疑似スイーツ/京流
るきと顔合わせて飯食った後、るきがデザート買ったからいるか言うから煙草を吸いながら待つ。
言うても夜中なんやけど。
何買ったん。
煙を吐きながら、るきがキッチンで忙しなく動くのを観察する。
仕事から帰ったままの服装やからるきは全身黒い。
しかし薄い。
身体が。
体型変動激しいて、デブな時あるけど、るきはどっちかって言うの華奢で線が細い。
肩幅狭いし、女かっちゅー話やな。
筋肉全く無いし。
あれでようツアー回れるわ。
肘付いてるき観察しながらそんな事を考えよったら、用意が出来たらしいるきが僕の目の前に皿と珈琲が入ったマグカップを置いた。
「これ、スタッフの人に教えて貰ったんですけど…美味しそうじゃないですか?」
「…は?」
「え、京さんこっちがいいですか?」
「るき、デザート言うたやんな」
「これ何?どっからどう見てもたこ焼きに見えるんやけど」
「ですよねー」
「ですよねー、って」
るきの目の前にあるんて何…蕎麦?
さっき飯食ったばっかやのに、また炭水化物食わすって何。
ヘラっと笑ったるきに若干イラッとする。
ふーっと煙を吐いて、灰皿に煙草を押し付けて消す。
「これ、スイーツなんですよ」
「え?」
「スイーツで作られた食べ物なんです。有名で、なかなか手に入らなかったんですけど、今回やっと買えて、」
「…このたこ焼き甘味なん?」
「そうですよー。京さんのたこ焼きはミニシュークリームです」
「………」
「因みに俺の蕎麦は中にスポンジが入ってるケーキです」
「…わざわざ器までついとんか」
「凄いですよね。京さん騙されてくれるかなーって思って」
「ムカつくわー」
るきが楽しそうに笑っとる所が。
リアリティを追求しとんか、ご丁寧に楊枝がついとるシュークリーム言われたたこ焼きを1個口に運ぶ。
「うわ、ホンマにシュークリームや何コレ」
見た目と味のギャップがありすぎるやろ。
食ったらホンマにシュークリームやねんけど。
見た目たこ焼きの癖に。
「こっちも普通にモンブランですよ。見た目スイーツに見えないですよね」
「人ってアホなモン作るなぁ…普通に甘味作ればいいやん」
「こう言うの遊び心があって良くないですか?」
「…まぁ、るきみたいなアホが買いよるしな」
「もー!意外と人気なんですよコレ!」
「はいはい」
見た目はアレにしても、確かに味は美味い。
「京さんこっちも食べます?」
「うん」
「あーんして下さい」
「やっぱいらん」
「今いるって言ったじゃないですか!」
「いらん」
るきがスプーンに乗せたそれを差し出して来たから、気持ち悪いなと思ってたこ焼きなシュークリームを口に運ぶ。
「じゃ、京さんの方のシュークリーム下さい」
「勝手に食えばー」
「あーん」
「お前今年何歳?」
「…冷静に言わないで下さいよ。自分のやってる事にヘコむじゃないですか」
「アホな事しとるって自覚した方がいいんちゃう」
「京さんのケチー。もういいです」
そう言うて拗ねた表情をしたるきは腕伸ばして来てデザート用フォークでシュークリームを刺した。
そのフォークを奪って、フォークに刺せる限界までたこ焼きに見えるシュークリームを突き刺す。
まぁ、3個しか刺せんかったけど。
「オラ、食え」
「マジっすか!京さんからのあーんてマジですか!!」
「いっぺんに食えよー」
「は!?…ッ、」
フォークに刺さったシュークリームを、口開けた間抜けな顔のるきの口に突っ込む。
うわ、不細工ー。
ホンマおもろい顔やわ、コイツ。
何するんですか、と言わんばかりにるきが僕を見て。
口に手をあてて必死に咀嚼しようとする。
えぇやん。
僕に食べさして欲しかったんやろ。
僕の性格からして、それするって事はそう言う事やん。
「も、京さん!」
「美味いやろ?」
「京さんがあーんしてくれたんで超美味しかったです」
「はー…ホンマお前ってキモい」
僕ん事を、そんなに好きな所とか。
るきの方のスイーツも、手を伸ばして少し食べる。
うん、見た目蕎麦の癖に、普通にケーキやし美味い。
「あ、俺が食べさせたいです京さんに」
「…お前の顔面にケーキ投げたろか」
「京さんが全部舐めてくれるなら全然いいです」
「………」
この甘味のように騙しも何もないるきのストレートな感情が気に入っとったけど、ホンマに時々、キモい。
終
20111129
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