秋夜の帰り道/敏京
「もうすっかり秋だねー」
「あーそうやな。コンビニの新製品色々出とったし」
「俺等どんだけコンビニのヘビーユーザーだよって感じだよね」
「しゃーないやん。仕事柄帰り空いとる店がコンビニしか無いんやから」
「京君お菓子ばっか買うし」
「新製品は食べてみたいやろ」
「もーそう言う所が可愛い。ずっとお菓子好きでいてね!」
「はぁ?何やねんそれ。まるで僕がガキみたいやん腹立つわー」
「でも好きじゃん、お菓子。だからぷにぷにじゃん」
「…もうお前嫌い」
「拗ねないでよー。可愛いからいいじゃん」
「ッ、さっわんなボケ!誰が可愛いじゃ死ね!」
仕事帰り。
京君ちに行く前にいつも寄るコンビニでご飯とかお菓子とかビールとかを買い込んで夜道を歩く。
昼間は暑いけど、夜になると結構空気がひんやりしてる。
新製品が出てるからーって京君が選んだ大量のお菓子が入った袋を下げて、並んで歩く。
ホント、ご飯食べずにお菓子ばっか食べようとするんだもん。
そう言うダメな所が可愛くて好きなんだけど、可愛いって言われるの大嫌いな京君は肩を組んだ俺の腕を振り払う。
あららー。
機嫌悪くなっちゃった。
年上なのに子供みたい。
時々、俺より大人な事言っちゃうけど、こう言う子供っぽい所は直らないで欲しいな。
どろどろに甘やかして機嫌を取るのは嫌いじゃないから。
「京君、怒らないでよー。ね?」
「知らん」
「ホラ、月が綺麗だよー。秋はお月見の季節だよ」
「知らん」
「…そんな事言っちゃう子にはキスしちゃうぞー」
「はぁ?ここ外やぞ頭湧いとんかおま…っ」
下から俺を睨み付けて来た京君の前に回って、屈んで唇に軽くキスをする。
いいじゃん。
誰もいないよ。
月の明かりが綺麗な中、夜道で不意にキスするって何かロマンチックじゃない?
なんて。
ただ俺がしたいだけなんだけど。
だって京君が可愛すぎて、ね。
したら、ぺしって。
京君に頬を軽く叩かれて顔を押し退けられたワケですが。
「…ッあ゛た!」
「何すんねんアホか」
「もう叩かないでよー」
「やって敏弥がアホなんが悪いんや」
「そんな事言わないで。家に帰ったら続きしよーよ」
「や、敏弥は僕んち入って来たらアカンから。ベランダで寝とき」
「酷!もう涼しくなってんじゃん!愛しの恋人が風邪引いてもいいの!?」
「敏弥知っとる?バカは風邪引かんって言葉」
「…ッ!京君のバカー!」
「誰がバカやねんアホ。あれやん。ベランダからやとお月見出来るでーよかったなー」
「京君と見なきゃ意味ないでしょーよ」
「僕興味ないもーん」
「くっそ可愛いなこの野郎…!」
「何それ」
京君のつれない言葉に抵抗しながらも、でも言い方が可愛くてきゅんってなる。
そして京君の呆れた様な、笑った笑顔にまた可愛いって思っちゃう。
総じて、京君が可愛いのが悪い。
全部が俺のツボなんだもん。
さっきとは打って変わって楽しそうな京君の顔に、手を繋がないまでもぴったりと寄り添って道を歩く。
機嫌直ったみたい。
キスして正解。
可愛いなー。
俺の行動に呆れながらも許容してくれる京君。
「ちょっと寒いから布団出した方がいいかなー?」
「したら朝暑いやん」
「あ、俺等はくっついて寝るから大丈夫か」
「え、お前ベランダで寝るんやからくっついては寝られへんで」
「またまたぁー」
もうすぐ京君ちに着く。
帰ったら京君はお菓子食べるんだろうなーって思うけど。
キスの続きしようね。
どろどろに京君を甘やかして、そうして俺は京君に甘えるんだ。
叩かれたって何か言われたって平気。
だってそれが京君だから。
彼なりの照れ隠し、…な、筈!
終
20110920
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