ミラクルフルーツ/京流




仕事から帰って、俺より先に帰宅した京さんが待つ中。
朝に仕込みをした料理を作って2人で話をしながら食べる。

まぁ大抵、俺ばっかが話をしてるんだけどね。
今日スタジオであった事とか。


で、食べてテーブルの上を片付けた後、今日スタッフの人にもらったヤツがあったのを思い出した。

それと一緒に、スーパーで買った物も取り出して切って皿に盛った。


「京さん、今日スタッフに面白いのもらったんすよ」
「あー?何」
「これです。ミラクルフルーツ」
「…何それ」
「これ昔流行ったらしいんですけど、口の中で舐めた後、酸っぱい物食べると甘く感じるってヤツです」
「はー…まぁ、アホなるきが食いつきそうなヤツやなぁ…」
「食べてみましょうよ京さん。レモンいっぱい買って来たんで!」


テーブルの前で食後の煙草を吹かしてる京さんの目の前に皿を置く。
京さんはゆっくり煙を吐きながら、皿を見て、目の前に座る俺に視線を向けた。


灰皿に煙草を指で弾く。


「……こんなにレモン食うん…」
「デザートですから」
「うわ、レモン見ただけで唾液出て来た」
「ほらほら、京さんこれ舐めてみて下さいよ」
「うっざいわお前!ほなお前が先食べぇっちゅーねん」


京さんに進めまくったら、超嫌そうな顔された。
だってこれ、レモンの酸っぱいのが甘く感じるらしいんですよ。

そんなの凄くないですか!


「じゃ、俺が先舐めるんで、後から京さんも舐めて下さいよ」
「何なんその交換条件。ムカつく」
「美味しいですから!…多分」
「多分なんかい」
「俺も食べた事ないんで」
「アホ」


一応京さんと2人分、レモンの端に置いたミラクルフルーツを1つ摘まんで口に入れる。

舌の上で転がす、とか言ってたな。

味はライチを薄くした感じ。


京さんはじっと俺の行動を眺めてた。


「…じゃー食べますよ、レモン」
「おー。一気に食え、一気に」
「…いざ食うとなると躊躇いますね」
「お前が甘くなる言うたんやろ。早よー食え」
「…いただきまーす」


種を出して、いざレモンを手に食べようとしたけど、やっぱ酸っぱいイメージがあって食べるの躊躇する。

京さんに煽られて、切ったレモンを口に入れる。


味は予想してた味とは全く別物。


「あ、甘ぇー!ちょ、京さんこれ食べて!甘い!」
「あーそー。よかったやん」
「京さんも!」
「僕興味無い」
「……」


レモンなのにむちゃくちゃ甘ぇ。

え、どう言う事だこれ。


京さんに差し出したら視線を逸らされた。
まぁ京さんが素直に食べてくれるとは思わねーけど。


立ち上がって、京さんの傍へ近付く。
京さんは視線だけ俺の動きを見てて。


ちょっとやってみたかった事。


「…失礼します」
「は?」


京さんの分のミラクルフルーツを口に含んで、京さんにキスをする。

間近にある顔は一瞬目を見開いてから歪む。

けど、振り払われないから京さんの唇を誘い込む。


離されないように、京さんの首にがっちり腕を回して。

そしたら、京さんは俺の後頭部の髪を掴んで強引に口ん中を割り開かれた。


俺の口に含んでたミラクルフルーツを京さんの口に口移すように舌を動かす。
京さんの強引な舌使いに小さく声を漏らす。


甘えるように京さんに擦り寄る。

お互いの口ん中で舐められたミラクルフルーツ。


十分にキスをして、息が上がりつつ唇を離す。


「…お前、僕相手に偉くなったやん」


京さんの身体から離れると。
京さんの低い声が響いて、ペッとミラクルフルーツの種を床に吐いた。

…それは後で片付けるとして。


何となく京さんの声が怖いけど、気にしない。


「京さんもレモン食べて下さい。早く」
「………」


京さんは俺を睨み付けると、レモンを取って一口食べた。


「…甘くないですか?」
「……甘い」
「ですよね!凄くないですか!」
「まぁ凄いけど。別に普通のフルーツでえぇんちゃう」
「それ言っちゃダメですよ!」
「はいはい、ホラ、食え」


椅子に座ったままの京さんにレモンを差し出されて。
ちょ、これが噂の『あーん』ですかってテンション上がりながら口を開けると、京さんの手が俺の口の中にレモンを放り込んだ。


ミラクルフルーツのおかげで、全然甘い。


「オラ、もっと食え糞犬」
「ちょー幸せなんですけど」
「よかったなー」


京さんが次々とレモンを食べさせてくれるから、それを咀嚼していく。


だから皿の上にあったレモンをほとんど食っちゃったんだよね。

だって京さんの『あーん』だよ!?

食うだろそりゃ!












…数時間後、胃が痛くなったけどね。


「あー…胃もたれするー…」
「るき知らんかったん?酸味は食べ過ぎると胃に悪いんやで」
「…仕返しですか」
「知らーん」


楽しそうな顔した京さん。
好きですけどね。

あー胃が痛ぇ。




20111218



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