2人で大晦日/京流
年末。
今年はいつもあった年越しライブが無いし、仕事も休みだったから京さんと一緒に過ごせる事が嬉しい。
京さんのバンドの年越しライブも、それはそれで好きなんだけど。
海外から帰って間もないし、ご飯不味かったとかお気に入りの服無くしたとか、かなりご立腹だった様子の京さん。
年末年始はオフだったから、何処に行くでもなく穏やかに過ごす日々。
なかなか無い、久々な京さんとまったりした日常。
2人分の年越し蕎麦を作って。
蕎麦だけじゃ寂しいかなーって思って寿司も買って来たんだよね。
蕎麦も出来上がって、寿司も皿に盛って。
いつも食べてるテーブルに運んで炬燵に入ってテレビを観てる京さんを呼ぶ。
「京さん、ご飯出来ましたよー」
「……」
「京さーん?」
「こっち持って来い」
「え?リビングの方で食べます?」
「うん」
「はーい」
京さんに言われた通り、蕎麦の器と皿を京さんがいるリビングの炬燵テーブルの上に運ぶ。
肩まで炬燵布団を被って、ソファを背もたれにしながら縮こまってテレビを観てる京さん。
言ったら怒られるけど、小動物みたいに可愛い。
全部運び終えて、京さんの斜め側に座る。
炬燵あったけー。
京さんは、ずっとテレビに釘付け。
テレビ観たかったのかなー。
まぁキッチンのテーブルだとテレビ観にくいしね。
「京さん何観てるんすか」
「ガキ使」
「あ、あー、あの笑ったらケツバットのヤツですか」
「うん」
「京さん好きですよね」
「松ちゃんがな。…晩飯これ?」
「年越し蕎麦とお寿司ですよー」
「蕎麦?麺見えんぐらい具乗っとるやん」
「やー蕎麦だけだと味気ないかなーって思って」
海老天とワカメと肉と卵入れてみたら結構ボリューム出たんだよね。
年越し蕎麦って何乗せたらいいかわかんねーし。
かと言って頼むのもヤだし。
「じゃ、いただきまーす」
「…いただきます」
2人で蕎麦をすすりながら、俺も何となくテレビを観る。
何だかんだ、面白いし観入っちゃうんだけど。
寿司にも手を伸ばして、食べながら観てると。
思わず笑ってしまって口元に手を当てる。
「きったな…。出すなよお前。笑ったらケツバットやで」
「いやいやいや、笑いますよコレ。面白いですもん」
「ふーん、ほな飯食ったらやるで。笑ったらケツバット」
「え、俺も笑っちゃダメなんすか!?」
「うん。叩くモンないから…回し蹴りでえぇわ」
「…京さんも笑ったら俺がケツバットすんの?」
「うん」
「えっ、無理無理無理無理!そんな怖ぇー事出来ない!!」
「どう言う意味やねん、お前」
眉を寄せた京さんに睨まれた。
怖い。
だって京さん蹴るって。
どう考えても無理。
倍返しどころか、殺されそう。
でも京さんに尻蹴られんのも死にそう。
痛そう。
つーか俺絶対笑う。
「…どうせ尻蹴られんならセックス中のプレイがいいです」
「きっしょ。飯食っとる時にきしょい事言うなアホ」
「ぁ痛ッ!だって痛いの嫌ですもん!」
「ヤッとる時はえぇんか」
「それは理性ブッ飛んでるんで、全然オーケーです」
炬燵の中で京さんの足に蹴られて、少し逃げる。
呆れた京さんの顔。
そう言う顔も好き。
こいつどうしようもないなって目で見られるのとか。
だって俺の事、そう言う風にしたの、紛れもなく京さんじゃん。
京さんの教育の賜物ですよ。
「じゃー京さん俺1回も笑わなかったら夜中に初詣行きましょうよ」
「なん、そんなに行きたいん糞寒い中」
「明治神宮希望です」
「絶っ対いや。人多すぎて死ね」
「死ねって」
「大丈夫、お前絶対笑うから。笑い過ぎて僕に蹴られまくって立てへんようにしたる」
「うわ、何それ」
別の意味で言ってくれたら興奮して仕方無い。
そう言ったら、京さんにまたきしょいって言われて足を蹴られた。
年越し蕎麦食べながらバラエティ番組を京さんと観るなんて。
それだけでも幸せなんだけどね。
終
20120101
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