報告当日@/敏京+薫
「おー2人共いらっしゃい」
「薫君ち久しぶりに来るなぁ」
「……、お邪魔します」
オフの日に珍しく京君と敏弥が俺んちに来る言うて。
最近そんな家に来るとか無かったからビックリしたけど、まぁ断る理由も無く。
京君の好きそうな飲み物を用意して、2人が来るんを仕事しながら待っとったら言われた時間より少し遅れてインターフォンが鳴った。
ドアを開けると、京君と敏弥。
京君は昔からよう俺んちに来とったからさっさと中に入ってって。
敏弥やって、俺んち来るんが初めてって訳ちゃうのに何やいつもと違う。
よそよそしい感じ。
どなんしたんコイツ。
手土産なんか、小さい箱持って普段より少しかっちりした服装。
部屋に上がるんも、丁寧に頭を下げて入って来た。
オフん時に、敏弥が髪の毛がっちりセットしとんとか珍しいな。
ホンマどしたんや。
悪いモンでも食ったんか。
何や挙動不審。
「…あっ、薫君、これ、お土産」
「おーそんなわざわざ気ぃ使わんでえぇのに」
慌てた様に言う敏弥から小さい箱を受け取る。
まぁ箱からしてケーキか何かやろな。
「2人共そこ座り。京君、オレンジジュースと烏龍茶あるけど、どっちがえぇ?」
「敏弥がケーキ買って来たからオレンジ」
「わかった。ちょぉ待っとってな」
敏弥はコーヒーでえぇか。
2人にソファに座るように促して、その前のテーブルに敏弥から貰った箱を置いて自分はキッチンへ向かう。
グラスを1つ出して、新しく買ったオレンジジュースを注いだ。
俺と敏弥はドリップコーヒーで。
ケーキ買って来たとか言うとったから、皿とかいるんか。
…あったっけなー…。
そんな事を思いながら準備しよると、リビングの方で京君が喋っとる声が微かに聞こえて来た。
『しっかりせぇよ』とか、確かに敏弥ちょっと今日おかしい。
何かあったんやろか。
バンドに関する事?
さすがにバンド抜けたいとかそんな話やないやろ。
京君はいつも通りやし。
京君と敏弥の飲み物を先に持ってって、テーブルに置く。
「なぁ薫君、ケーキ開けてえぇ?」
「えぇよ。」
機嫌良さそうに、ケーキが入っとる箱を開ける京君。
最近よう敏弥とつるんどって、俺んトコに来る機会は減ったけど。
京君の行動見とると何でもしたりたくなるぐらい可愛い。
可愛い言うたら本人怒るけどな。
「あ、京君待ちや。今、皿持って来るから」
「えぇよ。手で食べるし」
「アカン。待っとき」
「何やねん薫君ケチやわぁ」
そう言う京君に笑みを浮かべ、またキッチンへ戻って自分の分のコーヒーと皿とフォークを持って行く。
彼女が色々食器買っとったからよかったわ。
2人の向かい側に座って、箱ん中を覗くと色んな種類のカットケーキが6個あった。
何これ。
ノルマ1人2個?
こんなに食われへんで。
「京君どれがえぇん?」
「これ、と、これ」
「はいはい。敏弥は?」
「っえ?」
「敏弥は?どのケーキがえぇの?」
京君が指差したケーキを皿に乗せて、京君に渡しながら敏弥の方を見ると。
ボーッとしとったんか心此処に在らずか。
苦笑いしながら聞くと、慌てた様にどもりながら何でもいいから薫君選んでよ、と言われた。
ホンマ変な奴やなぁ。
敏弥はどっちかっつーと、京君と負けず劣らず子供っぽいから、逆に拍子抜けする。
何か悩んどって相談しに来たんやろか。
でもそしたら、何で2人なんやろ。
まぁ何か言いたい事あるとは言われとったけど。
敏弥の様子からして、ただ単に遊びに来たって訳やなさそうやし。
適当に選んだケーキを、敏弥の前に差し出す。
自分も選んで、残りは冷蔵庫入れとこか。
一通り用事が終わって、パソコン台についとるキャスター付きの椅子を引っ張って来てそこに座る。
手を伸ばして、コーヒーを一口飲んだ。
「で、どしたん」
「ん?」
「今日何か言いたい事あったんちゃうの」
「あー、あんな、薫君、」
「えっ、ちょ、ちょっと待って京君言っちゃダメ!」
ケーキ食べよる京君が、何か喋り出そうとしたらさっきまで飲み物やケーキに手を付けず、ずっと一点を見つめたままの敏弥が慌てて京君の口を塞いだ。
京君は不機嫌そうに眉を潜めて、敏弥を見ながらその手を振り払う。
「言うたらアカンて、言いに来たんやろが」
「うん、だから、俺が言うから。俺が薫君に言うから、ちょっと待って」
「…え、何そんな深刻な話なん?」
聞きたいけど、聞くん怖くなって来るやん。
「知らん。ほな敏弥早よ言いや」
「う、うん」
京君は敏弥を少し小突くと、反対側を向いて、またケーキを食べ出した。
何言われるんか予想つかへんから、2人の動向を観察しよると。
敏弥が意を決した様に立ち上がる。
顔は、真剣そのもの。
「薫君!」
「どしたん、敏弥」
「ッ、少し前から、きょ、京君とお付き合いさせて頂いてます…!!」
…うん?
今、何て?
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