Probably it is jealousy./京流
終了予定の時間より早めに帰れて。
別に何処も寄る所も無かったし、マネに自宅まで送ってもらった。
しんど。
取り敢えず腹減ってんけど。
昼を中途半端な時間に食べたから、夕方頃は食いた無かったから食ってへんし。
るきには帰宅時間もっと遅く言うとったし、あいつはオフやけど後輩のライブ観に行くとか言うとって。
遅くなるけど、僕より早めに帰れそうやから飯作るー言うとったけど。
予定より早く帰れたし、ライブ今終わったような時間やろしな。
やっぱマネにコンビニでも何でも寄ってもらえばよかったか。
まぁえぇわ。
何かめんどいし。
そんな事を考えながら、玄関の鍵を開けて真っ暗な中へ入る。
靴脱いで電気点けて廊下を歩いてリビングへ行く。
そこも明かりを点けると、整然と家具が並んだ部屋が明るみになった。
今日オフや言うとったから、整理整頓してったらしい。
あいつ綺麗好きやしな。
生活感が無い部屋はいつもの事。
そしてそれを僕が荒らすんも、いつもの事。
鞄をラグの上に置いて、上着を背もたれに投げてソファに座る。
怠かったから、糞広いソファの上に寝転んだ。
そん時、マナーモードにしてズボンのポケットに入れとった携帯のバイブが鳴る。
携帯を出すと、ディスプレイにはるきの名前。
仰向けんなって、天井を見上げながら通話ボタンを押して携帯を耳に当てる。
「はい」
『あ、京さんお疲れ様です』
「おー。何や後ろ騒がしいんやけど」
『今会場にいて撤収作業でバタバタしてて』
「あぁ」
『それですみません、ちょっと打ち上げどうしても出てくれって言われて…顔だけ出して帰ろうかとは思うんですけど、京さん帰るまでに帰れそうに無いんです』
「……ふーん」
僕もう帰っとるけど。
言いそうになった言葉を飲み込む。
何と無く。
「後輩のバンドやっけ。何処」
『アリス九號.です』
「…お前先輩やろ見えへんけど。挨拶いちいち行かんでもいい立場ちゃう?」
『まぁ…、ずっと行くって約束してたのなかなか時間取れなくて、今日行ったのすげー喜んでくれて、来てくれって虎が、』
「もうえぇよ。行ってき」
『……、やっぱ帰ります』
「は?行く言うたんやろが」
『でも、』
「ウザいな。帰って来んな」
『………』
「行きたいんやろ?わざわざ僕に許可取らんでも行って来たらえぇやん。後輩に宜しく言うてな」
自分でも思ったよりトーンが低い声が出て。
その気配を感じ取ったるきの声がさっきと違って沈んだ。
耳に届くるきの声と後ろの雑音が、一気に煩わしいモンになる。
『きょ、』
何かるきが言おうとしとったけど、通話終了ボタンを押してそのまま電源を落とした。
そのままラグの上に携帯を投げるように落とす。
別にるきの行動をどうこう制限するつもり無いけど。
そん時選んだんはそっちなんやろ。
僕の性格上、それですぐ帰って来られたって腹立つだけでしか無い。
腕で顔を覆って、暫く微動だにせんかったけど。
ここでこのまま寝る訳にもいかんし、嫌々身体を起こす。
今ので空腹なんかどっか飛んだし、めんどいし風呂入って寝よ。
風呂場へ行っても、沸かす奴がまだ帰って来てへんのやから湯も張ってへんし。
それも何や腹立たしい。
我ながらガキっぽいと思う部分もあるけど、それはあいつが悪い。
乱暴に脱いだモンを洗濯機に突っ込んで、浴室暖房をつけてシャワーを浴びる。
さっきから感じる胸のムカつきは、るかの行動が気に食わんかったから。
昔より、より人間らしい。
るきの勝手な行動も、僕ここの感情も。
終
20111205
[ 209/442 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]