報告当日A/敏京+薫




「………」
「あの、だから、えーと、俺達の交際を認めて下さい…!」


敏弥がそのままこれでもかって言う程、腰を曲げて頭を下げた。

俺はと言うと、敏弥が言うた言葉を頭ん中で反芻して数秒、理解する。


京君の方に視線を向けると、京君はケーキを食べる手を止めて目を細めて敏弥の方を見とった。
俺の視線に気付いたんか、ふっと僕の方を向いて我に返る。


「…取り敢えず顔上げや、敏弥」
「……はい」
「座って」
「…はい」


敏弥は顔を上げて、また京君の隣に腰を下ろす。
表情は固く、俺の反応を見る様に真っ直ぐ見つめて来た。


「…要するに、京君と敏弥が付き合っとるって、恋人同士って事?」
「そう、です」
「ほうか」
「………」


京君と、敏弥が。

確かに最近、仲良いなって思いよったけど。
まさか付き合うまでいくとは。


「…いつから?」
「付き合ったのは、京君の誕生日、から…」
「あぁー…」


あん時の2人は何やおかしかったよな、態度が。
そんな事があったんや。


表情が固いままの敏弥の隣に座っとった京君が、ケーキの皿を置いてジュースを一口飲んだ。

そして口を開く。


「…薫君、反対?」
「ん?…まぁ、驚いたけど…反対する理由は無いやん?それよりもこの状況何?『娘さんを僕に下さい』って言われとる父親の気分になるんやけど」
「え、だって京君のお父さんじゃん、薫君て」
「…は?」
「もう敏弥がメンバーに言う前に薫君に先に報告するって煩いねん」


さらっとそんな事を言う敏弥と、呆れ顔の京君。


「メンバーにもそうだけど、薫君て京君の事よく世話してたじゃん?それに嫉妬したりもしたけど…うん、京君の事が好きだし、父親的存在の薫君に認めて欲しい」
「父親、か…そうか…」


確かに、京君は何だかんだ手を掛けたくなるし。
最近は敏弥とばっかつるんどってあんま一緒におる機会も無くなって少し寂しく感じとったけど。

京君との事で、そう認識されとるのが気恥ずかしい様な、嬉しい様な。

やから敏弥、そんなかしこまった服で来たんか。


後頭部を掻いて、京君と敏弥に向き直る。


「京君と敏弥、2人で付き合うって決めたんやったら、反対せんよ。する理由も無いし」
「薫君、」
「驚きはするやろけど、メンバーも大丈夫やろ。男同士とか、色々あると思うけど仲良うやってき」
「…ありがと、薫君」
「うわぁあ、よかった!めちゃくちゃ緊張したよー!!」
「ちょッ、」
「……」


敏弥が叫んだと思うと、隣におる京君に腕を回して抱き付く。

京君は眉を寄せて敏弥の身体を離そうとしたけど、敏弥は離れる事も無く京君に擦り寄った。


…まぁ、ライブ中絡んだりする分、こう言うの見慣れとるけど。

嬉しそうに笑う敏弥に、あぁ、ホンマこいつは京君の事好きなんやなって思う。


何や悔しいな。

俺は京君をそう言う対象として見ては無かったけど。
俺も京君の事を大事にしとったから。


「敏弥ウザい。離れて」
「あ、御免ね?」


そう言った敏弥は、京君の身体から離れて髪を撫で付ける様に頭を撫でた。
京君はされるがまま。


「…ま、仕事に支障出る様な事は無いようにな」
「うん」
「京君の事、大事にしぃや。泣かしたらアカンで」
「わかってる」
「ホンマにおとんみたいな事言うなや」
「あはは。だから薫君は京君のお父さんだって言ったじゃん」


京君が笑って、敏弥も楽しそうに笑う。

幸せそうに笑いやがって。

そらもう、応援したらなアカンやろ。


うちのメンバーもそんな事で動じる様なヤワな奴らちゃうし。


「あー…もう、安心したらお腹空いた!俺もケーキ食べよ」
「敏弥の一口ちょーだい」
「いいよ。あーん」
「は?自分で食えるし」
「照れんなって」
「アホか」


敏弥が手に取った皿から、京君がフォークを突き刺して敏弥の分のケーキを食べる。

2人のやり取りを見とると、敏弥がウザい程、京君が好きなんやなってわかるわ。
口では嫌がっとるけど、京君も満更でも無い顔しとるし。


何やそれ、ちょぉ妬けるやん。


「…京君、ホンマ敏弥でえぇの?」
「えぇ!?」
「うーん。ちょっと早まったかも」
「京君まで!」
「いつでも出戻って来ぃやー」
「そうする」
「何それ!絶対別れないんだから!」
「ははッ」


からかってみたら、敏弥は慌てて。
京君は悪戯っ子の様な笑みを浮かべた。


いつもの調子。

そう言うのがえぇよ。

柄に無く緊張しとる敏弥とか、おもろすぎるわ。


「よし、ほな今日は3人で飲みに行くか。お父さんが奢ったるでー」
「わーい!有難うお父さん!」
「僕デザートがあるトコがえぇ」
「よし、京君の好きなトコ行こなー」
「ちょっと京君は俺のだからね!狙わないでね!」
「誰がお前のやねん」


まぁ何はともあれ。

2人共大事なメンバーやし。

幸せになってくれたらって、そう思う。


まぁ俺は京君の『お父さん』な訳やから。
京君贔屓なんは、仕方無いやんな。




20120110



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