これから先の充電日/京流




微睡みの中、不意に目が覚める。
目の前に広がる光景に、一瞬自分の置かれてる状況がわからなくて。
でも直ぐ様、嗅ぎ慣れた匂いで京さんの腕の中だと気付く。


京さんが先にツアー開始して俺も始まって。
お互い会える時間が全く無くて。

ちょうどツアーの区切りが付いた日程が重なって、リハやら何やらでお互い忙しいけどこうして一緒にいる時間が出来た。

京さんも俺も、またライブツアーが始まってこれから擦れ違い生活がまた始まるけど。


俺に腕枕する状態で寝てる京さんの首筋に甘える様に鼻先を擦り寄せた。
空調管理もバッチリしてるし、毛布も出してるし何より人肌の体温が温かくてTシャツ、ジャージって言う軽装で寝てる京さんの背中に縋り付く様に両腕を回してガッチリ密着。

肌を重ね合わせる事も大事だけど、ただ何もしないでこう言う風に密着してんのも、好き。


京さんの匂いと鼓動を感じながら、もう一度寝れそう。


規則的な鼓動に耳を傾け、更に足に足を絡めて身体をくっつけて。
京さんの身体を拘束する形で寝直そうとしたら、さすがに身動き取れない状態に違和感を感じたのか京さんが微かに声を出して身じろいだ。

逃がさない、とでも言う様に抱き付く腕に力を込めると。
俺の少し上の位置にある京さんの顔が怪訝そうに歪んだ。


「……なに…じゃま…」
「…おはようございます京さん」


なんて。
遮光カーテンから漏れる光で朝は来てんだろうけど、携帯のアラーム鳴ってねーからまだ寝る余裕はあるんだと思う。


寝起きと、今までのライブの所為で上擦った様に掠れる京さんの声。

耳に届く自分の声も、いつもよりか掠れてる。


鬱陶しそうに俺の首元から腕を引き抜いて寝返りを打とうとする京さんの動きを制する様に、京さんの喉元な唇を寄せた。
柔らかく吸い付くと、喉仏が上下するのが目に見えた。


「…何やのお前…うっざ…」
「京さん声ガラガラ」
「…お前もやろ…ホンマ邪魔…」
「もう少し寝てていいですよ」
「……寝さす気ないやろ…あー…今何時やボケ」
「あはは」


段々京さんが覚醒してってんのが声の張りでわかる。

けど、寝起きだから俺の身体を無理矢理引き剥がすとかまだしない。

寝起きは動作遅いんだよね。
だから甘え時だな、と。


俺を引き剥がすのを諦めた京さんは、枕に顔を半分埋めた状態で目を閉じる。


ツアー中は、ステージで全てを出し切ったのか何なのか。
尖ったオーラを削ぎ落とした雰囲気になる時と。

ライブのが抜け切らなくて殺されんじゃねーのってぐらいの事をする時があるけど、今回は前者。


俺はこれからまたずーっとツアーだし、京さんは国内終わったら海外だし。
今このシチュエーションを堪能したい。


調子に乗って、更に甘えてると。
京さんの身体に回してた腕を引っ掴まれて、シーツに押し付けられる。

そのまま噛み付く様にキスされた。


「……ッ」


不意打ちのキスに、息すんのを忘れて若干苦しい。
俺の身体の上に伸し掛かる様にして、口内を好き勝手に動く京さんの舌。

俺の勝手な行動を許さないって、呼吸さえ管理されてる様なこの状況に言い様のない感情が背中を這い上がる。


抵抗しようとしてないのに、俺の腕を強く掴む京さんの手から体温が伝わって来て熱い。


あー、もう。
好きだなって思う。


息苦しく気持ちいい京さんのキスに、自分も応えようとすると京さんの唇が離れた。

ホント意地悪い、この人。

ハマりそうになると突き放すって。

そう言う所が好きなんだけど。


「───は、何その情けない面」
「…、京さんが好きだからです」
「…知っとるわ」
「……もっかい」
「は?嫌やしアホか」


とか言いながら、掴んでた手を離して俺の身体の上に体重を掛けて来た。
京さんの重さと体温がダイレクトに伝わってて、イイ。


こう言う朝、いいな。

これからのツアー頑張れそう。


京さんの匂いでいっぱいになりながら、愛しい相手をキツく抱き締めた。



20111024



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