映画<京さん/京流




オフの日の筈なのに、珍しく京さんが出掛ける準備してたから何処行くのか聞いたら、いつも行ってる映画館行くって言うから無理矢理ついて来た今。

渋谷の、ほんとマニアじゃねーとわかんねーような映画館。


京さんの好む映画は結構発禁物多いし、こう言う所じゃねーと放映してないのかもしんねーけど。
いつも小さな映画館行くとは聞いてたから、どんな所行ってんのか気になってたし。


俺もオフだったし、京さんと1日中ラブラブ出来ると思ってたから映画行くっつったら俺も行きたいって言ったんだけど。


最初ちょっと嫌そうな顔したけど、頼み込んだら『好きにすればー』って言ったから京さんとデートだって思ってバッチリ決めて来たんだけどさ。

無理矢理連れて来てもらってよかった。


京さんのテリトリーに入れてもらえた様な気がして嬉しい。


京さんが観る予定だった映画のチケットを買って、飲み物を買って席に着く。
小さな映画館だから、客席数も少ない。

京さんに離れて座れって言われたけど、何で一緒に来てんのにって思ったから隣に座る。


結構前の方の、真ん中ら辺。

平日だから他の客が全くいない。
2人きり、最高。



「京さんこう言うの何処から見つけて来るんですか」
「……」
「何か雰囲気ありますよねー。京さんが買うDVDとか当たり多いし」
「……」


携帯の電源を切る為にイジりながら隣にいる京さんに話し掛ける。
京さんは深く腰掛けて、背凭れに凭れながらチラッと俺の方を見て、煩いって視線で言ってスクリーンの方に視線を戻した。


いつも京さんは1人で観に来てるみたいだし、横で煩くしてんのもダメだったかって思って。
開演時間まで少しあるけど自分も前を向く。

機嫌を損ねて、連れてってくんなくなったら嫌だしなー。


「………」
「………」


買った烏龍茶を飲みながら、開演まで時間まだあったよなーとか考えながら、不意に耳に入ったBGMに耳を傾ける。


「………あ、」
「……」


何処かで聞いた事あるな、ってそんなレベルじゃない。
いつも聞いてる、隣の男の歌声が流れて来て思わず顔がニヤけた。

京さんも気付いたっぽくて、眉を寄せて。
めざとく俺の表情を見つけて口を開いた。


「…何ニヤニヤしとん。キモいわ、お前」
「だって京さんの曲、」
「……何百回って聞いとる筈やのに、こんな所で聞かされると微妙な気分になるな」
「え、俺は嬉しいですよ!京さんの曲がBGMで聞けるなんて」
「はー…たまに流れるんよな、この映画館。タイミング悪いわ」
「マジすか。じゃ、俺も此処通おうかな」
「…アホらし」


京さんは呆れた様に溜め息を吐いて、俺が買って来たコーヒーに口をつけた。

家やiPodで聞くのとは違う、出先でこう言う風に京さんの声を聞けるのって何かテンション上がる。

不可抗力だから仕方ねーし。


BGMでは吠えてる京さんの声も、今は若干高くて掠れた声。

あーもう、どっちも愛しすぎる。


周りに視線を巡らせて、誰もいないのを確認してから京さんの手を握った。

好きな人と映画来たら、ベタもベタに手繋いで観るモンだろ。


舌打ちした京さんに少し笑って、BGMが消えたのを感じて。

映画が始まるブザーが鳴って暗転隙を狙って手を繋ぐのを嫌がる隣の男にキスをした。


「…ここ盛り場ちゃうぞ。したいんやったらそう言う映画館のトコ行って存分に犯してもらったらこの淫乱」
「京さんしか興味無いんで、遠慮します」
「あそー。ほなもうお前二度と連れて来んから、今を堪能しとけや糞犬」
「じゃ、好きにさせて頂きます」
「…シバくぞアホ」
「いいですよ」
「…映画観ろや。我儘言うて勝手について来たんやろが」
「はーい」


暗闇の中、少し低めのトーンで話す京さんの肩に甘える様に頭を寄せた。

京さんのいきつけの映画館教えてもらったし、京さんの歌も偶然聞けたし。
何か機嫌が良くなって京さんに甘えてると、嫌がって振り払おうとしながら映画が始まると京さんの意識はそっちに持って行かれた。


映画集中出来る自信無いんですけど。

我儘聞いてくれた事実とか。

二度と連れて来てくんねーなら、ちょっと悪戯してもいいですか、京さん。




20111008



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