の定、素裸のるき。
いつも僕が湯に浸かるタイミングで来る。
したら追い出す事も、僕が先に出てく事も無いから。
いらん事だけ学習しよってからに。
シャワー出して、身体洗っとるるきをボーッと見る。
したらるきがこっちを見て来て。
「京さんと泡風呂って何かシュール!」
「何やとこの糞ガキ」
お前が勝手にやった所為やろ!
何楽しそうやねん腹立つ。
洗い終わったるきは僕が入っとる浴槽ん中に入って来た。
僕と向かい合う形になって、泡を掬い上げながら『すげー』とかほざきよる。
ガキめ。
「京さん明日ライブですよね」
「んー」
「俺も仕事さっさと終わらせて行くんで、楽しみにしてますね!」
「はぁ?お前相変わらずやな」
「だって京さんが日本でライブやんの久しぶりじゃないですか。観たいんですー。京さんパスくんねーし」
「…たまに出しとるやろ」
「俺は全公演行きたいんです」
「黙れキモいわ」
「うわ…っ」
アホな事言うるきに泡飛ばしたったら、見事顔に命中してるきが顔を歪めた。
しかも湯ん中から手ぇ出しても表面が泡やから、顔に付いた泡拭えて無い。
寧ろもっと泡が付いた。
はは、アホやろ。
「も、京さん何するんですか!」
「えぇやん、顔も綺麗に洗っとき」
「………」
不満そうな顔で僕をじっと見るるきが無言で僕に泡を飛ばして来た。
僕の頬に泡が付いたんがわかる。
「……えぇ度胸やないの、るき」
「うわ、ちょ、来ないで下さい」
「誰に来るなって命令しとんねん」
「やっ、だって…ッ!?」
もたれとった身体を起こして、るきに手を伸ばすと。
顔を引きつらせたるきが逃げようとする。
いくら広い浴槽言うたって、たかが知れとるし。
うだうだ言うるきの髪を引っ掴んで、そのまま泡塗れの浴槽に頭突っ込んだった。
突然の事で、身体がパニックんなって暴れるんを見下ろす。
適当なトコで引き上げてやると、るきの顔や髪は泡塗れで咳き込んだ。
「ちょ、京さ、酷…ッ、うぁ、泡、口ん中入った…っ」
「はいはい、かーわえぇお顔になったやん。るーきちゃん」
「…鬼」
「今更」
泡塗れの顔から髪へと撫で付けてやって。
涙目んなったるきの顔へ、口の端を歪めて笑い掛けてやる。
それを、京さん格好良いって呟いたコイツは、頭イカれとるんちゃうかな。
そう言うイカれ具合が、気に入っとったりするけど。
ちょっと苛めるんに楽しいな、この泡風呂。
その後にキスするんは、糞不味くて不快やけど。
終
20120117
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