秋の味覚/京流




何かるきがいつも以上に仕事終わったら真っ直ぐ飯食わず帰って来て下さいねってしつこく言うモンやから、素直に帰るん嫌やなって躊躇ったけど。
意外に打ち合わせが早く終わってもうて、特別予定も無いからしゃーなしに真っ直ぐ家に帰る。

いつも仕事が忙しいて交流出来ひん時に後輩から誘いがあったりすんのに、こう言う時に限って何もないってどう言う事やねん。


でももう前程、外食する事も少なくなって真っ直ぐ家に帰ってるきがおるとよく一緒に飯食ったり、るきが作り置きしとったモン食ったり。

それが当たり前になってもたんが、何か不思議な感じ。


ツアー中は、まぁ食生活めちゃくちゃになるけど。


タクってマンションまで帰って、鍵を開けて部屋ん中に入るとるきの靴が見えて。
それと同時に美味しそうな料理の匂いが届いて来た。


その匂いだけで、あんま思わんかったのに腹減って来た気がする。


るきもるきで、いちいち手料理作ってマメなよな。

あんま褒めたる事はせぇへんのに僕が食ってくれるん嬉しいからーって。


鬱陶しいぐらい僕に向けられる感情は独り善がりの域に達しとるレベルやで、あれ。
それに満足して傍に置いとる僕も、相当なモンやけどな。

頭どうにかなってもうたんかな。


「京さん、お帰りなさい」
「…ただいま」
「ちょうどよかった。もうすぐご飯出来ますよー」
「んー」


リビングに通じる扉を開くと、キッチンの方でルキが朝見た仕事行く時の格好のまま、料理しとった。

何つーミスマッチな絵面。
でも見慣れた当たり前の光景。


リビングのソファに鞄を置いて、キッチンの方へ行って冷蔵庫を開ける。
ストックしてあるペットボトルの水を取り出して、その場で開けて飲んだ。


…冷蔵庫ん中に、またアホみたくコンビニ系スイーツが大量に入っとったんは見んかった事にする。


水で喉を潤して冷蔵庫に凭れて忙しなく動いとるるきを見る。
何か揚げモンしとるっぽい。

揚げ上がっとる、バケットに乗せられたモンに手を伸ばして1個食ってみた。

…まぁ天ぷらやから、何もつけてへんし素材の味が口ん中に広がる。

それを目敏く見つけたるきが、作業しながらギャーギャー言うて来た。


「あ!ちょっと京さん食べないで下さいよ!ちゃんと個数かぞえてるんですから」
「知らん。腹減った」
「もう少しで出来ますから我慢して下さい。今日は奮発して松茸買ったんですよ松茸!」
「ふーん」
「秋の味覚ですからね。ちょっと高かったですけど美味しそうなの選んでみました」
「………」


コイツがこのナリで、真剣に食材選んどる姿が容易に想像出来てまう所が嫌やわ。

それに松茸って。
秋やから松茸買って来るって、普段そんなん出さへん癖に。

るきって料理に対して、ミーハーと言うかステレオタイプと言うか。
王道を押さえときたいんか。


松茸なんか香りを楽しむモンで、味はきのこやん。
あんま意識して秋やから食うって事をせぇへんわ。


油モン食ったから喉渇いてまた水を飲む。


出来たんかるきは出した皿の上に天ぷらを角度気にしながら盛り付けしよった。
……そんな和食器、僕んちにあったっけ?


「るき、その食器なに」
「え?前に買ったんすけど、なかなか合う和食作らなくて…天ぷらなら、これ合いません?」
「…食器ならいっぱいあるやん」
「料理によって使い分けたいんですー」
「無駄遣いすんなや」
「京さんとご飯を食べる事に対する物に無駄な事なんて無いです」
「あぁ言えばこう言う…ただお前が見た目的に買いたいだけやろ」
「あはは。よし、綺麗に盛れた!」


盛り付けて満足そうに笑うと、2人分の和食器を持ってテーブルに運んでく。

もう出来るんやなって思って、水を持ったままテーブルに席着いた。


るきがご飯よそったり、鍋から熱い熱い言いながら取り出したり。
他にも何かあるっぽかったんはわかるけど。


食卓に今日の飯が並べられたんを見下ろして、正面に座ったるきと交互に見る。


「…お前…、加減っつーモン知らんのか」
「え?何か変ですか?」
「変やろ!何このきのこ料理ばっか!」
「松茸料理ですよ!松茸ご飯とか茶碗蒸しとかホイル焼きとか松茸の吸い物とか、頑張って作ったんです!」
「偉そうに言うな!おま、ちょっとメリハリつけぇよ。見渡す限りきのこ料理って何やねん!」
「松茸です!」
「知っとるわ!」


僕別に松茸好きな訳ちゃうんやけど。
全種類松茸料理ってどう言う事。

るきはホンマ、加減を知らん。

馬鹿の一つ覚えみたいに、同じ食材を使うな。


「冷めるんで、早く食べて下さい。はい、いただきます」
「…いただきます」


全て初めて見る和食器で、きのこだらけの料理を2人で囲んで。

高いモン買ったって言うだけあって、確かに料理は美味かった。

美味かったけど、何や違う気ぃする。


こんな大量にあったら有り難みも糞もない。


ホンマ呆れるるきの料理。
やけど、それにのこのこ帰って来てこいつと食卓囲むんが日常になって来た僕も、どうなん。


「京さん美味しいですか?」
「まぁ、」
「よかった。デザートに梨ありますからね」
「……」


嬉しそうに笑うるき。
きのこ料理でも美味いからまぁえぇかって。

思ってまうんもしゃーないか。




20110930



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