本音と建前/京流+玲+麗




仕事帰りに久々に麗と居酒屋。
よく一緒に行ってて馬鹿騒ぎしたけど、最近は仕事も軌道に乗り始めてなかなか飯食いに行く暇なかったから。

ガヤガヤと騒がしい店内で、2人分の生ビールを頼む。
つまみは何にしようかと考えながらメニューを眺めるてると、目の前の麗は煙草を咥えて火を点けた。


「れいた最近どうなの」
「は?どうって、別に普通だけど」
「ちげーって。ルキの事」
「あぁー…」
「何か痣治ったと思ったらまた新しい傷とか付けてんだけど」
「うーん、まぁ、アレだよな」


ルキの傷の原因なんて、嫌って程わかってる。
俺も、メンバーも。

戒君はめちゃくちゃ怒るし、葵さんも戒めたりはするけど、ルキは聞かねーしなー。


苦笑いしながら、頼んだビールジョッキを持つ。
曖昧な俺の返事に麗が不満そうな顔をして一応『乾杯』とジョッキを合わせてビールを煽った。


「れいたん所によくルキ行ってんだろ」
「まぁな。軽い手当てとかはしてやってっけど」
「あぁー…俺もルキの事可愛がってんのになー…何で俺には頼らないでれいたばっかり」
「何だそれ(笑)…まぁ、ルキも被害者面して頼りたくねーんだろ。ただでさえバンドに支障出る事してんだから」


オメーの着眼点そこかよって思ったけど、麗は雑誌のインタビューで語る程ルキの事可愛がってんのは知ってるし。

麗は麗で、ルキから何も言って来ねーから口を出していいのかも悩んでたんだろう。


皆が皆、それぞれの形でルキを心配してる。


「そうだろうけどさ…れいたは腹立たねーの、ルキがあんな事されて」
「…腹立つに決まってんだろ。あんな、貢いだ上に殴られて蹴られて、」


犯されて。


初めてルキが京さんに犯された日の朝。
ショックと恐怖で怯えた表情を俺に向けたルキの顔が浮かんで、思い切りビールを煽った。


「じゃーもう説得してよれいた。最近のルキ痛々しくて見てらんねーよ」
「…他人がどうこう言ってやめるなら、最初からやらねーよルキは。それに戒君がしつこい程言ってるし、俺はあんまりやめるような言葉言いたくねーんだよな」
「何で?れいただって腹立つっつったじゃん」
「んー。俺までやめろなんて言ったら、ルキが拠り所なくなってパンクしちまうから」


俺だって京さんなんかに貢いで縋ってどうすんのって思うよ。

ルキは我儘でプライド高くて、メンバー内で可愛がられる存在の筈なのに。

ルキに何してくれてんだって、俺が殴りたくなるぐらい。


でもそれはルキが望んでる事じゃねーし、俺が反対した所で今の状況をルキが改善するとは思わない。
実際、そう言われたし。


だからせめて、しんどくなった時に寄り掛かってくれればいい。
怒るのは戒君や葵さんに任せて、俺はルキの逃げ道でいたい。


「…なーんか、愛だね、れいた。ルキの事好きなの?」
「まー仲間として親友として。恋人になるよりももっと大事に想ってるかな」
「そっかぁ…俺はそこまでルキの事考えて無かったかも。あんな事されてさ、やめろ、しか言えねーよ」
「…それが当たり前の感情だろ。でも痛い目見んのもルキだから。ルキから気付いてやめなきゃ、何も変わらねーよ」
「そっかー…早く気付いてくんねーかな、ルキ」
「……」


そう呟きながら生ビールを飲み干して、店員を呼ぶ麗。
新しくビールを注文して、適当につまみも追加された。


多分もう、ルキは抜け出せないんじゃないかって麗の言葉を聞いて思う。

過去最高人数の貢ぎを作って、四六時中着信を気にして。
呼び出されたらいつでも応じて、そして新しい傷を増やして来る。

そのスタンスが当たり前になって来た時、よほどの事がない限り京さんとの繋がりを絶とうとは思わないだろうな。


馬鹿な事やってんのはルキだって、わかってるけど。


人間、感情があるもんで。
俺達のルキに何すんだって、京さんにムカついて仕方が無い。

アンタさえいなきゃ、ルキがあんなボロボロになる事は無かったのに。


そんな考えても無駄な、無限ループ。


結局始まりも終わりも、ルキが決めるしか他ない。


溜め息を吐いて、麗が注文してすぐ出て来たたこわさに箸を伸ばす。

幼馴染みの愚痴を聞いて宥めて、あぁ、ほんとルキは皆に愛されてんだなって思った。


だから幸せになって欲しい。

そんな歪んだ関係が、ルキにとって幸せなんて認めない。




20110928



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