イベント後日/敏京




「…ッあ゛ー…だる…頭いた…」
「………」


頭痛と胸のムカつきで、最悪な目覚めをする。
自分の頭を押さえながらゆっくり身体を起こすと部屋ん中は結構悲惨な状況。

それもこれも、昨日敏弥がハロウィンやからって何だかんだ理由付けて酒盛りした所為や。


アルコール強くないのに、敏弥がススメて来たヤツは僕でも飲める甘いヤツやって。
調子乗って飲んでテンション上がって、昨日自分のした事を思い返すと若干ヘコむ。

ハロウィンやから仮装しようやって言うた敏弥に乗せられて言われるままお互いコスプレしてそのままヤッて。

風呂も入らず爆睡して今の状況。


アルコールの瓶や缶が転がっとるし菓子のゴミも散乱しとるし、脱ぎ散らかした服とコスプレ衣装が床に見えてウンザリした。


誰か昨日の記憶を消せ。
僕の。


頭痛とは別の意味で頭が痛くなる。

敏弥は敏弥で、狭いベッドの上、隣で素っ裸のまま気持ちよう寝とって。
何やムカついたから、一発頭をはたいたった。


「…ッ、もー…なに…」
「起きろ変態」
「…やー…」
「嫌ちゃうわボケ。身体カビカビやねんぞ風呂沸かせ」
「……」
「……」


ホンッマ、こいつ寝起き悪い。
僕より先に自然に目覚めた時はベッタベタに甘えて来る癖に、自分が眠い時は布団を頭まで被って出て来ーへん。


あーイライラする。
今日せっかくのオフやろ。

二日酔いとか、笑えへんわ。


それもこれも、全部敏弥の所為や。


「起きろ言うとんねんこのボケ」
「ッ!?…さっむ!京君寒い!」
「知るか。早よ風呂沸かして来いや!そんで洗って」
「…あー…後処理せずに寝ちゃったの?」
「眠かったん」
「昨日ちょー燃えたもんねぇ…」


蹴りを入れながら、頭まで被っとる敏弥の布団を全部剥ぎ取る。
いきなり空気に晒された敏弥の肌は一気に鳥肌立って起きた。

欠伸をしながら身体を起こした敏弥はめっちゃ眠そう。
普段から無い目が更に無い。


奪った布団を、僕も裸やし寒いし自分の身体を覆うように引き寄せる。


「部屋片付けて。汚い」
「もー風呂沸かせって言ったり部屋片付けろって言ったり、我儘ー」
「お前が昨日アホな事言うからこんな惨状になったんやろ」
「そんな事言ってノリノリで京君だってコスプレしてたじゃん。お菓子無いなら悪戯してやるって俺の上に乗…ッ」
「あぁあぁー…煩いなお前!」


ニヤニヤしとって腹立つ。

僕悪く無いし。

あぁー…頭痛いし気持ち悪いし最悪や!

昨日は昨日で楽しかったんは否めへんし、それが余計にムカつく。

普段から女形しとる敏弥が仮装言うてした女装はホンマに可愛かったし。


「はいはい、お風呂沸かして来るから、拗ねないで?」
「拗ねてへんしガキ扱いすな」


敏弥が僕の頭を撫でて、唇に軽くキスして来たから。
敏弥の上唇に噛み付いたった。

それを見て、敏弥はまた笑う。


むず痒い。
昨日の事は、もうえぇかって思わされる。

やから敏弥ズルいわ。















「何処か痒い所はありませんかー」
「全部」
「もー手の掛かる子!可愛いんだから!」
「キモい」


あれから風呂沸かして、後処理も身体洗うんも全部敏弥に任せて今は髪を洗ってもらっとる最中。

あー…気持ちえぇ。

やっぱ至れり尽くせりは楽やな。


僕だけ浴槽ん中に入って、目を瞑って敏弥に頭を任せる。
敏弥の指が、僕の頭を優しくなぞる。


「京君、ここ気持ちいい?」
「んー」
「後で俺の頭も洗ってね」
「んー」
「聞いてる?」
「んー」
「もう」
「……」


後ろで敏弥の苦笑いする声が聞こえた。

二日酔いは敏弥の手によって流されたみたい。




20111101



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