新しいアー写/京流
ライブの合間。
タイトなスケジュールをこなして、たまに自宅に帰る。
一応、自宅に帰ったってメールは送ったけど京さんも昨日ライブ終わったし、自宅には帰る筈。
でももうすぐしたら海外行くし、リハもあるから会える時ねーのかな。
あんまりメールも電話もしてねーし、ツアー中の事とか話したい事いっぱいあるんだけどな。
俺の方もリハあるし、すぐに遠征準備もしなきゃいけねーから、もしかしたらすれ違いになるかもって思いながら溜まった自分の洗濯物や、京さんのを一気に洗濯する。
乾燥までしてくれるから楽だけど、そっからまた畳んだり片付けたりしなきゃいけねーかと思うとウンザリした。
眠ぃー。
でも一応、京さん帰って来るかもしんねーし手料理作んの久々だし晩飯は作りたい。
デカいソファに寝転がって、携帯を弄る。
京さんから連絡無いけどいつ帰って来んだろ。
話したい事いっぱいあるんだけどな。
そんな事を思いながらも、寝転がってるから目が閉じそう。
寝そう。
意識が飛びかけた時、耳に玄関から鍵の開く微かな音が届いて。
さっきの眠いのが一気に吹き飛んだ。
だってこの部屋を鍵を開けて帰って来る人物は俺と京さんしかいない。
急いで起き上がって、玄関へと向かう。
玄関には久々に見る、白金に近い色まで脱色した髪の京さん。
「京さんお帰りなさい」
「ただいま。何やおったんお前」
「今少しだけ空きがあって。京さんのドームシティ行きたかったんですけど行けなくて残念です。ライブどうですか?声少し枯れてますけど…あ、飯まだ出来て無いんすけど、今日家で食べますか?」
「…あーもー煩い。いっぺんに言うな。そんでまとわり付くなウザい」
「はー…久しぶりの京さん…」
「きっしょ」
俺の方をチラッと見た京さんは俺が矢継ぎ早に言った事を聞き流しながらリビングに向かう。
その後ろ姿を見ると我慢出来無くて後ろから京さんの腹に腕を回して抱き付いた。
京さんの動きが止まる。
お構い無しに、京さんの首筋に顔を埋めて。
呼吸をする度に京さんの匂いが鼻孔を擽った。
あー…一気にアドレナリンが出る感じ。
俺これからもツアー頑張れる。
マジで。
京さんは鬱陶しそうに俺を離そうとするけど、後ろからホールドしてるからどうしようも無くて諦めて舌打ちされた。
もうここまで来るといつ離しても怒られそうな気がするから、もういっそ離さねぇ。
「あ!京さん服!」
「は?」
「服!新しいアー写の!あれ俺のですよね!?」
新しく買ってクローゼットにしまってたのに、いざ着ようとしたら全然見つから無かったんだよな。
京さんに聞いても知らーんとか言ってたのに。
オフィの新しいアー写見たら、京さんが着てんの俺の探してた服だったっつーね。
「あぁー…何か良さげやったから」
「もうマジ1回も着てねーのに何処行ったんだろって探したんすよー」
「なん、アカンの」
「いえ、すっっっげぇ嬉しいです。俺の服着た京さんがアー写になるとか…もうガンガン着て下さい」
「…まぁ、ライブで着とるけど」
「マジっすか!?」
「クリーニング出しといて」
「え、じゃ、俺ツアーまだ残ってるんであの服着ますアンコールの時に!」
「暑いでアレ」
「全然いいですだって京さんが着たヤツだし!」
「…ホンマ気持ち悪いな、お前」
だって俺の服着たり、俺が京さんの服着たりとかはしてたけど。
仕事で着る、なんて事は無かったから。
ファンが見てるあの写真は、実は京さんの着てるヤツは俺のなんだって思うと嬉しくて堪らない。
意識的か無意識か、俺のツボをつく京さんが好き過ぎる。
「えぇ加減離れぇや」
「嫌です」
「調子乗んなボケ」
「ぁいた…ッ」
調子乗って擦り寄ってたら、痺れを切らした京さんに脇腹を肘で打たれた。
痛ぇ…。
渋々離すと、京さんはリビングに入ってソファへと直行。
「あー。僕また仕事行くから。飯軽いモン何か作って。ツアー中は外食ばっかで嫌やわ」
「マジすか。忙しいですね…わかりました」
今日の夜は一緒に居られると思ったのに。
残念。
まぁさっきちょっとは充電したし、服の件とか嬉しい事あったし。
それだけでテンション上がる俺も大概だな。
キッチンに行って、冷蔵庫の中を確認。
軽い物。
何がいいかな。
さっきは眠かったけど、今は全然そんな事無い。
京さんが同じ空間にいるってだけで安心する。
久々だし。
また俺はツアーで、京さんは海外。
会えなくなるのは寂しいけど、今はアー写見ただけでニヤつく。
だって仕方無い。
京さんのやる事が、俺の全てで。
大きな存在の大好きな人だから。
終
20111114
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