嫉妬する事/京流




海外でのツアーも残り少なくなって来て、嫌でも慣れてもうた劣悪な環境で。
今日もバスん中で引きこもる。

自分の寝るスペースの中、カーテンを引いて外の世界をシャットダウンして。
ベッドの上に寝転がったまま、何となく溜まったメールを返信。

言うてもるきからのメールが多いんやけど。
いつもの事やけど、僕宛のメールって日記か何かと勘違いしとんちゃうか。

写メ付きでるきの日々の行動が送られて来たメール内容は一切無視したメールを送る。

他の奴らのメールの返信も終えた時に、るきからまたメールが届く。

『今電話して平気ですか?』ってメール内容やったから、るきの番号を呼び出して電話する。


『、もしもし』
「おー」
『京さんお疲れ様です』
「うん」
『今大丈夫ですか?』
「平気」
『そうですか』


そう言うと、るきは嬉しそうに声のトーンが上がっていつもの様に何か色々喋り出す。

適当に返事をしながら、何となく自分の指先を見て。

あー、逆剥け。


『京さんもうすぐ帰って来ますよね』
「せやね」
『早く会いたいです。今年の年越しは一緒に過ごせますか?』
「あー…ライブとか聞いてへんし、オフなんちゃう?」
『マジっすか!一緒に初詣行きましょうよ!夜中に!』
「はぁ?寒いし人多そうやしめんどいやん」
『除夜の鐘聞きながら行きましょうよー』
「知らーん」


僕は極力外に出たないねん。

何でわざわざオフに人多いトコ行かなアカンの。


『…って言うか京さんて、交遊関係広いですよね?』
「は?何いきなり」
『俺には音源聴くなって言うのに、女芸人さんにはあげるんですよね』
「……」


あぁ。

その事な。


そん事を聞きたかったんかコイツは。


拗ねたるきの口調に溜め息。


何その、浮気した男を攻める口調と内容。

ウザいわ、ホンマ。


さっき返信したメールの中にいた人物の顔が浮かんで消えた。


「別にえぇやろ。知り合ったばっかやったし」
『会って話したいとか、ブログに書いてましたけどそんなに仲良いんですか』
「普通なんちゃう」
『…いつ会ったんですか聞いてないです』
「そら言うてないし。お前みたいに誰と何処で会ったとかいちいち報告せなアカンの?」
『……。俺だって会いたいのに』
「帰ったら会うやろ。何なん。何が不満やねん鬱陶しいなお前」
『…ッ』


るきの声にイラッと来て、頭を掻きながら心底嫌そうな声を出したら、るきが言葉を詰まらす。


ただの知り合い。
友達。
後輩。


僕はそんなに人と積極的に関わる方ではないけど。
一応はそれなりに交流しとるつもりやし。

るきにとやかく言われる筋合いは無いんやけど。


何度言えばわかんのや。


ただの嫉妬から言うて来とるんもわかるし、確かにファンからもギャーギャー言われとる事やけど。

僕と共同生活をしとって、ある程度は僕と時間を共有しとるヤツが何でそんな1人の言動に左右されるんか不思議過ぎる。


「そんな信用無いんやったら出てったら」
『ッ、ちが、俺…』
「なん」
『……すみません、ちょっと、嫉妬したんです。ごめんなさい』
「ちょっと?」
『…かなり嫉妬しました。俺は京さんと会った事とか、そんな軽はずみに発言できないのに…って』
「下らん事でいちいちウザい事言うな」
『すみません』
「一緒に暮らすだけや足りんの。何ヵ月に1回、何時間かの茶飲みだけでえぇの」
『京さんと暮らす方がいいです』
「ほなグダグダ言うな」


それが答えやろ。


るきはアホみたいに僕の事が好きで盲目過ぎるから。
そこが気に入って一緒におるけど、たまにウザい。


『京さん帰って来るの楽しみにしてます』
「おー。大人しく待っとれ」


下らん事は考えず僕だけを見て。


取り敢えず帰ったら、シバいたるわ。
物覚えの悪い忠犬を。




20111224



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