冬の鍋/敏京




「あー鍋食いたい」
「ん?鍋?」
「うん、鍋食いたい」
「今日食べに行く?」
「や、ちゃうねん。家で炬燵ん中で食べつつくような事がしたい」
「あぁー…俺んち鍋もガスコンロもねぇなー…」
「僕もない。作らんし」
「食べに行こうよー」
「えー」


もうすぐ仕事も一段落着いて帰れるかなーって時、隣に座ってる京君が呟く。


鍋かー。

ま、京君が言わんとする事はわかるけどね。


もう寒いし、恋人同士が鍋をつつき合うっていいね!


冬だし、鍋が美味しい季節だから食べに行っても美味いと思うけどなー。


そんな事を思ってると、京君が徐に立ち上がって。
そそくさと薫君の方へと歩いてった。


何だろうなーって思いながら、その行動をじっと見つめる。


「なぁなぁ、薫君」
「ん?何?」
「今日家行ってえぇ?」
「あぁ、えぇよー」
「えぇえぇ!?」
「…敏弥、煩い」


何言うのかと思ったら、仕事中の薫君にそんな提案。

声上げたら、京君に睨まれた。


だってだって!

どうせ薫君ちでなら鍋出来るかなって思っておねだりするつもりだろ!


慌てて立ち上がって、京君と薫君が話してる場所に行く。

何か京君は呆れ顔。


気にせずに、京君に寄り添う様にくっつく。


手で払う仕草されたけど気にしねー。


「でな、僕鍋したいねん。薫君ち出来へん?」
「あー…鍋なー多分出来ると思うで。ガスコンロあったし」
「ほな鍋作って」
「えぇよ。何がえぇ?」
「チゲ鍋」
「え!?辛くね!?辛いのダメだよ俺食えねぇし!」
「…え、敏弥も来るん?」
「は?敏弥は来んやろ。な?」
「ッ、2人共なんだよー!」
「ははっ、ウザ」


薫君と京君が、わざとらしく驚いた顔をして。

京君の身体に腕を回してぎゅーっと抱き締めるとその腕をベシッと叩かれた。


「お前来ると京君とイチャこくしなぁ…」
「いいじゃんいいじゃん。京君と俺は2人でセットなのー」
「敏弥キモー」
「ホンマやなー」


2人して笑いながら顔を見合わせて。


何だよ薫君デレデレしやがって!


京虜自重しろよマジ!

京君も、薫君が自分に甘いの知ってるからねー。


俺と付き合う前は薫君ちに結構行ってたりしたから、京君にとっては当たり前なんだろうけど。


ぎゅーっと京君を抱き締めて、頭に擦り寄る。


別に下心あるとかそんな事思ってないけど、俺以外に行くと嫌なんだもん。


「ほな酒と材料買って帰ろか」
「うん。あ、うどんも買ってな」
「おー何でも買ったるでー」
「…ちょっと薫君、俺の京君を餌付けしないでよね」
「…ホンマにチゲ鍋にすんで」
「やだやだ!俺食えねぇ!」
「京君、素買うし、ちゃんこ鍋でもえぇ?」
「えぇよ。美味いん作ってな」
「任しとき」


そう言って、薫君は目を細めて京君を見て。
自然に手を伸ばして京君の頭を撫でた。

薫君のその手を掴んで、京君の頭から離させる。


「ダメダメ。薫君ダメー」
「…京君、やっぱ敏弥抜きでもえぇか」
「ん?全然えぇよ」
「やーだー!俺も絶対行く!2人きりにさせねぇ」
「ほんまアホやろ、敏弥…」
「ま、今に始まった事ちゃうしなー」


抱き締めてた京君が、俺の腕を外して少し身体から離れた。


「せやろ?アホやから困るわー。こいつ飲み行くんとかでも煩いんやで」
「あー。おるよな、そう言う奴」
「薫君のはどうなん?」
「ん?俺の彼女はどっちかって言うと周り固めて行くタイプやな」
「うは、怖ぇー」
「ははっ、やろ?」
「でも好きなんやろー?」
「まぁなー」
「そう言うモンだよねぇ」


3人で笑いながらそう言う話をして。

帰りにスーパー寄って薫君ちに行くって事になった。


ハタから見たら男3人で鍋囲むってどうよって感じだけど。

俺の恋人ちゃんは我儘だからね。


薫君ちだったら酔った勢いでイチャイチャしちゃおっと。


一旦、薫君から離れて元の位置に戻ったら。
京君が顔を近づけて来たから『なぁに』って笑ったら。


「今度は2人でしたいから、お前鍋買っとけよ」
「…了解」


我儘で可愛いんだから、もう。




20101123



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