全てが甘えの行動/敏京
「ちょっと京君、風呂上がりにそんな格好でいたら風邪引くよ」
「今暑い」
「暑くても湯冷めするから、ほらこれ着て」
「…敏弥のやん、これ」
「あったかいから。ね」
「…しゃーないなー」
京君は今日、俺んちに泊まりに来て。
ゲームやってたと思ったら飽きたから風呂入るーとか。
ホント気紛れなんだから。
風呂上がり、上半身裸のまま出て来てテーブルの前で帰りに買って来た個包装されたチョコ菓子食べてて。
可愛いけど。
可愛いけどさ!
俺のスウェットを引っ張り出して京君に渡すと、京君はそれを着た。
…けど、まぁ、俺のだからサイズはデカい訳で。
それが狙いでもあるんだけど、可愛いな畜生。
言ったら絶対怒るんだろうね。
お菓子の袋そこら辺に捨ててるけど、可愛いもんは可愛い。
でも一応、俺の部屋は綺麗にしておきたいんだけどなー。
「ちょっとゴミはゴミ箱に入れてよー」
「うーん」
「聞いてる?」
「うん。敏弥、喉渇いたから烏龍茶取って」
「自分で取りなよ」
とか言いながら、京君が散らかしたゴミをゴミ箱に捨てて立ち上がって冷蔵庫に向かう俺。
惚れた弱味か、京君の世話って何でもやってあげたくなっちゃうんだよね。
京君が頻繁に来るからって、常備するようになった2リットルのペットボトルの烏龍茶を出してグラスに注ぐ。
「はい、どーぞ」
「ん。ありがと」
京君にグラスを渡すと、八重歯見せて笑顔でお礼言われたからもうきゅんってする。
から、そのまま床に膝付いて身を屈めて京君にキスしたら、烏龍茶飲もうとしてたのを邪魔されて眉を寄せて嫌そうな顔された。
「なん、邪魔」
「やー京君が可愛かったから」
「かわいないし」
「俺から見たら可愛いの。京君大好きだもん」
「ふーん」
京君は興味無さそうな返事をして、視線を逸らして烏龍茶を飲んでた。
はー。
何かそう素っ気ないのはいつもの事なんだけど、俺だってちょっとは寂しくなっちゃうよー。
もう1回立ち上がって洗面所からドライヤーを取って来る。
プラグをコンセントに刺して、京君の後ろに腰を下ろした。
肩に掛けてた小さいタオルを手に取って、京君の濡れた髪をがしがしと拭く。
「何、」
「髪乾かさないと風邪引くよ」
「あぁ。早よやって」
「はいはい。もう京君放っておくと何もしないんだから」
「……」
そう言いながら、京君の髪にドライヤーを当てる。
最初は濡れて重かった髪が、温風を当ててると段々サラサラと軽くなって来た。
金髪にして、ちょっと傷んでるけど。
京君の金髪好き。
めちゃくちゃ似合ってる。
赤とかも好きだけど。
京君の頭を見つめながら、そんな事を考える。
少しだけ長めの髪は暫くしたら全部乾いて指通りが良くなった。
出来たよって言って、ドライヤーを止めると京君は振り返って俺の方を向いた。
俺のデカいスウェット着てるから袖が余っちゃってるんだけど。
テーブルに肘付いて、俺の方をじっと見つめる。
「敏弥ぁ」
「ん?」
「僕別に1人で大概何でも出来るで?」
「うん?」
「今は1人やないから、やらへんだけ」
「……」
「敏弥がおるから」
えーと。
それはつまり。
「俺がするのをわかってて甘えてる、と?」
「知らーん」
そう言って、京君はまた俺に背を向けた。
その背中に腕を伸ばして後ろから抱き付く。
「ッ、もう、マジ可愛い京君大好き!」
「暑苦しい」
「いくらでも世話焼いてあげるからね!」
「しゃーないからさしたるわ」
「可愛いなぁ」
「やから可愛ないって」
背中から抱き締めて擦り寄ると、シャンプーのいい匂い。
ベクトルが、俺ばっか向いてんのかなって思う時があっても。
たまにこう言う風にわかりにくくて京君らしい『好き』を俺にくれるから。
だから愛しい。
可愛すぎる。
「京君大好き」
「知っとる」
「もっと知って」
「えー」
「えー、じゃねーこの野郎。ちゅーすんぞ」
「いつも勝手にしとるやん」
「それもそっか」
京君の唇は柔らかくて気持ちぃから、好き。
京君だから、だけど。
終
20111117
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