前日/敏京
「あー…明日緊張するー…」
「…また言うとん、お前…」
「だって薫君に報告するんだよ?俺らが付き合ってるって」
「薫君なら男同士でも受け入れてくれるって」
「そうじゃ無いよ!や、それもあるけど、薫君て京君の事大好きじゃん!それなのに俺と付き合ってるとか、それを反対されたらどうしようって…!」
「ふーん…」
明日がオフって日。
京君と2人、狭いベッドの上で煙草を吹かす京君の隣で肘を付いて話をする。
京君はめちゃくちゃ他人事のように興味なさそう。
何でそんな冷静なの!
京君と付き合って数ヵ月。
京君がメンバーに隠しておくのはメンバーを信用してないようで嫌だって言ってくれたから、メンバーに俺達が付き合ってる事は言おうって事になったんだけど。
メンバーに報告するより先に、俺が薫君に報告したいって言ったから。
明日はその、薫君に報告する日。
男同士だからって、薫君が嫌悪するとかそんな心配じゃない。
薫君が京君の事をどれだけ好きで大事に思ってるかなんてわかりきってる事だから。
京君も京君で、薫君の事は信頼してるし。
そりゃもう親子のような関係だよ。
京君を大事にしてる薫君に報告するとか。
俺からしたら父親に『娘さんを僕に下さい』って結婚報告する心境だってのに。
「どうしよー…やっぱ手土産とか必要だよね」
「何でやねん。あ、でもケーキ食いたいから、買って」
「じゃぁケーキ屋さん寄ってこっか」
「うん。薫君ち行くん久し振りやなぁ」
「忙しかったしね」
「んー…」
隣の京君は、腕を伸ばして灰皿で煙草を揉み消して。
寝返りを打って寝る体勢に入る。
「寝る?寒くない?」
「平気」
「そっか。ならよかった。おやすみ、京君」
「…おやすみ」
肩まで毛布と布団をかけてやって、京君の前髪を掻き上げて額にキスをする。
俺の顔をじっと見てちょっと笑った京君は、眠そうにしながらゆっくり目を閉じた。
目を瞑った京君は、スーッとすぐに寝息が聞こえた。
睡眠大好きだもんね、京君。
最近忙しかったし。
可愛いなぁ…。
寝顔マジ幼い。
ちゅーしたい。
…ちゅーしちゃお。
唇を寄せて、京君の頬にキスをする。
ちょっと身じろいだ京君は夢の中。
でも俺は緊張して寝れそうにねーな。
俺が京君を好きになって告白して、色々あって京君と付き合える事になって。
キスしたり恋人同士がする事を京君も受け入れてくれて、幸せいっぱいなんだよね。
メンバーは、驚くかもしれないけど受け入れてくれる。
そんな確信はあるけれど。
薫君が俺には京君を任せられないとか言われたらどうしようとか、そんな事が頭をよぎる。
でも京君の事を大事に思ってる薫君だから、きっとそれも真実なんだろう。
実際、俺から好きになって京君を巻き込んじゃった形だから。
京君から皆に報告しようって言われた時は本当に嬉しかった。
泣きたくなるぐらい、京君の方が大人で男前。
付き合った時も。
京君の寝顔をじっと見下ろして髪を優しく指で撫でる。
「大好きだよー…」
囁くように言って、京君に擦り寄る。
片手を京君の身体に回して、抱き締めるように京君に密着する。
京君に相応しい男になるから、反対しないで欲しいな。
こんな風に一緒にいる楽しさを経験したら、もう離れたくないよ。
目を閉じて京君の匂いに包まれる。
幸せ。
好きな人と一緒にいるって、こんな幸せな事だったっけ。
明日、緊張するなー…。
ずっここれからも、京君の傍にいたい。
好きな気持ちは誰にも負け無いから。
終
20111129
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